意外に困っている人が多い職場の飲み会に誘いたくない人がいる問題
社会人にもなれば飲み会はひとつのコミュニケーションの場として認知されていますが、友人たちでの飲み会と違い、職場の飲み会では誰を誘うかにも気を遣う必要があります。中には飲み会に誘いたくない人がいて、どうしようか悩む場面もけっこう多いものです。
大学生の酒井君は、大学祭の打ち上げを行う予定ですが、中には誘いたくない人もいてどうしようかと悩んでいます。困った酒井君は、社会人の知恵を求めて知人の経営コンサルタントのK・エーイ氏に相談することにしました。
職場の飲み会に誘いたくない人がいる時は誘う?誘わない?
―エーイさん、ちょっとしたご相談なんですが、お時間よろしいですか?
はい、何でしょうか?
―実は先日、大学祭があったんですが、イベントが終わったので打ち上げをしようと思うんです。当日は難しかったので後日ということになったんですが、実は誰をどこまで誘うかで悩んでいるんです。他大学や、企業の方も含めていろんな所にご協力をいただきましたので。
いろんな所に声をかけて手広くやったんですね。それはお疲れ様でした。でも、そういう場合ならとりあえず関係者全員に声をかけたら良いのでは?
―それがですね、幹事の中で意見が分かれてまして、コアのメンバーだけでよいという人もいますし、○○君は飲むと厄介なタイプだから呼ばない方がいいとか、学内で止めた方が時間や交通とか気を遣わずに済むからいいのではとか、いろんな意見があるんです。社会人だと、こういう場合どうしてるんですか?
うーん、ケースバイケースとしか言いようがないですね。ただ、こういったイベントごとの打ち上げであれば、関係者には声をかけて行うのが普通ですね。
―やっぱりそうですよね。
まあ、学生と違って同じ職場の社会人なら毎日のように顔を合わせますから、飲み会に誘わないっていうのはバレた時にかなり気まずいですよ。来たくない人は来ないだろうと割り切って誘うのがマナーでもあり、一般的な対応じゃないでしょうか。
職場の飲み会に誘いたくないのはどんな人?
今回のケースなら社会人同様、組織としての飲み会だと思いますから職場同様に呼ぶべきと思います。ただ、学生だと、社会人の場合と違って、半分以上プライベートな感じだから判断が難しいかもしれませんね。
―社会人はプライベートな飲み会ってあまり無いんですか?
無いわけではないですけど、職場の人や取引先と飲むなら、あまりプライベート感は無いですね。やっぱり仕事や職場の話ってどうしても出てしまいますから。
―そうなんですね。
そうそう。だから、たとえメンバーの誕生会だとしても、誰を誘うかはマナーの範囲なんですよ。もっと言えば、誘う順番なども含めてマナーと言えますね。
―色々難しいんですね。ただの飲み会であっても誘う順番まで考えるんだ。
まあ、それでも飲み会に誘いたくない人ってやっぱりいます。人間ですからね。
―職場の飲み会では、どういう人を誘いたくないんですか?
たとえば、酒癖が悪い人とか、お酒を強要する人や、職場であまり好かれていない人、お金を持ってこない、つまり払う気がない人や会計前にフェードアウトしてしまう人などですね。上司で完全にワリカンする人も誘いたくないと言われることがありますが、それはちょっとひどいかなと思います。
―けっこうお金の話が多いんですね。社会人ってもっと余裕あると思っていました。
社会人はお金を使うところも多いですから、学生の時の方が余裕あったって人も多いですよ。他にも、周囲の会話に入ってこようとしなかったり、セクハラしたり、人のプライベートを酒のせいにして根掘り葉掘り問いただそうとしたりする人とか、オタク気質で周りと会話が合わないまま話続ける人とか色々います。最近は何でもスマホで撮影したがる人とかも職場の飲み会では敬遠されますね。
―そこは学生でも社会人でもあまり変わらないんですね。そういう人がいる場合はどうするんですか?
基本的には職場の飲み会ですから、外せない対象であれば声はかけるしかありません。飲み会に参加することになった場合は、席や周りを固める人を决めておくとか、内々で可能な対策をすることはありますが、まあ皆さん慣れている方も多いので状況に合わせてうまく乗り切ってるんじゃないでしょうか。
―逆に、職場の飲み会で誘いたい人のタイプもあるんですか?
