社会人ならビジネスマナーを身につけよう
ビジネスマナーとは、そもそもどれくらい重要なのでしょうか。日々仕事をしているだけなら、マナーなんてどうでもいいと考えている方もいらっしゃるかもいれません。
ビジネスマナーなんて、新入社員の頃に研修を受けた時に意識しただけだな、という方や、これから新社会人になるという方に向けて、改めてビジネスマナーについて考えていただく機会となれば幸いです。
ビジネスマナーとは何か
ビジネスマナーとは、仕事をしていく上で関わる人が気持ちよく働けるようにするための気遣いの総称です。
新入社員としてまず覚えなければならない挨拶の仕方や、敬語の使い方といった基本的な事から、実際にビジネスの現場で直接使う事になる、名刺交換の仕方や、メールの書き方、電話での受け答えなどまでがビジネスマナーに含まれます。
ビジネスマナーは仕事を進めるうえで欠かせないもの
ビジネスマナーは、仕事を円滑に進めていく上で欠かせないものであると言えます。これらができていないと、相手を不快な気分にさせてしまう可能性があります。
ビジネスシーンでは、当然初対面の人と関わる事も多くあるため、第一印象を良くするためにも、正しいビジネスマナーを身につけておいた方が良いでしょう。また、周囲の人とのコミュニケーションを図るためにも、マナーを正しく覚えておきたいところです。
マナーがあるかないかを第一に印象付けるのは身だしなみ
第一印象に関わるマナーとしては、やはり身だしなみが挙げられます。身だしなみは清潔感が求められ、乱れがない事が重要であるとされます。
髪は毎日梳かし、長さは見苦しくない程度にまとめるか切りそろえ、色は明るすぎないようにしましょう。女性の場合はメイクが濃すぎないように気を付け、男性の場合は毎朝ひげを剃るようにしてください。
爪は伸ばしすぎず、きちんと適度な長さを保つように注意します。また、ワイシャツは襟や袖の汚れがないように気を付け、アイロンをかけてしわをのばしておきましょう。
靴はしっかり磨き、汚れを落としておきます。ネクタイは曲がっていない事を確認し、上まで締めるようにしてください。
誰も気づかないだろう、というところを、自分が思っているよりも人は見ています。常に周りに見られているという事を意識して、自分の評価を外見によって下げてしまわないように気を付けたいところです。相手にとっても不快ですし、自分にとっても不利益を被るため、良い事は何一つないと言えるでしょう。
相手のために何ができるかを考えること
仕事をしていく上で、「相手のために何ができるか」を考える事も重要なマナーのひとつです。ビジネスは、助け合いがなければ成り立ちません。同僚、先輩、上司、後輩など、関わる全ての人に対して思いやりの心を持つ事が大切です。打算的になりすぎないようにしながら、相手のためにできる事を考えてみると良いでしょう。
円滑な人間関係を築くことを考えること
相手をひとりの人間として尊重し、関わり方を考える事もマナーであると言えます。人間関係を円滑にし、日々の仕事を実りあるものにするためには、自分の心がけが何よりも大事であり、常に好感を持ってもらえるように振る舞う事が理想的でしょう。誰かに迷惑をかける事はもちろんの事、相手を傷つけるような言動は決してしてはいけません。
敬語のビジネスマナー
自分よりも目上の人と話す時に大事なのが敬語の使い方です。敬語は日常的に使うようにして、正しい形を覚えてしまいたいところです。
先輩をお手本にする
尊敬語と謙譲語の使い分けや、普段使い慣れていない言葉をとっさに言うのはなかなか難しいものがあります。職場にお手本にできる人がいたら、積極的に真似をすると良いでしょう。二重敬語など、間違った敬語は相手にとって失礼であり、嫌みにもあたります。普段の会話の中でも、学生の頃や、友達の間で使っていた言葉を使うのはやめましょう。
バイト用語は使わない
バイト用語と呼ばれる言葉は使わないように気を付けてください。「~です」を「~になります」、「よろしいでしょうか?」を「よろしかったでしょうか?」、「お茶はいくつお持ちいたしましょうか?」を「お茶のほうはいくつお持ちいたしましょうか?」など、後者の間違った敬語は正すようにしましょう。
