職場でのジェネレーションギャップとの向き合い方を考えよう
世代間にある価値観や考え方の違いを「ジェネレーションギャップ」と言いますが、ジェネレーションギャップは笑い話や愚痴、悩みのタネとなりやすく、ネガティブな意味として耳にすることも多いものです。
しかし、多様な人材を必要とする現代社会においては、ジェネレーションギャップとの向き合い方についても考え直し、組織の変化や強化につなげていく必要があると考えられるようになっています。ここでは、職場におけるジェネレーションギャップとの向き合い方について考えてみましょう。
「ジェネレーションギャップ」の辞書的な意味
「ジェネレーションギャップ」について辞書を引いてみると、「世代の差、価値観の違いから生じる世代間の断絶・考え方の違い、世代間格差」と、おおよそこのような意味を持っていることがわかります。
「ジェネレーション(世代)」が意味するところは約30年ですが、ジェネレーションギャップという言葉においては、あまり期間は重要視されていませんが、専門家の中には、以下のように分類する人もいます。
- X世代:1960年代初頭または半ばから1970年代に生まれた世代
- Y世代:1980年代から1990年代に生まれた世代
- Z世代:1990年代後半から2000年代に生まれた世代
ちなみに、一般的に「ゆとり世代」と言われるのは、Y世代の後半からZ世代の前半に生まれた世代となります(1996~2003年生まれ)。
英語での「gap」はもともと「隙間、溝、ズレ」といった意味であり、「断絶」「格差」まで行くとやや大げさな感じはします。ちょっとした「合わない」感じに対して「ジェネレーションギャップ」は使われることが多いものの、世代間における大きな違いを表す時には「断絶」とも言えますし、最近は「格差」と批判的な意味の表現で使われることも増えてきています。
「ジェネレーションギャップ」という言葉はどんな場面で使われている?
「ジェネレーションギャップ」という言葉がどのような場面で使われているのでしょうか。いくつか例文から、どんな使われ方をしているか見てみましょう。
ジェネレーションギャップという言葉を使った例1
同じ兄弟でも、12歳も離れていると子供時代についてはかなりジェネレーションギャップを感じる。特におもちゃやマンガ、ゲームの話題では痛切に感じる。
ジェネレーションギャップは、年齢差(世代差)から生じる経験や感性の違いについて使われるのが一般的です。この例1のように「同じ兄弟」であれば「同じ経験や感性が期待できる」と思っていたのに違う(=ギャップ)の部分を指します。そのため、ジェネレーションギャップの背景には、ある種の「同じだろう」という期待があることがわかります。
ジェネレーションギャップという言葉を使った例2
オフィスにある電話に出ない新人が多いのだけど、家にも卓上電話がなかったそうで、自分あての電話か分からないものを取る習慣がないらしい。ジェネレーションギャップを感じるしかないよ。
例2は、職場で感じるジェネレーションギャップです。職場のジェネレーションギャップでは、生まれた時代背景が違うことで常識だと思っていることにズレが見られるパターンが多いでしょう。
職場では「社会常識」という常識に基づいて様々なことが行われていますが、世代差を理由にその常識が身についていない場合、「ジェネレーションギャップ」と表現されます。
ジェネレーションギャップという言葉を使った例3
就職活動をした時期によって、失業率や平均給与に格差が生じているが、これもジェネレーションギャップだと言うことができる。
例3のように、最近はジェネレーションギャップについて、格差を示す言葉として使うこともあります。本来の使い方とは違うものの、「世代間の違い」を表す言葉としてこのような使い方もされています。
職場のジェネレーションギャップあるある
職場においては、若手社員とベテラン社員の間でのジェネレーションギャップが見られます。ここで、ジェネレーションギャップに関する会話の中でも、特に話題になること多い「あるある例」を紹介します。
仕事に対する取り組み姿勢についてのジェネレーションギャップ
- 最近の若い社員は、仕事が終わってないのに定時だからと帰る
- 新人により成長してほしいと思い苦言を呈したら、翌日会社を休まれた
