マタハラとは?妊娠中や産後被害に遭った女性のエピソード

マタハラ(マタニティハラスメント)は、女性従業員に対し妊娠や出産を理由に解雇や降格、減給などの不当な嫌がらせをする行為。法律で禁止されたハラスメントにもかかわらず、職場の上司や同僚からマタハラを受ける女性は少なくありません。実際にマタハラ被害を受けた女性の声を聞いてみましょう。

マタハラとは?妊娠中や産後被害に遭った女性のエピソード

職場でのマタハラに悩む女性は多い

セクハラをはじめ、職場での様々なハラスメント問題が表面化している昨今ですが、中でも多くの女性を悩ませているのがマタハラ(マタニティハラスメント)です。

妊娠・出産を理由とした女性労働者に対する嫌がらせは法律で禁止されているにもかかわらず、被害を訴える女性はなかなか減らないのが現状です。

図解:マタハラとは?パタハラとは?

そもそもマタハラとは?

マタハラ(マタニティハラスメント)は、女性労働者が妊娠・出産を理由に解雇や降格などの不利益取扱いを受けたり、周囲の発言や行為によって肉体的・精神的に傷つけられることです(注1)。

マタハラの不利益取扱いの一例

  • 契約の打ち切り
  • 解雇
  • 降格
  • 減給
  • 不利益な自宅待機・配置変更
  • 昇進・昇格における不利益な評価
  • 労働契約の内容変更の強要 など

日本労働組合総連合会が実施している「マタニティハラスメントに関する意識調査」では、世間でのマタハラへの認知度は高まっているものの、自分自身や周りの意識の変化については「特に感じていない」と回答する方がほとんどで、現段階では十分なマタハラ対策が取れているとは言えない状況となっています(注2)。

男性に対する「パタハラ」も深刻な問題に

子供が生まれることで、職場でハラスメントを受けるのは女性だけではありません。最近では、育児に積極的に参加しようとする男性労働者に対し、職場の上司や同僚が不利益取扱いや嫌がらせ行為をするパタハラ(パタニティハラスメント)も大きな問題となっています(注3)。

「パタニティ・ハラスメント(パタハラ)に関する調査」で「パタハラを受けた」と答えた男性のうち、「その結果、誰にも相談できずに育休制度の利用を諦めるしかなかった」という回答が6割以上を占めており、その実態は非常に深刻です。

実際にマタハラ被害を受けた女性たちのエピソード

職場でマタハラを受けたことがあるという女性から、被害を受けたときの状況などを詳しく教えてもらいました。

女性からのマタハラ被害

お局様のひがみなのか…

もーがん(35歳 オペレーター)


以前私が働いていた職場には、40代後半の独身のお局様の先輩がいました。私はどちらかというと可愛がられていたのですが、27歳の時に妊娠が発覚してからマタハラが始まりました。

私は妊娠中のつわりが結構重く、仕事を休まなくてはならない日も多かったのですが、当時私のいた会社は産休制度というものはありませんでしたが、社長や上司がとても理解があり、遅刻や欠勤も有給を使わないでいいという配慮をしてくれる人達でした。

でもお局様は違いました。有給を使わないで休んでいるのだからその分働いてと、私に仕事を押し付けてきました。

また、「妊娠は病気じゃないんだから、そんなに休んだり遅刻や早退するなら迷惑だから会社を辞めてほしい」と毎日のように言ってくるのです。

さらに、他の女性社員を味方につけて、聞こえよがしに「電車の中の妊婦や赤ん坊を連れている母親が邪魔だ、うざい」と言ってくるのです。

最初は無視したり我慢したりしていましたが、ストレスでお腹の子に何かあった場合のことを考え、旦那に相談して退職することにしました。

今は女性が多く、子育てや妊娠に理解のある職場で働いています。あの時あの職場を辞めていて本当に良かったです。

女性管理職からのマタハラ

もも(45歳 事務職)


40歳の高齢出産でした。仕事は毎日残業必須の会社だったのですが、周りの方も配慮してくれて「仕事中でも具合が悪ければ休んでいいよ」と言われていました。

ただ、一人だけ「仕事どうするの?」「出生前診断は受けないの?私なら受けるわ」と不安にさせることばかり言ってくる女性の管理職がいました。

また、妊娠7ヶ月になってもつわりがおさまらず通勤中に動けなくなってしまい会社に電話したことがありました。その時の対応は直属の男性上司だったので「ゆっくり休んで」と言ってもらい、そのまま帰りました。でも後で聞いたら、それを聞いた女性上司が「またかよ」と吐き捨てていたと同僚から聞いてしまいました。