よくある間違いとしては、以下が挙げられます。
×「お客様がいらっしゃいました。」
○「お客様がおみえになりました。」
×「お世話様です。ご苦労様です。」
○「お世話になっております。お疲れ様です。」
×「了解いたしました。」
○「かしこまりました。」
上司は呼び捨てにする
社外からの電話や取引先においては、上司は呼び捨てにしましょう。最初は違和感があるかもしれませんが、社長も呼び捨てにするのがマナーです。「部長の佐藤を紹介いたします」「社長の加藤におつなぎいたします」など、遠慮せずきっぱりと呼び捨てしてください。
ビジネス会話の基礎は「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」
ビジネス会話の基礎となっているのは、尊敬語・謙譲語・丁寧語の3つです。
尊敬語とは、相手を敬う意味を持つ言葉です。自分よりも目上の人に対して、相手の動作や状態などを高める事によって敬意を表します。
謙譲語とは、自分をへりくだらせる事によって相手に敬意を表す言葉です。自分の動作や所属している場所(会社など)を含む諸々をへりくだらせる事で、相手を立てる話し方です。
丁寧語とは、相手が目上か目下であるかに関わらず、物事を丁寧に表すための言葉です。「です」「ます」「お~」「ご~」が代表的です。ビジネスシーンでは日常会話として使われています。これらの基本的な表現は使えるようにしておきたいところです。
尊敬語 | 謙譲語 | |
---|---|---|
言います | おっしゃる | 申し上げる |
見ます | ご覧になる | 拝見する |
聞きます | お聞きになる | お聞きする |
します | なさる | いたす |
行きます | いらっしゃる | 参る、伺う |
来ます | お越しになる | 参る |
います | いらっしゃる | おる |
なお、丁寧であるからといって、何にでも「お」や「ご」をつけてはいけません。明らかに不自然であるとわかるものにはつけなくて構いません。
電話のビジネスマナー
電話越しの声は聞き取りにくくなりがちなため、いつもより少し高めのトーンではっきりと話すように気を付けた方が良いでしょう。いつでもメモを取れるように、手元に置く事を忘れないようにしてください。
電話を受ける時は3コール以内にとる
電話を受ける時は、3コール以内に取ります。もしも3コール以上鳴ってしまった場合は、「大変お待たせいたしました、(社名)でございます。」と謝罪の言葉を入れましょう。相手が名乗ったら、「いつもお世話になっております。」と挨拶するのがマナーです。
相手の名前は必ず確認し、誰かに伝える際などに間違えないようにメモしておくと良いです。社名を聞く事も忘れないでください。
取り次ぎを頼まれたら保留にする
誰かに取り次ぐように頼まれたら、取り次ぐ相手の名前を確認した後、保留状態にします。もし取り次ぐ相手が隣にいたとしても、電話は必ず保留状態にします。取り次ぐ相手には、会社名と名前を正確に伝え、取り次いでも大丈夫かどうかを確認してから、確実に取り次ぐようにしましょう。
名指しされた人がいない場合は折り返しを提案する
名指しされた人がいない場合には、「申し訳ございません。あいにく○○は外出しております。午後4時ごろに帰社予定ですが、戻り次第ご連絡いたしましょうか?」と、現在外出中である事を伝え、折り返す事を提案します。
また、会議中である時も同じように対応します。外出している時や席を外している事は伝えても構いませんが、具体的な理由(どの会社との取引に向かっているかなど)までを相手に教える必要はありません。
名指しされた人が接客中だった場合は、接客中の人が優先されるため、緊急かどうかを判断する必要があります。もしも緊急である場合には、訪ねてきている人との会話を邪魔しないように「お話中、失礼致します」など一声かけてかメモを名指し人に渡しましょう。
伝言を頼まれたら復唱する
相手からの伝言を預かり、電話番号を聞いた場合は、必ず復唱する事を忘れないようにしてください。また、電話を受けた自分の名前を相手に名乗る事で、責任が自分にある事を伝えましょう。もちろんメモに残すことも忘れてはいけません。