- 若い社員がわからないことを質問せず、ネット検索を延々と続けている
- 若い社員はメモを取らずにスマホで写真を撮ろうとする
- 若い社員は他人のミスに厳しく、平然と指摘する
- 若い社員は何かあればすぐにブラック企業扱いする
- ベテラン社員が喫煙室にいる時間が長い
- ベテラン社員なのにいまだにパソコンやコピー機が使えない
- 若い社員が雑用をするのが当たり前だと思っている
- ベテランは「新入社員や女性社員は早く出社し机を拭くもの」と言っていて信じられない
コミュニケーションについてのジェネレーションギャップ
- 普通の会話をしているつもりが成り立たない
- 会話をしながら知らない単語が多く出てくる
- 若い社員は電話には出てくれないのにLINE通話だと連絡がつく
- 若い社員を飲み会に誘っても「飲み会はプライベートなものだから」と断られる
- 若い社員ほどSNSでの報告がやたら多く、直接報告してくれない
- 若い社員は本音を言ってくれないので、状況がつかめない
- 新入社員にFAXはおろか、「Eメールもほとんど使ったことがない」と言われた
- 若い社員が上司や先輩にも会釈程度の挨拶しかしない
- ベテラン社員が威圧的に感じられ話しかけにくい
- 若者に合わせたつもりでSNSをスタンプで返したら「マジメにやってほしい」と若手に怒られた
その他のジェネレーションギャップ
- 会社の付き合いなのに、自分の付き合っている異性についての話題はやめてほしい
- 場を和ませようと冗談を言ったらわかってもらえず、若い社員に説明を求められた
- 若い社員はプライベート重視で、仕事の付き合いのではプライベートを秘密にしたがる
- 若い社員に昨日のテレビ番組の話題を出したら「テレビは見ません」と言われた
- 若い社員に新聞一面の話題を出したら「新聞は見ていません」と言われた
- SNSで会社の悪口を言っている
- 何でも「ゆとり世代は…」と言うのをやめてほしい
- 休日まで会社関係の人と会いたくない
ジェネレーションギャップの乗り越え方
職場でも見られるジェネレーションギャップをプラスの方向に活用するためには、そのギャップを理解し、お互いの考え方の溝を少しでも埋めていくための取り組みが必要となります。ここで、ジェネレーションギャップの乗り越え方を見ていきましょう。
ステップ1.お互いの違いを認める
特に職場においては、日本経済が好況時に育ってきて就職した人と不況時に育ち就職した人とでは感覚の違いが見られます。また、携帯電話やインターネットの普及前後、スマホやSNSの普及前後に成長した世代などでも差異が見られることが多いです。
様々な差はある中で、価値観や感性には「正解」と言えるものはありませんが、実際には若い人もベテランもつい自分の世代を正当化して考えてしまいがちです。価値観などが違っても、それはどちらかが間違っているということではありません。お互いの違いを認め合い、まずはそのまま受け入れることが大切です。
ジェネレーションギャップが生じる大きな要因には、時代背景の違いがあります。たとえば、一家庭あたりの子供が多い時代と少ない時代とでは、年齢差のある人とのコミュニケーションを取る機会や、一人に注がれる教育費や遊興費などに差があります。そのため、同じ年齢だとしても経験してきたことがまるで違うこともあり得ますから、培われてきた価値観や感性も違うのが普通なのです。
ステップ2.信頼関係を築く
ジェネレーションギャップを乗り越えるには、お互いに信頼関係を築くことが重要です。信頼関係を築くことによって、お互いの胸の内を伝え合うことができるようになり、その結果業務上のコミュニケーションも円滑になります。
信頼関係ができているほど、ジェネレーションギャップを「間違い」ではなく、ひとつの「違い」として認識しやすくなるため、信頼関係を築くことは相互理解を深めていくためにも欠かせません。
信頼関係を築くためには、歩み寄る姿勢を持ち、個人を個人として認識し尊重しましょう。そして、一緒に行う仕事などを通し、お互いの共通点を作ったり見出していったりするプロセスが重要です。
ステップ3.共通の目標やルールを設定する
ジェネレーションギャップを乗り越える方法として、若い社員とベテラン社員共通の「目標」や「ルール」を設定することが効果的でしょう。そうすると、目標達成の過程においてお互いが持つ「違い」も時には武器になることや、自分のこだわりを捨てる必要性を認識できる機会が生まれるからです。
