扱いにくい部下はどう指導すべき?
社会人として働く以上、いつかは指導される側から指導する側に立つこととなります。上司となってからは指導しなければならない部下の性格や能力も千差万別です。中には扱いにくい部下を根気よく教育していかなければないこともあります。
今まさに職場にいる扱いにくい部下への指導にお困りの方は、15名の体験談を部下育成のヒントに役立ててみてください。
扱いにくい部下の特徴あれこれ
部下に対し扱いにくいと感じるポイントはさまざまですが、今回の調査では以下のような意見が寄せられています。
- 年下の言うことはきかない
- 注意しても身だしなみを整えない
- 人の話を聞かない
- 注意すると言い訳をする
- マイペース過ぎる
- 仕事ができないのに自己評価が高い
- 人によって態度を変える
- 他の社員を見下している
- 協調性がない
- 前職での仕事を引き合いに出す
扱いにくい部下の原因の多くは年齢にある
扱いにくい部下についての調査を行ったところ、扱いにくいと感じている部下の年齢について「年下」と答えた方が6名、「年上」と答えた方が9名という結果となりました。
年上の部下に対し、「年長者ということもあって扱いにくさを感じる」「年下部下と比べて言葉遣いなどに気を遣う」という上司はやはり珍しくありません。しかしその一方で、年下の部下がいるという方の場合は、若手の新人社員の思いがけないゆとり行動に扱いづらさを感じている人も少なくないことが伺えます。
扱いにくい部下への指導方法は?15人に聞いてみた
扱いにくい部下にはどう指導を進めていくべきなのか、15名の方の体験談を参考にしてみましょう。
扱いにくい年下部下への対処法
面倒なので見て見ぬふりをしている
だいふく(40歳)
私の下についたのは20歳の女性です。他の会社で1年間事務員をやってきたとのことでした。私との年齢差は20歳なので娘みたいな感じで面倒をみていました。
はじめはわからないことは何でも聞いてくるイイ子ちゃんでしたが、途中からは自由奔放さんに…自分のやりたいように業務を進めて、困った時だけ猫なで声をあげる子でした。
事務員ですが一応食品会社だったので、メイクやネイルは華美にならない程度にしていましたが、彼女はど派手なジェルネイルで伝票がめくれない程でした。「気をつけようね」程度に初めは注意しましたが効果はなく、ど派手になるばかりです。「若いからいいか」というレベルを超えていました。
最近は自分が言うことに対して面倒になってしまい見て見ぬふりをしています。本当はそれではいけないのですが、来年新卒者が入ってくるので彼女に教育を任せようと考えています。そこを通って自分で気付くまで少し様子を見ようと思っている段階です。
どこかで割り切りが必要
けんけん(49歳 営業職)
扱いづらい部下の年齢は34歳の男性、私との年齢差は15歳です。その部下に対し「扱いづらい」と感じる理由は、すぐに言い訳をしてこちらの質問にきちんと答える姿勢を見せなかったり、私が話をしても適当な相槌で、説明した内容を理解しているのか理解していないのかを聞いてもまともに答えないからです。
その扱いづらい部下に対しては、話を短く区切って、その都度理解したかを質問し、どのように理解したのか説明を求めるようにしました。現在その部下との関係は以前よりも良好ですが、依然として扱いづらさは感じています。
仕事をしていると必ずしも自分と相性の良い部下ばかりではないので、部下それぞれの個性を把握すること、扱いづらいと感じる部下がいる場合は、仕事上だけの付き合いだとどこかで割り切ることが重要だと思います。
少しだけ高圧的に注意をする
みほこ(34歳 営業職)
一回り歳下の男性社員が入社してきて、私が直属の上司になりました。素直でやる気はある男性なのですが、実績が上がらないことを指導すると、「ボク、スロースターターなんです」と笑顔で答えたり、失敗を繰り返さないように注意すると「この方法でうまくいくこともあると思います。」と真剣に言ったり、反抗される訳ではないので扱いに困りました。
「あなたより上の立場の人はこう感じるよ」「うちの会社ではこういうルールになっているの」と少し高圧的に注意をするようにしたところ、厳しい雰囲気を察したのか徐々に周りの社員と同じような行動ができるようになってきて、今は割とうまく付き合えています。
