社会人として押さえておきたい席次マナー
社会人として一生懸命に仕事をこなす毎日。そんな働く大人たちの日常には、知らなければ恥をかいてしまうかもしれない「席次」というマナーが存在します。
あなたを取り囲む環境には、上司などの目上の方やお仕事でお世話になっている取引先の方など、敬意をもって接するべき相手が沢山いるのではないでしょうか。そんな人たちと少しの時間を共にする際に必要になってくるのが「席次スキル」であります。
普段の生活の中で起こり得るあらゆる状況化で、立てなければいけない人を適切にご案内することができるでしょうか。
全く気にしない人も中にはいますが、スマートな席次案内をすることができると「お!デキるな!」と自分の評価も上がります。ここでは、社会人の日常で席次が必要となるシーン別に、目上の方への適切な席次マナーをご紹介します。
ビジネスシーンで必ず要求される「席次」とは
席次は目上の方・取引先の方への敬意やおもてなしの心
そもそも「席次」とは何のことなのか…若い社会人ビギナーな皆さんなら言葉は耳にしたことがあっても、実際にどのような場面でどういった行動を取ればいいのかは分からないかもしれません。
「席次」とは、ビジネスシーンなどで立てるべき目上の方や取引席の方への敬意を、おもてなしの心でご案内することです。
ただ席へお通しするだけではなく、相手を立てることで気持ちよく過ごして頂く見えない心遣いのこと。その心遣いがご案内する席によって伝わる…という、知らなければ逆に失礼になってしまうかもしれないマナーです。
席次の知識は社会人としての常識が問われる
そしてこの席次に関する知識は「社会人ならできて当然」という暗黙の了解もあります。学生時代に先輩から飲み会などを任されていた人は多少の知識があるかもしれませんが、社会に出て一から教えてくれる余裕のある上司は、今のご時世そう多くはありません。できなければ「常識がない」と思われたり、原因も分からぬまま先輩や上司から雷を落とされたり、なんてことが起こります。
何よりも困るのが、自分の間違った席次案内によって相手の方はもちろん自分の上司の顔にまで泥を塗ってしまうことです。したがって、席次は「教えられるもの」ではなく、自らが「一社会人としての責任感を持って身に付けるべきこと」なのであります。
シーン1.歓送迎会や宴会での席次マナー
社会人の席次マナーが必要になる状況、それは季節やイベントごとに訪れる宴会・飲み会です。自分が勤める部署の内輪な飲み会から、普段は接することのない他部署の上司や社長・中には取引先の方を招いての会食もよくあること。そんな時こそ「どなたをどこへご案内すべきか」という席次マナーを熟知していると安心です。
部屋の奥に招待する方(上座)/入口近くに迎える側(下座)
まず飲み会や宴会の席へご案内する時、必ず意識する点が「上座」と「下座」の位置関係です。上座は目上の方をご案内する席、下座は部下など案内する側が座る席になります。基本的には、部屋の奥が上座になり、入り口に近くなるほど下座になります。
普通の部屋での宴会の場合の席次
特徴のないノーマルなお部屋・場所での宴会の場合、目上の方を席次マナーに従って奥の席へご案内していきましょう。入り口近く・または店員さんが通る廊下側の席は慌ただしいため、この会を案内する側や部下が座るべき下座になります。
眺めの良い景色がある部屋の場合の席次
宴会の会場によっては、お部屋から外の美しい景色を望めるような窓付きのスペシャル空間での開催もあるかもしれません。このような時には、ぜひ目上の方や招待する方に景色が見えるお席へご案内しましょう。例え景色の見える窓が部屋の奥にあっても、景色を楽しんでもらえる席(入り口側)を上座にすると好印象です。
席次はエアコンや室内のコンディションも考慮する
お部屋の座る位置によりエアコンの風がもろに直撃したり、部屋の構造上、座って頂くには少し窮屈で決して快適とは言えない上座もあるかもしれません。そんな時には機転を利かせて「エアコンの風が少々きついですので、こちらへお座りください」「あちらの奥の席は少々窮屈ですので、どうぞこちらへおかけください」など、より快適なお席へとご案内しましょう。
床の間がある和室での場合の席次
料亭などでの宴会の場合、和室のお部屋に床の間がある時があります。もちろん、床の間側が上座になりますが、床の間が部屋のどの位置にくるか…でも若干座る位置が異なりますので要注意です。
床の間が部屋の中心に位置する場合
床の間の前が上座(座る際には背中が床の間側)、上座を挟んで床の間を背にして左側に次に目上の方、その次は右・左と順番に目上の方順に座って頂く「左上位」のルールでご案内します。
床の間が部屋の左右に寄っている場合
長テーブルが床の間がある面に対して垂直に置かれている場合には、床の間側にご招待するお客様に横一列(テーブルを挟んで並び)で座って頂き、入り口に近いもう片方のテーブル側に招待する側がお客様たちと向かい合う形で横一列に着席します。
イレギュラーな上座にご案内する時は一言添えよう!