子育てしながら働くのは難しいなと感じて、以後産休を取ることなく退職しました。女性は女性に厳しいです。

先輩上司からのマタハラ

あき(24歳)


私が職場でマタハラを受けたのは23歳です。マタハラをしてきたのはひとつ上の女上司で、私が入社した時から1から10まで教えてくれている人でした。

妊娠に気づいたのが2ヶ月の時で、微熱が続くので不思議に思っていたのがきっかけです。小さな会社だったのでママさん役員の方に妊娠を打ち明けると、その話は瞬く間に会社に広がりました。

「小さい会社だから仕方ないか」「これで体調不良を訴えても少しは理解してくれるかな」と思っていましたが…甘い考えでした。

私がしていた仕事内容は営業で、その後のアフターサービスも細かく行います。その女上司は今までと全く変わらず仕事を振ってくるし、テレアポが数件少ないだけでも責められてとても辛かったです。

社長は「営業から外すよ」と言ってくれましたが、1番辛い時期の妊娠3ヶ月~4ヶ月は営業のままでした。

安定期に入った5ヶ月でようやく事務仕事になった感じで、もっと理解のある会社に勤めたかったです。

後ろから女性に話しかける男性社員

女の敵は女だった

ももはな(40歳 自営業)


今から20年も前の事になりますが、当時20歳だった私は職場の女性の先輩たちから執拗な嫌がらせを受けていました。

職場は総勢40名程の部署で、女性はその4分の1の10名。私を除いて全員独身です。私は早くに結婚し妊娠したのですが、私の妊娠が判明してからは先輩たちの私に対する態度がそれまでとは180度変わりました。

以前はとても優しく、プライベートでも一緒にご飯を食べたり出掛けたりしていたのですが、「妊婦は行動が遅いんだから」など心ない言葉を浴びせられ、根も葉もない噂まで流されたりもしました。

最初は悲しくて先輩たちの前で涙を流したりしていた私でしたが、それを見ていた男性社員の方たちが先輩たちの行いを責めたことで、先輩たちから逆恨みされて嫌がらせがエスカレートしてしまったこともありました。

それからは何をされてもじっと耐えていました。無事出産し、職場復帰するまでの産休の間にその先輩たちはほとんど違う部署に異動になっていました。

唖然とした瞬間

とくとく(35歳)


マタハラを受けたのは二人目の子供がお腹にいるときで、私が32歳のときでした。マタハラ発言をしてきたのは、病院や福祉施設を経営する70代の理事長で、直属の上司にあたる女性の方です。

上の子供が入院したり体調を崩すことがあり、早退することもたまにありましたが、休まず出勤できるよう家族も協力してくれ、私自身も頑張っていました。

ある日、私が子供の体調不良で早退を申し込んだ時に、お腹を指さしながら「そんなんでこの先やっていけるの?」などとネチネチと嫌味を言ってきたのです。唖然としてしまい、何も言う気が起こりませんでした。

女性上司からのマタハラ

まなこ(24歳 アパレル)


私はアパレル関係の仕事をしているのですが、昔働いていた店舗でマタハラを受けたことがあります。

私がマタハラを受けたのは20歳の時です。若くして妊娠したこともあってか、年上で未婚の女性スタッフにあまり良く思われていなかったようです。

元々特別親しいわけでも仲が悪いわけでもありませんでしたが、私が職場に妊娠報告をした頃から明らかに私への態度が変わり始めました。最初は避けられているくらいだったのですが、次第にエスカレートしてわざと重い荷物を持たされたり、脚立に登らなければできない仕事を任されたりしました。

上司なので文句も言えず従っていたのですが、ある日別の上司がマタハラに気づいて注意をしてくれたおかげでマタハラはなくなりました。その後シフトも被らないようにしてくれたので本当によかったです。

後ろから男性社員に話しかけられる女性

男性からのマタハラ被害

職場でのマタハラを受けて

アヤト(36歳)


私が職場でマタハラを受けたのは30歳の頃です。私はこの頃個人のクリニックで看護師をしていました。

結婚したばかりだったので早く子供が欲しいなと思っていたら、嬉しいことにすぐに授かる事ができました。まだ初期の段階ではありましたが、「体調不良の時に職場にご迷惑をおかけするかも」と思い、上司である男性医師に妊娠を報告したのです。

男性医師はおめでとうとも言わず、あからさまに嫌な顔をしました。「産休に入る前に代わりの人見つけないとな、困ったなぁ」とため息をついたのです。私は申し訳なくなり「すみません」と謝りました。