扱いづらい部下への指導は、個性は活かしつつも会社のやり方に合わせるようにこちらが誘導するのが大事だと思います。
リーダーに任命しました
TAKA(41歳 事務職)
その部下は30歳の男性で、私との年齢差は10歳です。
仕事は速いし正確で抜群にこなしてくれる部下です。この部分では安心して仕事を任せることのできる人間ですが、対人、それも内部の人間との付き合い方が非常にへたくそなのです。そのため、上司部下問わず他の人たちは完全に上辺だけの付き合いとなっています。
他部署の上司に直接文句を言ったり、パートやバイトを見下したり、挙句は自分勝手に他部署を巻き込んでプロジェクトと進めたりと、ほとほと扱いに困りましたが、あることを行ったところ考えが一変してくれました。
今までは下っ端だったから上司が扱いに困ったわけですので、会社ぐるみではめるような形で、あるプロジェクトのリーダーに任命しました。1つの案を通すにはどのように手順を踏まなくてはいけないのか、部下を効果的に動かすにはどうしなくてはいけないのかを、身をもって経験させました。
プロジェクト終了時には人への気遣いや組織というものの在り方を学んだようです。現在はその部下と常に協力し合うようになっています。デキるけれど協調性がない部下には、まとめ役を任せて同じ痛みを知ってもらうのが一番だと思います。
毅然とした態度をとる
熱血(42歳 IT系)
IT業界に務める40代のプレイヤーです。数人から10人以内のチームを任され、部下指導を行うことが多くあります。いわゆる管理職というよりは現場の先輩という立場です。
部下になるのは新卒の新入社員から古参のおじさんまで様々ですが、その中でも扱いづらいのが「会社を信用せず期待もしていない新人社員」です。
会社の方針や社会貢献などを説いてもまったく反応せず、自分の興味と利益になるかが価値基準なので「会社の目標のために」というフレーズが何の力も持ちません。一方で自分の利益と都合については権利を主張してくる。指導しても、自分の価値基準に合うもののみを受け入れるというスタイル。ぶつかったまま雰囲気は悪くなるという悪循環です。
一度舐められると余計に言うことをきかなくなることも多いので、扱いづらい部下に悩んでいる方は、仕事中は毅然とした態度で、ビジネスライクに接することが大事です。
評価基準を見える化しました
たかー(35歳 取締役)
営業職で中途採用した30歳の男性の部下ですが、とても扱いにくく困っていました。
私は35歳で取締役の立場です。採用の時は非常に好印象の青年でしたが、自己評価が非常に高く、本来の実力とかなりの差があります。他の社員を見下す発言をし、会議などでも雰囲気が悪くなります。かといって本人の成績が良いわけではありません。
そこで、社内の評価基準を体系化して全て見える化を実施しました。評価と給与も連動する仕組みを作りました。各項目に対して自己評価をしてもらい、その後上司が評価を行います。上司評価にはロジカル的に理由を明確にし、言い訳できないようにしました。結果、部下との関係は良好となりました。
扱いづらい部下への指導は、自尊心を傷つけないよう褒めるところは褒めてバランスをとるようにしています。
扱いにくい年上部下への対処法
50歳過ぎたら変われないのが現実
バンバン(45歳)
35歳のときに営業部長を命ぜられ着任したのですが、社内でも有名な偏屈な営業部長代理が既に在籍しており、その人が扱いづらくて体調が悪くなるほどでした。
男性部長代理は59歳と大変年齢が離れていて、「若僧のいう事なんか聞けない!」というスタンツでミーティングも参加せず口も聞いてくれない悲惨な状態でした。
しかし組織運営上ここで引き下がるわけにもいかず、粘り強く朝から思いっきり大きな声で挨拶を繰り返し、とにかくコミュニケーションを取るように心がけました。
また、ある時その部下のお客様からクレームの電話があり、上司である私が謝罪をして対応しました。部下には内緒でサラッと終わらせて来ましたが、その部下から「有難う御座いました」とお礼を言われて、それからは私の言うことを素直に聞いてくれるようになりました。