この目標やルールは、特定の世代の社員によって決められてしまっては意味がありません。多くの世代が共通して実践するためのものとして、様々な世代の意見を取り入れて作成されたフェアなものでなければいけません。
組織の共通目標やルールを企業のトップやリーダー職にあたる人がしっかり発信することが、世代を超えた協力体制を作り、ジェネレーションギャップが良い変化を生むことに繋がります。社員同士がジェネレーションギャップをうまく乗り越えられるかは、優れたリーダーシップ能力を持つ管理職がどれだけいるかによって左右される部分があると言えるでしょう。
ジェネレーションギャップは企業のイノベーションに役立つ
ジェネレーションギャップは考え方や認識の違いなどを意味するため、共通の目標や仕事の仕方を求められるビジネスの場では、組織のまとまりを失わせるネガティブなものとして捉えられがちです。
しかし、最近はダイバーシティ(多様な人材を受け入れて活かす考え方)を推進する企業が増えています。その理由は、人材の多様性こそが企業のイノベーション(新機軸)の源泉になると考えられているからです。閉塞感のある日本経済に変化をもたらす材料こそ、実はジェネレーションギャップなのではないかと考える専門家もいます。
ジェネレーションギャップは企業の生産性向上にも繋がる
イノベーションだけではなく、ジェネレーションギャップの存在を肯定的に考え、その活用を考えていくことは、社内の人材という資源を最大限に活用し、企業の生産性向上に寄与するところが大きいという意見もあります。そのためにも、ベテラン世代の常識や上下関係を押し付けるだけでなく、新しい関係作りが求められています。
いつも時代のトレンドは若者が作り、発信してきましたから、ジェネレーションギャップを批判的に考えるのではなく、そのギャップを通して若者の感性を知り、新しいビジネスにつなげていくことも大切です。逆に、社会を長く経験してきたベテランの知見は、若手にはなかなか得難いものですので、ギャップから学ぶことで成長速度を速めることができます。ジェネレーションギャップを「違い」や「差」として遠ざけるのではなく、ギャップを通して良い影響を生む方法を考えたいものです。
ジェネレーションギャップを気にするより個人として尊重しよう
ジェネレーションギャップが実際に存在しているのは間違いないのですが、しかしあくまで人間は「十人十色」と言うように一人一人違うものです。世代が違う人と感覚の違いを感じると、ついジェネレーションギャップとしてまとめてしまいがちですが、実際は個人間の差異の方がより大きいのです。
「ジェネレーションギャップ」という言葉に踊らされて、個人を個人として見ることができなければ、それは誰にとっても好ましいことではありません。若者よりもSNSやスマホを上手に使いこなすベテランもいれば、ベテランよりもビジネスマナーや社会常識がしっかり身についている若手もいます。
個人を個人として尊重することは、信頼関係を作っていく上でも基本的なことです。逆に言えば、ジェネレーションギャップについて批判的な話が出てくるなら、個人を尊重する姿勢が十分でない可能性が高いということでしょう。どれだけ完璧なビジネスマナーで身を固めていても、個人を尊重できなければ本当の意味でビジネスマナーが実践されているとは言えません。
職場でも個人をしっかり尊重した関係作りができているか振り返ってみましょう。周囲とそういう関係作りができるよう心がけると、ジェネレーションギャップに対する考え方もよりポジティブになるはずです。
ジェネレーションギャップは組織に良い変化をもたらすチャンス
全体のまとまりを失わせるネガティブなイメージがあるジェネレーションギャップですが、実は人材の多様性を表す言葉で、このギャップがあることは組織の変化をもたらすチャンスであるとも言えます。ジェネレーションギャップを組織にとってプラスの変化に活かすためには、相互理解や信頼関係、目標・ルール設定が大きな意味を持ちます。
ジェネレーションギャップを愚痴のタネにばかりせず、乗り越えるためにどうすべきか一度考えてみてはいかがでしょうか。きっと若手社員とベテラン社員の間に、新しい関係性が生まれていくはずです。