「運びとなりました」のニュアンスが伝わる上手な使い方
「運びとなりました」はビジネスシーンでよく耳にする表現ですが、この言葉のニュアンスや意味を具体的に考えることは少ないものです。実は「運びとなりました」の表現を上手に使えるようになると様々な場面で言葉から与えるニュアンスを変えることができるのです。例文を見ながら確認してみましょう。
「運びとなりました」の意味を知って正しく使おう
「運びとなりました」の意味としては、「物事が決定する、進行する」という意味です。
「運ぶ」という言葉は、荷物などをある地点からある地点まで移動させることを言いますが、ビジネスの場合には、ある仕事の進度がある地点からある地点に移動する(進む)ことを指します。
「運びとなりました」ということで、ただ「決定しました」「進みました」という場合と比べて、意外性や他の手が入った様子を表すようになります。「運」という字は「運命」にも使われますが、「自分以外の力によって動かされる」という意味もあります。そのため、自分の思い通りに100%進んだわけではないものの、進行している様子を表します。
「運びとなりました」が示すのは、大きくは問題なく進行はしているが、一部が本来の計画からは変わっている状態を示していると考えることができます。
「運びとなりました」を正しく使うポイント
「運びとなりました」を正しく使うためのポイントについて整理しましょう。注意すべきポイントを常に意識することで「運びとなりました」を適切に用いることができるようになります。
表現のニュアンスに注意する
「運びとなりました」と表現する際には、「進みました」「決定しました」よりも、少しイレギュラーが入っているため、言い切りの表現よりもやわらかい印象を与えることができます。「進みました」「決めました」「変更しました」といった表現は、経緯を知らない人にとっては独断で決めたように思われることもあり、特に自分を低めてスピーチをする必要がある場合には適していません。
焦点は「進行」か「変更」かを考える
「運びとなりました」の中で最もしっかり伝えたいことは「進みました」ということです。そのため、大きな変更が起こってしまった場合に使うのは適していません。当初予定していた内容とは若干変わっていますが、大きくは問題なく進んでいるということの表現です。
プライベートでは、大きな出来事の時にのみ使う
「運びとなりました」をプライベートで使う際には、結婚式や同窓会など多くの人が集まる場で使うようにします。その際には、「運びとなりました」という表現の中に「たくさんの人たちのご協力のおかげで」というニュアンスが入るようになるためです。自分ひとりですべてを進めたという印象を与えないためにも大事な言い回しです。
「運びとなりました」を使った例文
「運びとなりました」を使った例文を実際に見ながら確認してみましょう。3つのシチュエーションで紹介をしていきます。
大事なスケジュールの連絡
来月24日に、全国の支社長を集めての戦略的経営会議を開催する運びとなりました。ご多用のところ大変恐縮ではございますが、ご出席のほどよろしくお願い申し上げます
A社担当の〇〇様との調整の結果、A社の役員を交えた事業提携についてのミーティングを5月20日に開催できる運びとなりました。スケジュールの調整をお願いしたく存じます
大事な予定についての連絡では「運びとなりました」が丁寧な言い方になります。また「運びとなりました」の中には、「他の参加予定者のスケジュールの都合」や「様々な調整の努力」がニュアンスとして入りますので「別の日にしてくれ」とは言いにくくなります。
丁寧な謝罪
弊社で提供させていただいておりました業務支援ソフトにつきまして、一部OSへのサポートを終了させていただく運びとなりましたことをご連絡申し上げます。ご利用いただいていたお客様には大変ご迷惑をおかけいたしますが、ご理解のほど宜しくお願い申し上げます
丁寧な謝罪の場面でも「運びとなりました」はよく使われる表現です。この場合は「決定しました」と比較して、「運びとなりました」の方が「悩んだ末」というニュアンスが伝わりますし、やわらかく丁寧に聞こえます。何より、「思っていた通りではない結果」であることが暗に伝わるため、批判をやわらげてくれます。
転勤や結婚などのプライベートの挨拶・連絡で
この度、私Bは、熊本支社へ転勤する運びとなりました。東京本社の営業部で10年やってきたノウハウを活かし、さすがは本社の営業部員だと言われるような仕事を熊本でも行ってきたいと思います
今年の6月20日に、Cさんと結婚をする運びとなりました。つきましては、私どもの結婚式へのご列席をお願いしたく存じます。返信用の葉書にご都合をご記入いただき、返送いただきたく存じます
プライベートな挨拶や連絡の際には、生活が大きく変わるような場面や、多くの人が関わるような用件である場合に使うのが適切です。
「運びとなりました」と「運びになりました」は違う?