かけた時は今話してもいいか確かめる
こちらから電話をかけた時には、必ず「今お時間よろしいでしょうか?」など、相手に今電話をしても良いかどうかを確かめてから用件を切りだすようにしてください。時間が取れないと言われた場合には、何時ごろなら大丈夫かと聞き、折り返す旨を伝えます。
なるべく朝早くや退社間際、お昼時などの電話は避けるようにして、相手の迷惑にならない時間帯を選んで電話をかけるようにしましょう。
挨拶のビジネスマナー
挨拶は、どのような時でも自分から先に、相手の目を見て明るく元気よくできるようにするのが基本です。はっきりとした言葉と、きちんとしたお辞儀がともにできていなければいけません。こちらの挨拶が相手に伝わるようにする事で、好感を持ってもらう事ができます。先に言葉を言ってから、綺麗にお辞儀をすると、マナーを守った挨拶になります。
お辞儀をする時は背筋を伸ばしてから
お辞儀をする時には、基本的に両足を揃え、背筋を伸ばしてまっすぐ立ちます。男性は両手をわきに付け、ズボンの側面の縫い目に中指がつくようにします。女性は両手を前で揃えてください。
1日に社内で接する頻度が多い人や、上司、先輩などには会釈をしましょう。会釈は上体を15度程曲げて、目線は先を見ます。頭をすぐに上げないように気を付けてください。
敬礼は30度
敬礼は、出社時や退社時、初対面の人に会う時、他の部署に入る時などにするお辞儀です。上体を30度程曲げ、猫背にならないように気を付けます。
最敬礼は45度
最敬礼は、お礼やお詫びをする時などに使い、上体を45度程曲げ、自分のつま先を見ます。頭を下げている時間が最も長いのがこのお辞儀の仕方です。お辞儀を終えて頭を上げた時は、相手をまっすぐ見ましょう。
目上の人には通り過ぎるまで挨拶を続ける
社内で上司や先輩などの目上の人に挨拶する時は、立ち止まり、相手が通り過ぎるまでお辞儀を続けてください。仕事で関わるお客様には、「お世話になっております。」と挨拶をしましょう。
エレベーターの中では会釈
エレベーターや出勤中の電車の中などで出会った場合には、一声かけるか、(「失礼します」や「おはようございます」など)込み合っている場合は会釈をすると良いでしょう。
外出する時は「行って参ります」
オフィスから外出する時は、「~に行って参ります」と一声かけ、自分がどこへ行くのかを皆に知らせます。反対に、外出する人には「いってらっしゃいませ」と声をかけて送り出します。挨拶の基本はやりとりであるため、相手を大事にした声掛けを忘れないようにしましょう。
外から戻ったら「ただいま戻りました」
帰社した際には、「ただいま戻りました」と声をかけるようにして、自分がオフィスに戻った事を認識してもらうようにしてください。また、帰社した人には「おかえりなさいませ」と挨拶して、ねぎらってあげましょう。
退社する時は「お先に失礼いたします」
退社する時には、「お先に失礼いたします」とオフィスに残っている人たちに声をかけてから帰るようにすると良いでしょう。また、退社する人には「お疲れさまでした」と挨拶をしましょう。
「ご苦労様でした」という言葉は、目上の人から目下の人に対して使われる言葉なので、上司や同僚に対して使うものではありません。
名刺交換のビジネスマナー
名刺を渡す時は、自分の所属している企業と部署名、氏名を名乗りましょう。この時、片手で渡すのはマナー違反です。名刺交換の際は基本的に両手で名刺をやり取りする事が望ましいと言えます。
先に受け取る方がお客様
お互いが名刺を持っている場合は、後から受け取る方は両手を使う事ができるため、先に差し出す方が相手に対して敬意を払っている事になります。そのため、先に受け取る方がお客様にあたります。
もしも相手が先に名刺を差し出してきたら、まずそれを両手で受け取り、「ご挨拶が遅くなりまして申し訳ございません」と一言添えてから名刺を差し出すようにしましょう。
受け取る時は「ちょうだいします」
受け取る時には、「ちょうだいします」と一言添えてから両手で受け取り、自分の名刺入れをテーブルの上に置き、その上に置きます。複数名の名刺をもらった場合には、座席順に並べておくと相手の名前を覚えやすいです。この時、最も役職が高い人の名刺を名刺入れの上に置きます。