通常の席次とは違うお席へご案内する時には、必ず一言添えてお席へご案内するようにしましょう。こちらが「きっと察してくれるだろう」と思っていても、実際に案内された側からすると「あれ?」という不思議な感覚と共に、人によっては不愉快に思われるかもしれません。
景色を楽しんで頂くために、入り口付近にご案内する時
「本来なら奥のお席にご案内するべきなのですが、こちらからの景色がとても美しいのでどうぞこちらへ」
シーン2.社外からのお客様への対応・応接室での席次マナー
自分たちの会社に、社外からお客様がいらっしゃることも多々あります。どんなにカジュアルな職場であっても、やはり最低限の席次マナーを持ってご案内したいものですね。
普通の応接室の場合の席次
会社にお客様をお通しする応接室がある場合は、予め「お客様はこちらへご案内する」という席が決まっているかと思います。社外からの方を初めてご案内する際には、先輩や上司に「どちらへお通ししたら良いですか?」「お客様は奥のお席に座って頂いても良いですか?」と確認しておきましょう。
椅子やソファの種類によって上座・下座を分ける
応接室に種類の異なる椅子・ソファが置かれている場合は、その種類によってお客様にお座り頂く場所を判断します。以下は椅子の種類別・上座からの順番を示したものです。
ソファ/長椅子(肘掛けと背もたれがある椅子)
↓
肘掛けと背もたれ付きの一人用椅子
↓
背もたれ付きの一人用椅子
↓
肘掛けも背もたれもない一人用の椅子
役員室の応接スペースの場合の席次
役員室を応接室としても利用している場合、社長や役員のデスクが置いてあるかもしれません。そのような部屋構造では、社長・役員などのデスクがある側が下座になります。デスクが部屋の奥にある場合には、上座は反対側になるため入り口側にお客様をご案内することもあります。
社内の応接スペースの場合の席次
応接室ではなく応接スペースを社内の一角に作っている場合、オフィス/社内スペースがある方が下座になります。考え方によっては「お客様に社内の様子を見えないように…」と逆の席にご案内したい気持にもなりますが、基本的には社内スペースがある方に招待する側が座ります。
シーン3.ちょっとした日常の心得・エレベーターでの席次マナー
こちらはビジネスシーン以外でも使えるエレベーターでの席次マナーです。目上の方やお客様とエレベーターでご一緒する際にも、とっさの席次マナーでスマートにご案内しましょう。
エレベーターは西洋風の右上位が上座になる
エレベーターの上座・下座も部屋の席次と変わらず、目上の方が奥に乗って頂くようにご案内します。
上座:エレベーターの奥・向かって左側が最上座
下座:エレベーターの操作盤の前・ドアの前
エレベーター内が込んでいる場合は目上の方に先に乗ってもらう
エレベーター内が込んでいる場合にも、目上の方に先に乗り込んで頂き、部下は外からエレベーターのドアをさりげなく押さえておきます。そして自分は最後に乗り込みます。面識がない方とエレベーター内で乗り合わせた場合も「何階へ行かれますか?」と操作盤の前にいる人が進んで周囲の方に声掛けをしましょう。
シーン4.運転する人によって変わる?タクシーでの席次マナー
誰かと一緒に車で移動をする際の席次マナーは「運転する人が誰なのか」という点で上座・下座が変わります。
タクシーの運転手がいる場合の席次
タクシーに乗ってみんなで移動する時は、運転手の後ろが上座、助手席が下座、後部座席は真ん中に一番の部下が座ります。
身内が車を運転する場合の席次
助手席が上座、後部座席は右側から目上の方・その次の人が左側、真ん中の席は一番の部下が座ります。
シーン5.招待客に失礼のない・披露宴での席次マナー
人生の晴れ舞台である結婚式の披露宴では、主役の新郎新婦を祝福するために家族以外の方たちも多く参列されます。披露宴の規模・趣向・招待客の種類によって若干席次は変わってきますが、基本的には以下の点を意識してご案内する席を決めていきましょう。
新郎新婦との関係性によって席次を決めていく
上座:新郎新婦に一番近い席=主賓や仕事先の上司
下座:新郎新婦より一番遠い席=家族や親戚
上座の両脇:友人や会社の同僚
家族の席次:両親が末席・年配者/遠い親戚から上座へご案内する
結婚式の多様化&縮小化に伴う席次の有無
一昔前は仕事先の上司や同僚を招待して大掛りな披露宴をする派手婚の傾向が強くありましたが、近年は「家族だけ」「親しい友人だけ」「二人だけ」とより結婚式が親密化したことから、今までの披露宴での席次を必要としない風潮が出てきました。
しかし、親しい間柄の人だけを招待しての披露宴であっても、相手のことを思っての席決めはとっても大切。「みんな仲良しだしどこでもいっか」ではなく、せっかくお祝いに来てくださるゲスト一人一人の顔を思い浮かべで、心のこもったオリジナルの席次を作ることをお忘れなく。
ビジネスシーンの席次知識は一生使えるスキル
身に付けてしまうと習慣化して自然とスマートな席次マナーを披露できるようになります。これはビジネスシーンに限らず、あらゆる生活の場面で求められる大人の常識でもあるのです。最初は戸惑ってしまう席次マナーですが、一度覚えると一生使えるあなたのスキルになるので、ぜひ積極的に周囲の人を立てるおもてなしの心を持って過ごしましょう。