結局のところ、自分に部長の力量があるのかないのかを試していたのかなと思います。親身に相談に乗り、ピンチになれば手を差し伸べてあげることで、仕事上の関係もうまくいくと思います。
毅然とした態度で臨んでいます
ペギ(36歳 事務職)
その部下は私より4つ上の女性です。私が勤めている会社の子会社の事務としてパートで採用されているのですが、彼女はその子会社の社長夫人でもあることから、入社当初から態度も大きく、また、私の会社の社長とは高校時代の同級生ということもあり、周囲の社員に対しての応対もかなり横柄なものです。
もともと彼女は専業主婦の傍ら、うどん屋でお運びさんをしていたそうで、会社勤めをしたことがありません。社会人経験も乏しいことから、電話応対や接客の際も敬語を使えずにいるため、適宜、私は注意を促しています。
年下の私に注意されることは彼女のプライドを傷つけるらしく、反発した態度をとることもありますが、「仕事でお金をもらっている以上は公私混同しないでほしい」と私も毅然とした態度で臨んでいます。
決して関係は良好ではありませんが、こちらは仕事と割り切っています。アドバイスとして言えることは、部下への指導では上司としてブレない姿勢を貫くということです。その姿勢は部下だけでなく、周りの人も見ています。強い心で部下を育てていきましょう。
扱いにくい部下は異性にまかせる
ふみ(46歳 事務職)
私がまだ30代の頃の話です。中途採用で40代半ばの女性が入ってきました。
年上なので敬語を使いながら命令口調にならないよう気をつけて指導していましたが、向こうはため口をきいてきます。仕事の説明の途中でもすぐに遮り、話を終わりまで聞きません。そんな状態なので当然ミスも多発します。チェックして直すよう指示をしても「はいはい」という生返事のみで、何度注意してもまったく改善が見られませんでした。
しかし、その年上女性の部下は、男性社員は大好きだったようで、男性が支持することは役職関係なしに素直に聞いていました。そこで、男性の部下経由で指示を出すようにしました。
その後、彼女は元々のスキル不足で部署異動、退職となりました。もし、同じような年上女性部下を指導するのでしたら、男性に任せた方がいいと思います。
言葉遣いを丁寧にするようにしました
くりかぼちゃ(45歳 事務職)
部下は55歳で、自分とは10歳差の年上の女性です。その部下は何か仕事を頼むと「私がやるんですか?」と言ってすぐに仕事を引き受けてくれないので、扱いづらさを感じていました。
その時に感じたのは、私の方で年上の部下に対する敬意が不足していたのではないかということでした。そこで、敬意を持って言葉遣いを丁寧にして仕事を頼むようにしました。すると、今までの険悪な関係がウソだったかのように、良好な関係に変わりました。
扱いづらい部下を持った場合には、「部下だからこのぐらいの仕事はして当然だ」と考えるのではなく、感謝の気持ちで仕事の依頼をすることが大切であることを痛感しました。部下との関係に悩んでいる人は、部下への配慮を大事にしてほしいです。
根気よく伝えることが大切
みっち(55歳 管理職)
部下は私より6歳年上の女性でした。年上というだけではなく、いろいろ経験を積んできたという自負をお持ちの方で、私や周りの同僚に対して指導してあげるというような言葉を度々発していて、とても扱いづらいと感じていました。
例え様々な職場でいろいろな経験を積んでこられたとしても、その職場にはその職場のルールなどがあるのですから、まずはその職場のルールを理解することが大切だと思い、機会あるごとにルールを伝えていきました。
「それはおかしい。前の職場ではこうだった」と仰るので、「前の職場は前の職場。今はここの職場でのルールの話をしています」と根気よく話しました。すると次第に以前の職場での話をしなくなってくれたので良かったです。私との関係は良好になったものの、周囲との関係が修復せず退職したのが残念でした。
扱いにくい部下への指導では、怒るのではなく根気よく伝えることが大切です。
毅然としていたら関係が良好になりました
ぶぅぶぅママ(38歳 店長)