読めない時はその場で確認する
名刺に書いてある名前が読めない場合は、その場で「失礼ですが、なんとお読みすればよろしいのでしょうか?」とたずねて確認しましょう。相手の名前は、後になって確認したり、間違えたまま読んでいると失礼にあたります。
名刺は名刺入れに入れる
自分の名刺を持ち歩く時は、必ず名刺入れに入れて、汚れたり折れたりしないようにしましょう。取引先などへ外出する時は、取り出しやすい場所に入れておき、もたつかないように心がけましょう。
名刺を切らして相手に迷惑をかけたり、不快な気持ちを与えたりしないように、常に早めに手配しておくように注意しましょう。
受け取った名刺の裏に相手の情報を書いておくと便利
受け取った名刺は、持ち帰ってから相手に関する情報を書いておくと後々役に立ちます。会った日時や会話の内容などを簡単にまとめておくとよいでしょう。名刺が増えてきたら、ファイルやデータベースなどを使ってわかりやすくまとめておくようにしてください。
名刺交換をしたらお礼のメールを送る
名刺を交換した日、または次の日には必ずお礼の意を伝えるメールを送るようにしましょう。名刺交換をしただけの関係でも、そうしてメールを送る事によって自分を相手に印象付ける事ができるため、ビジネスシーンにおいて有利に働くでしょう。
メールのビジネスマナー
ビジネスメールはわかりやすい事が第一です。まず自分(差出人)がどこに所属している誰であるのかを書きます。書き出しに拝啓などは必要なく、また、時候の挨拶も要りません。適度な改行を行い、空白の行を入れて、相手が読みやすいようにしましょう。
最後に署名を入れる
メールの最後には必ず署名を入れます。所属、名前、メールアドレス、電話番号など、社内外で使い分けて、規定のものがあればそれに従いましょう。
CCとBCCを使い分ける
「CC」は「Carbon copy」の略称であり、メールを送信した全員にそのアドレスがわかるように表示されるため、他に誰がそのメールを受け取ったのかがメンバーに伝わる仕組みになっています。
「BCC」は「Blind carbon copy」の略称であり、他に受け取った人が表示されないようになっています。「CC」と「BCC」は、送るメールの内容と状況によって使い分けて下さい。
返信は「Re:」が1つだけついた状態で返す
メールに返信する時には、「Re:」が1つだけついた状態で返すのがマナーです。タイトルは変更しない方が相手にとってわかりやすいですが、何度もやり取りを重ねていくうちに「Re:」が増えていくと見づらくなってしまいます。その場合には「Re:」を削除して1つだけにします。
社内文書のビジネスマナー
社内文書を書く時には、まず何についての文書であるかがすぐにわかるように、初めに結論を示し、詳細はその後で記すようにします。
数行で段落を分け、読みやすさを心がけます。文体は「~です」「~ます」調で統一してください。箇条書きを使って見やすさを優先するのも良いでしょう。提出する日付、また、自分が書いたものである事がわかるように氏名は必ず記載してください。
「様」と「殿」のビジネスマナー
「様」は目下の人や目上の人、お客様など、立場や場面に関わらず使う事ができます。口語・文書どちらでも使用可能です。一方で「殿」は、文書のみで使用でき、目下の人に対して使う敬称です。
個人同士のやり取りでは「様」をつけるのが無難であると言えるでしょう。会社を代表して個人に送る文書には、「殿」を使うと自然です。
役職名に「様」や「殿」をつけるのは使い方として間違っています。「部長様」「社長様」などは誤りであるため、もし敬称をつけたいのであれば、「部長の○○様」、「社長の○○様」などといった言い方をすると良いでしょう。
ビジネスマナーを身につけると仕事が円滑に進む
仕事ができる人は周囲への気遣いができており、マナーを心得ている人であると言えるでしょう。無作法な人は嫌われてしまい、人を寄せ付けなくなってしまいます。
もしも、もっと仕事をスムーズに進めていきたいと考えているのであれば、ビジネスマナーを見直してみてはいかがでしょうか。思わぬところに小さなミスがあるかもしれません。