はい、もちろんです。たとえば盛り上げ上手な人だったりとか、役員や取引先の人と飲む場合なら気が利く人がいた方がいいとか、その人と飲むことに慣れていて上手に対応ができる人を誘ったりますね。また、「華があるといい」とか言って、おごってあげてでも若い女性社員を誘うということもよくある話です。まあ、関係ないのに誘われるっていうのは昔ほどはありませんけどね。
職場の飲み会に誘われたら行くべき?行かなくても良い?
―ちなみに、もし自分が職場の飲み会に行きたくない時って行かなくてもいいんですか?特に一緒にいたくない人がいる場合とかに。
基本的には参加するべきだと思いますよ。行かないことにはいつまで経っても対処法なども身につきませんから。まあ、お金を払うことになるのが痛いとは思うんですけど。
―やっぱりそうなんですね。
それに、誘われて断ることが続けば、そのうち「職場の飲み会は嫌いなんだ」と思われて誘ってもらえなくなりますし、誘ってくれる人の面子も潰すことになります。
―誘ってもらえなくなるのはわかりますが、面子の問題も考えるんですか?
そりゃそうです。たとえば、何かの事情があってどうしても酒井君に飲み会に来てほしいと幹事の人が考えたときに、この人ならうまく誘ってくれるだろうと思って私に誘うようお願いしたとします。私が誘いきれなかったら、私の評価も落ちちゃうんですよ。
―そういうものなんですか?
そういうものです。人に対しての影響力、交渉力ってこういう所で出ますから。逆に参加率が低い、レアな人を釣り上げることができたら一目置かれますね。
―うん、それはわかる気がしますね。でも、やっぱり飲み会に行きたくない時は行かないで済むのがいいな。
それはそうですよね。だから、その時その時で断り方にも注意する必要があるんですよ。取り付く縞もない断り方や、相手が不快に感じる断り方は絶対にしないことですし、その後もその日にあった飲み会について絶対に触れないような態度を取るのはよくありません。付き合いが悪い人になってしまうと、誘う側にも余計なストレスを与えてしまってかわいそうです。
―なるほど。飲み会に誘ってもらえるようにするためにも、次に繋がるような態度は意識しておいた方がいいと言うことなんですね。それで、行きたくないときは上手に断ると。勉強になるなぁ。
職場の飲み会に誘いたくない人がいる時の小技
職場の飲み会では、飲み会に誘いたくない人がいる時には小技を使うこともあるんです。
―小技?何かあるんですか?
たとえば、飲み会の目的を変えて参加者を絞り込むんです。上司を誘いたくない場合は、たとえば部ではなくチームで打ち上げをするとか、関係者だけの飲み会にするとか、若手社員や同期だけの飲み会にするとかですね。男性限定の飲み会や、女子会にしてしまうというのもよくある方法です。
―職場の飲み会って、そういうこともできるんですか?
できますよ。そういう飲み会を別々で予定し、同じ店で合流して好きなメンバーで楽しむとか。
―うわあ、ちょっとずるい気はします。でも、やればできそうな方法ですね。
当然このくらいなら酒井君たちでも可能ですよ。他にも、場所を先に決めてしまうことで人を選ぶようにしちゃうとか。
―なるほど、女子会向けのお店なら、オジサンは来にくいってことですね。
極端に言えばそうですね。この場合、万一来ちゃった場合にはちょっと気まずいので注意は必要ですけどね。それよりは、趣味などを考えたり、席数が取れないお店などにして人数を理由に制限をかけるとか、来てほしくない人のスケジュールを調べて、時間と場所が無理なところに設定するとか。
―社会人怖い(笑)。
ははは。でも、そこまでして飲み会に誘いたくない人ってそれほど多くはないんですよ。どうしても、という時だったり、仕事で関わっている誰かの愚痴を心おきなく言いたい時のための小技です(笑)。それでも、お店でバッタリ会わないように周囲に注意する必要はありますし、予想外に誘いに乗ってきてしまうことはゼロではありませんけどね。
職場の飲み会に「誘いたくない」のは個人の気持ちでしかない
散々こういう話をしてきて何ですけど、職場をはじめ、公的な飲み会で「誘いたくない」とか言うのは、本来はマナー違反ですから、ちゃんと声はかけるべきです。
―きっとそうなんでしょうけど、誘いたくない人ってある意味ではマナー違反をしている人じゃないですか?