その後もつわりで休みたいと電話した時も、男性医師は「病気じゃないんだからしっかりしてね」と言ってきたのです。私は嫌になりそのクリニックを辞めました。

男社会の中で受けたマタハラ

しおり(30歳 事務員)


建設業界の事務所で一人事務員として経理を担当していました。30歳で妊娠し、男の上司からマタハラを受けるようになりました。上司といっても事務所の所長で一番偉い私の直属になります。

年齢も20歳近く上で良い大人なのですが、建設業であるためか考え方がとにかく古く、マタハラ以前にも、女である私が常に気に食わないといった感じでした。

妊娠して安定期に入ってから報告しましたが、第一声は、「それはお前の勝手だろ。どうするの」と投げやりな一言でした。おめでとうの一言もなく、「私の仕事の後釜はどうするのか」「自分が責任もって何とかしろ」という話をされました。

私の産休中の後任のことは、上司であり所長である人がやるべきだと思いましたが、私がどうすればよいかあたふたして焦っている姿を見るために、わざとやっているようでした。

結局、産休に入るギリギリまで後任を雇わず、私が色々なことを短期間で新人に詰め込んでいたので、所長は私に聞こえるように新人に向けて、「こいつのせいで可哀想にね」などと話していました。

本来は産休に入って復帰する予定でしたが、所長のマタハラと今までの態度から、復帰するかどうかは今も悩んでいます。

つわりが原因でマタハラされました

さおり(28歳 営業)


27歳の時に妊娠がわかってから、つわりがひどく、固形物はもちろん水分でも吐いてしまうような状況に陥り、病院で点滴を受ける生活になりました。

仕事は立ち仕事だったため、出勤できず職場へ連絡しました。最初は上司(男性)も優しく、「有給休暇があるからそれで体調の様子を見て」と言われ、休みを取っていたのですが、つわりはどんどんひどくなっていき、2か月ほど休むしかありませんでした。

その期間は吐き気がひどく、上司への連絡は主人が行ってくれていたのですが、2か月を過ぎた頃に上司から「私自身と電話で話したい」と言われたそうで、私から直接連絡を取りました。その際に、不機嫌に「まだ治らないの」といったような心無い言葉をかけられました。

正直つわりがいつ終わるかなんてわかるわけがないので答えようがなく、通院していた産婦人科で母子健康指導事項連絡カード(診断書のようなもの)を記入していただき、事情を説明して、やっと自分の大変な状況をわかってもらえました。

コピーをとっている女性社員を上から見ている男性社員

施設長からのマタハラ

くみこ(29歳 介護職)


29歳で第二子を妊娠した時の話です。

デイサービスの現場職だったのですが、周りの同僚や直属の上司は私が二人目をほしがっていたことを知っていたので、妊娠の報告はとても喜んでくれました。働きやすい職場でしたし、育児休暇ありきで働いていたので、私は当たり前のように産休、育休を願い出ました。

するとめったに会わない男性の施設長から個室に呼ばれ、「産休の前例はないし迷惑だから辞めてほしい」とはっきり言われたのです。こちらとしては仕事内容は妊婦でも充分こなせるものでしたし、納得がいきませんでした。

その後直属の上司に相談し、二人で施設長のもとへ行き、もう一度休暇を願い出ました。「それでもだめなら然るべき機関に相談します」と言うとしぶしぶ許可はしてくれましたが、その代わり産休明けで戻ってくるように約束させられました。

上司のありえないマタハラ発言

さらさ(47歳)


マタハラを受けたのは私が33歳の時です。相手は直属の上司である男性でした。もともと女性蔑視というか、「女性の価値は若くて可愛いことである」と公言するような人です。

妊娠中でお腹に張りがあり辛かったので、自分の仕事を済ませて定時ですぐに退社しようとしたところ呼び止められて、若い女性の担当業務を私が対応するように言われました。体調が悪いことを伝えましたが、帰ってきた言葉は、「若い子に時間外に仕事を頼んだら可哀相だから」という信じられないものでした。さらに「妊娠したからって迷惑かけないように」とも言われました。

その時は何も言い返さずに無視しましたが、相手の態度がエスカレートしてきたため人事部に通報し対応してもらいました。本人には悪気がなかったのかもしれませんが、こうしたマタハラには毅然とした態度で対応すべきです

ドアの向こうから罵声を聞いてしまった女性社員

マタハラな部署異動

ポポロ(33歳 工場)