「運びとなりました」は「運びになりました」と使われることもありますが、これは少々意味のニュアンスに違いがあります。
- 今週の会議は来週末に延期する運びとなりました
- 今週の会議は来週末に延期する運びになりました
文字で見てもあまり違いを感じることができないかもしれませんが、この表現には話す側の感じているニュアンスに若干の違いがあります。
「運びとなる」は変化の結果がやや協調され、意外だったというニュアンスになります。一方で、「運びになる」は話し手にとって、計画通りではないものの当然そうなったというニュアンスが含まれます。
大きく違うということはありませんが、緻密な言葉の選択が求められる場合には注意しておくべきでしょう。また、「運びとなる」の方が書き言葉で使われることが多く、「運びになる」の方が口頭で使われやすいという傾向があるので覚えておくといいでしょう。
「運びとなりました」の類義語
「運びとなりました」と表現する際には、同様の意味を持つ様々な類語表現も知っていると表現の幅が変わってきます。それぞれ微妙にニュアンスが違うので、うまく使いわけましょう。
進め方になります
「運びとなりました」と同じような意味ですが、少し砕けて感じる表現です。社内の会議などでは特に問題になることはないですが、公的な場での挨拶などでは使わない方が良いでしょう。
決定しました、決まりました
「決定しました」というのは決定によって物事が進む場合に「運びとなりました」と同じ意味を持ちます。「運びとなりました」と比べて強い表現になりますので、使いどころに気を付ける必要があります。
変更されました
「運びとなりました」では多少思い通りにいかないところがあれど、「進んでいる」ことが強調されます。「変更されました」の場合は、変更がより強調されるので、フォーカスする場所に注意しないと余計な疑問を抱かせるため注意が必要です。
「運びとなりました」のよくある誤用
「運びとなりました」は、ビジネスシーンでは比較的使うことの多い場面ですが、使い方を間違ってしまうと思ったようなニュアンスが伝わらないことがありますので注意しましょう。
たわいもないことで使う
×「本日の出社は、少々遅れる運びとなりました」
×「コピー枚数は、10部との運びとなりました」
「運びとなりました」は、プロジェクトの進行報告や公な連絡などには適していますが、私的なことや、ちょっとした事を伝える上では使用しません。「運ぶ」というのはそれなりに大変な仕事をイメージする言葉ですので、ニュアンス的にも不自然です。
「自分の力によらない」何かがあるというニュアンスもありますから、たわいもないことで使用すると、「そんなことも自分で何とかできないの?」というマイナスイメージを持たれてしまいます。
コミュニケーションがうまくできていない中で使う
上司や先輩など、普段あまりコミュニケーションが取れていない中で「運びとなりました」と使うと、自分を差し置いて勝手に決めて進められているという印象をもたれかねないです。自分が任されたことを会議などで不特定多数に報告する上では構いませんが、相談を仰ぎながら進めるべき相手に対して使うには問題があります。
「運びとなりました」を使いこなして上手な連絡・報告をしよう
「運びとなりました」は、ほうれんそうと呼ばれる報告・連絡・相談のうちの相談には適さない言葉ですが、報告や連絡に使うことによって、実際の仕事の進捗だけでなく、その結果に関する自分の印象も伝えることができます。仕事をする上では成果も大事ですが、そのひとつひとつにどのような印象を持つかということも評価を得るためには大事なポイントになりますので、上手な言葉遣いで良い印象を与えましょう。
使用シーンやニュアンスを間違えなければ、大きな失敗はありませんので、積極的に使って語彙を増やしていきましょう。