自分が20代の頃に店長になり、50代の女性の方に仕事の指示を出す立場になりました。事業所を立ち上げたばかりでしたので、上からのプレッシャーも強くノルマもありました。入職したばかりの部下から有給の希望や、仕事中に喫煙休憩を希望されるなど戸惑うことが多かったです。
この部下については「渋滞時には運転したくない」「この内容の仕事はしたくない」など、はっきりと意見を言える方で、年上の方ということもあり正直扱いづらいと感じていました。
しかしその反面、「子どもと同じくらいの年齢だから」と距離感は近く、よく食事にも誘っていただいていたので、常に「お願いをする」というスタンスで接しました。まじめに誠実に接するようにし、できないことはできないとはっきり毅然とした返答をするように心がけているうちに、「頑張っているから助けたい」と言っていただけるようになり関係は良好に。「一緒に働けて良かった」という言葉ももらえました。
仕事上の付き合いは友人とは違うので、誠実に、一貫した毅然とした態度で接することで得られる信頼もあるのかもしれないと今振り返って思います。
押してダメなら引いてみる
えで(26歳 編集職)
年次は下でしたが年は私より上の男性が扱いにくい部下でした。教えた業務をなかなか覚えず、「前に言ったよね?」と聞いても「聞いてません」の一点張り。こちらが嘘をついているかのように振る舞うので、指示や引き継ぎの業務内容は全て書面化するようにしました。
また、私が年下だったこともあり、注意されたりキツく指示をするとふてくされたような表情をしたので、怒るのではなく冗談まじりで笑いながら注意するようにしていました。
しばらくしてお互い部署異動になったので一緒に働いた期間は1年ほどでしたが、最後までなかなか良好と言えるほどの関係にはなれませんでした。ただ仕事は少しずつですができるようになったのでよかったです。部下への指導は押してダメなら引いてみるのもポイントかもしれません。
無理をしない方がいい
ゆっち(販売業)
その部下は4歳下で女性です。扱いづらい理由は、自己中でなおかつ融通がきかない人だからです。明らかに会社として売り上げが落ちており、事務員の作業はどの社員が見ても明らかに減っているのに、「忙しい」「仕事がいっぱい」が口癖。おかげで、上司から私にその人がやるべき仕事が回ってきました。
売り上げの銀行への入金も、その事務員は出掛けたら1時間くらい帰ってこないので、そんなに時間がかかるものなのかと私が行ったところ、5分10分で終わり移動時間含めても20分で終わりました。ただサボりたかっただけのようです。
その扱いづらい部下には、はっきりこちらの意見を言ったり行動で示しましたがまったく無効力。関係は最悪です。こちらも「この人はこういう人だ」と思うようにし半ば諦めモードです。
仕事では少なからず合う人合わない人がいます。無理をするとストレスが溜まって身体を壊してしまいます。私は実際にその事務員に対するストレスで身体を壊したので、自分にとってこの人とは合わないと思ったら無理に合わせる必要はないと思います。
相手を尊重する気持ちを忘れない
ぱん(35歳 事務職)
仕事柄、自分より年上の中途採用者を指導することが多く、10歳くらい離れていた人も中にはいました。やはり部下の年齢が上だと扱いにくさを感じます。
できないことへの言い訳は多い上に、覚えが悪いために同じことを何度も指導するのはザラです。仕事のスピードは遅くても確実に間違いなくできるようになってくれたら何も言うことはありませんが、できない上に口が達者なので、こちらも言葉を選ばないと屁理屈で返されたり、粗を拾われたりもします。
私は年上の部下には指導の前に、「年下に言われるのは嫌かもしれませんが」と前置きをします。もちろん、年下であっても乱暴な言葉遣いは控え、相手を尊重する気持ちを忘れないことが大切です。
扱いにくい部下への指導は長い目で見て
扱いにくい部下への指導は一筋縄ではいかないもの。納得いかない部分や至らない点があっても、すぐに改善されるとは考えず、気長に根気よく教育していくことが大切です。
また、もし周囲に頼れる人がいるのであれば、自分一人で抱え込むのではなく、自分よりも上の上司や先輩社員に助けを求めるのもひとつの方法でしょう。