マタハラを受けたのは33歳の時です。相手は職場の男性工場長です。

産休、育休とお休みを頂き、保育園にも無事受かり「ようやく仕事に復帰できる!」と思い、会社に報告の電話をしました。すると工場長から「違う部署の子が辞めるって言ってるからそこの部署に行ってほしい」と言われました。

私が働いていた元の部署には期間限定の派遣の方が働いてくれていました。その方に継続で辞める部署に行けるかと聞いたら「嫌です」と断られたみたいです。しかもそのままその私が働いていた部署で継続で働きたいと…。

工場長は契約派遣の方を優先し、復帰する私に部署異動するよう指示しました。断ると辞めるよう言われるかもしれないと思い、結局は断れませんでした。

「マタハラ」という言葉はみんな知っていますが、子供が小さく、働き先があまりないので辞めることもできないので我慢して働かなくてはいけません。何の反論もできず泣き寝入りのままで働いています。

マタハラ体験談

そらりん(34歳 資材事務)


結婚して3年、望んだ妊娠でした。その頃の私は仕事が忙しく仕事が楽しくてしょうがない時期で、役職もあり、周りから認められていると自分では思っていました。

妊娠を上司に告げたのは母子手帳をもらってからです。上司は無理しないようにと言ってくれました。

それから2ヶ月後、人事異動があり上司が変わり、全く仕事を知らない男性が上司になりました。その上司は私が意見したり、自分より分かっているのが面白くないようで、打ち合わせ等に私だけ参加させないようにさせられました。

これから産休をとる為、引き続きをしなければならないのにマニュアルを作れと言われ、残業もほぼ毎日。「どうせいなくなるんだから」と影でグチグチ言われ続けました。

結局、人は入れてもらえず、かなりのマニュアルを作らされ、休む前は一言もかけてもらえませんでした。不当な解雇や昇格ではないですが、今思いだしても立派なマタハラだと思います。

個室で上司から説明される女性社員

口では配慮すると言いながら…

ちゃど(32歳 営業職)


高卒から入社して現在32歳、妊娠し出産をしました。

初めての妊娠で悪阻も酷く、社長には新しい年度が始まるので、迷惑の掛からない仕事への変更を依頼していました。

しかし実際は社長から直属の男性上司には話が回っておらず、私がいないと回らない現場。しかも夏場は42度くらいまで温度が上がる作業場で仕事を命じられました。

高温の現場以外の仕事内容は脚立を使わないと物が取れなかったり、思いコンテナを荷下ろししてり荷上げしたりと、とても重労働。「妊婦にはキツイです」とヘルプ依頼をかけたところ、「手伝うから作業せずに言って」と言われました。

しかし、常にその作業がつきまとう現場なのにもかかわらず、その上司は他事業所におりお願いできず、仕方がないので危険と隣り合わせで仕事をこなしていました。何かあっては言葉だけ掛けて、実際は何の配慮もしてもらえず…“「俺は手伝う」って言ってただろ”アピールが凄かったです。

そんな作業場を耐えて産休に入る予定日を告げると「そんなの聞いてない」と怒り出し、「産休は仕事をまっとうした人の権利だ」と言われ、休みの申請が受理されたのは産休希望日の前日の帰り際でした。考えられない職場です。

仕事と育児の両立の難しさ

レキシ(41歳 学芸員)


産後5ヶ月で当時37歳のときのことです。まだまだ育児も産後の体調も万全でない時に職場復帰した私にとって、日々が体力と締め切りに追われる職種柄、これまでの働き方をすべて一新しなければ成り立たないほどでした。

そんな私に心ない言葉をかけてきたのが当時の上司である50代の独身男性です。復帰後すぐ子どもの発熱による保育園からの呼び出しが続きました。

それでも全ての仕事を前倒しにやり、毎日いつ電話がきても早退できるように対応していたので、業務に支障はきたしていませんでした。しかし、上司からは「すぐに早退する態度が気に入らない、おかしい」と指摘されてしまいました。

その後も「産後復帰して以降、おかしくなったね」などまるで時代錯誤の愚痴を日々言われ続け、半分ノイローゼとなり本社に相談したのですが、その上司の異動が認められないとわかったので離職しました。

マタハラが起こる原因・対処法は?

マタニティハラスメントが起こる主な原因として挙げられるのが、職場での子育て制度の整備がなされていないことや、妊娠・出産の知識に対する男性社員の理解不足です。

マタハラを防ぐには、会社全体で子育て支援制度の仕組みを理解する姿勢を持つことや、労働者が自身の権利について知ることが必要です。ハラスメントのない働きやすい職場を作っていきましょう。