そうとも言えるかもしれませんが、「飲み会に誘いたくない」のは個人の気持ちです。個人の気分で公的な場に誘わないのなら嫌がらせとしか言いようがありません。一人だけ忘年会で声もかからないとか嫌でしょう?
―そうですね。でも、多くの人の共通意見として「誘いたくない」場合はどうするんですか?
それでも誘うべきです。もし、企業として誘わないのなら、企業の正式な会議なり朝礼などの場で「○○は飲み会に誘わない」と通達するべきでしょう。それは会社としての方針を示すことです。裏で根回しをして誘わないようにするのは、プライベートなものでしかなく、いわばイジメです。
―でも、中には毎回飲み会に誘われるのがプレッシャーになるって人もいますよ。うちのサークルでも飲み会が苦手な女子の中にそういう人いますし。
「誘われるのが嫌」というのも、また個人の気持ちでしかありません。仕事で「メールが来るのは嫌」というのは通じないでしょう?業務の延長上にある公的な飲み会なら、誘われるのも仕事だと考えた方がいいと思いますよ。ただ、強制力のある誘い方は良くないですね。パワハラになってしまいます。
―職場の公的な飲み会じゃなければ、無理に誘うことはないってことですね。
はい、そして私的な飲み会なら、誘いを断ったことや不参加を理由に仲間外れにしたり、仕事などで不都合が生じるようなことは絶対にしてはいけません。それが誘う方のマナーでもあります。自分の思ったようにならなかったと、腹いせのように相手が困ることをしないようにしたいものです。
「飲み会に誘いたくない」と言わない、言われないようにしよう
―では、まとめると「職場の公的な飲み会の場合は関係者全員に必ず声をかける」、「私的な飲み会の場合は無理に誘う必要はないが、そのことで不利益が生じないよう配慮する」ということでいいですか?
はい。そうですね。その理解で大丈夫です。
―良かった。じゃあ、今回の打ち上げではとりあえず全員に声をかけます。その上で、お店なり、配席なり、二次会なりで調整するようにしたいと思います。
それが良いでしょうね。そもそも、「飲み会に誘いたくない」と言うのも、言われるのも、やっぱりマナーが無いことですから、そんな言葉が出てこないような組織になるのが一番ですね。「誘う」ことそのものが義務になっていることが言葉から滲み出ているわけですから。
―そうですね。誘うって本当はもっと自発的なものですよね。
こういう言葉が出てくる時点で、どこか内輪志向になっていたり、もしくは公的な飲み会などの場を私物化しているところがあるのかもしれません。また、誘いたくないと言われる人も、やはりマナーが無い振る舞いで飲み会の席を私物化しようとするからそう思われてしまうんでしょうから、態度を改める必要はありますね。
―社会人のマナーの大事なところは、互いに尊重して相手を立てることだって言いますものね。飲み会に誘いたくないって、相手を立てたり尊重したりという態度が無いですね。僕も全然配慮が足りませんでした。
酒井君だけでなく、大人だとしても難しいものですから、あまり気にするのも良くないですが、心構えとしてはそういう気持ちを持っていてほしいと思います。実際、職場の飲み会のことでそういう「誘いたくない」発言をする人って、たいてい人を軽んじたり、礼儀が不足している人だったりしますから。酒井君にはそうなってほしくないですね。
―はい、気をつけたいと思います。気持ちはわからないでもないんですが、やっぱり良心も痛みますし。今日は色々と知恵を貸していただき、ありがとうございます。早速、幹事の人たちと一緒にミーティングしてきます!
「職場の飲み会に誘いたくない」としても誘うのが社会人のマナー
飲み会に誘いたくない人がいるという場面は社会では往々にしてあります。しかし、だからと言って避けてしまうと、そのことが後々のトラブルになることもあります。相手に不快感や不信感を与えないためにも、基本的には職場の飲み会に誘いたくないとしても誘うのがマナーです。
誘われるのが嫌というタイプの人も、公的な飲み会については業務の延長上と考えて誘いに応じるのがマナーです。相手を立て、尊重することが大切ですので、自己中心的な態度を取らないよう、誘う側も誘われる側も注意しましょう。