コンセプチュアルスキルって?今注目の概念を扱う能力を鍛えよう
コンセプチュアルスキルは、就活市場や転職市場において注目を集めている能力です。具体的にその意味や必要性を理解し、鍛え方を知っておくと様々な場面で役立ちます。コンセプチュアルスキルについてインタビュー形式でわかりやすく紹介します。
コンセプチュアルスキルは企業が注目している能力のひとつ
現在の就活・転職市場では、以前に比べて、様々な能力を分析し、企業の求める人材とのミスマッチが発生しないように研究が続けられています。その中で注目を集めている能力のひとつが「コンセプチュアルスキル」です。
今回は、大学で就活サークルを立ち上げた酒井君が、経営コンサルタントのK・エーイ氏にコンセプチュアルスキルについてインタビューしてきました。どのような能力で、どうして今必要とされているのでしょうか。
コンセプチュアルは概念を取り扱う技術のこと
―おはようございます!エーイさん、本日もよろしくお願いします!
はい、酒井君は今日も元気ですね。よろしくお願いします。
―先日、就活に向けて関心の高い人向けに、大学で就活サークルを立ち上げました。具体的に就活に役立つトレーニングができたらということで内容を考えていたのですが、「コンセプチュアルスキル」について検討してみようという話になりまして。
コンセプチュアルスキルですか!面白いところに目をつけましたね。
―面白い?どうしてですか?
実は、このコンセプチュアルスキル、今、企業の人事担当者や人材コンサルタントなどの間でも特に注目されているテーマのひとつなんです。
―そうなんですね!でも、ネットでいろんな情報を見ても今ひとつ掴みきれなくて困ってるんです。エーイさん、コンセプチュアルスキルについて教えていただけないでしょうか?
わかりました。ところで酒井君は、「コンセプチュアル」と「コンセプト」の違いはわかりますか?
―…う~ん、わかりません。
「コンセプト」はよく耳にしますから何となくわかると思いますが、「概念」という意味です。「コンセプチュアル」というのは、「概念の」という意味です。「コンセプチュアルスキル」というのは、簡単に言えば「概念を取り扱う技術」です。
―なるほど。でも、わかったような、わからないようなですね…。何か具体的な例はないでしょうか?
そうですね。身近なところで、「じゃんけん」で考えてみましょうか。酒井君、じゃんけんのグー、チョキ、パーは何を表していますか?
―そんなの簡単です。「グー」は「石」、「チョキ」は「ハサミ」、「パー」は「紙」を表しています。
そう。その3種類から選ぶことでじゃんけんの勝ち負けが決まりますが、これが「概念を扱う」ということです。実際には小さい石ならハサミで切れることもありますし、尖った石が紙を破ることもあります。ハサミでも簡単に切れない紙も作れなくはありません。
―そうですね。細かいことや例外を言っていたらキリがないですものね。
実は今、ビジネスの世界でもこれと同じことが求められているんです。たくさんの情報やヒト・モノ・サービスが動いていく中では、すべてを把握して取り扱うことは不可能となっています。そのため、ある程度のレベルでじゃんけんのように概念化して取り扱う必要があり、その概念を使って考える必要があります。その一連の能力が「コンセプチュアルスキル」なのです。
コンセプチュアルスキルの二つの能力をもっと具体的に考えてみよう
―なるほど。何となくわかってきました。では、コンセプチュアルスキルの表すものについて、もう少し具体的に教えていただけますか?
コンセプチュアルスキルは、具体的には「論理的思考能力」「問題解決能力」などの能力から評価されることが多いです。専門的にはこうした能力を形作る能力まで細分化して考えますが、大きくはこの2点から考えるのがわかりやすいでしょう。
順序立てて物事を考える論理的思考能力
―ふむふむ。それでは、論理的思考能力から詳しくお願いできますか?
論理的思考能力というのは、その名の通り論理的に物事を考える能力です。酒井君、「どうして鳥は飛べるのか」について説明してみてください。
―ええっと、まずは「地面を蹴ってジャンプし」、「重力で落ちてしまう前に羽をはばたかせてその力で体を上に持ち上げ」、「ある程度からは風を利用して体を浮かせている」から?
はい、ありがとうございます。この時、どのような鳥かという種類を考えなかったと思いますし、実際に目の前で鳥を飛ばしてみたわけでもありませんよね。その中で、周囲が納得することができる考え方を示そうとしたと思います。実はこれって、概念を扱っていることなんです。
―そうか!論理的思考能力ってだからコンセプチュアルスキルなんですね。
そうです。だから、酒井君は論理的思考が上手な、コンセプチュアルスキルのある人だと思いますよ。さすがに就活サークルの部長ですね。
―おお、ありがとうございます!何だかやる気が出てきました!コンセプチュアルスキルのこと、もっと知りたいです。
「今よりもいいものを作るには」を考える問題を解決する能力
―じゃあ、次に問題解決能力について教えてください。
それでは酒井君、今度は「鳥が長時間飛ぶためにはどうしたらいいか」を考えてみてください。
―うーん、できるだけ自分で飛ばなくていいように、「風向きを考えて飛ぶ」とか、疲れにくいように「体重を軽くする」とか、「翼を大きくする」とかどうでしょうかね。
ははは。「体重を軽くする」って人間的で良いですね。でも、実はこうしたことって大体当たってるんですよ。鳥だったら体重を軽くしたり、翼を大きくするのは難しいんですが、飛行機だったらどうでしょう?飛行機を作る時の発想はこういうところから出てたりするんです。
―へえ~、そうなんですね。やっぱり今回も鳥も飛行機も実際にはありませんけど、確かに問題の解決策を考えることはできなくないですね。
そうなんです。いいところに気づきましたね。ビジネスでは問題解決は重要なことですが、その問題がいつも目に見えているとは限りません。目の届かないところにある問題、未来に起こる問題、また現在のものよりより良い状態を作るために必要なことというのは、概念的に考えるしかないんですね。
―なるほど、それで問題解決能力もコンセプチュアルスキルなんですね。
特に、問題のどこに核心があるのかを正しくとらえる「クリティカルシンキング」ができる人は問題解決能力、コンセプチュアルスキルの高い人と言えるでしょうね。
コンセプチュアルスキルの鍛え方を覚えよう
―就活サークルでコンセプチュアルスキルについてもトレーニングしたいのですが、どういう方法が有効なんでしょうか。
お、レベルの高いことを聞きますね。実はコンセプチュアルスキルは構成要素が非常に多く、また個人のもともとの考え方などに依存する部分も多いため、トレーニングは結構難しいんです。
―ええっ!じゃあ、鍛えようがないんですか?
いや、難しいと言っても、専門的にやると難しいというだけで、トレーニングとしては概念化や論理的思考と問題解決について考えることを行うのが有効です。ある問題を出してみて、その解決に向けて「ブレインストーミング」や「5Why分析」、「マインドマップ」などの方法で解決策を考えてみると良いでしょう。
―トレーニングは一人でも大丈夫ですか?それとも、集まってやった方がいいですか?
できれば個人よりも複数人で行う方がよいですね。コンセプチュアルスキルの高いインストラクターがいればベストですが、そうでないとしても、複数の視点があることで勉強になりますし、また自分の論理の抜け落ちなども指摘してもらえます。他の人と自分の考えの違いを考えるのも良い訓練になるのでおすすめです。
―なるほど、これくらいなら就活サークルでもできそうですね。インストラクターになれるような人がいればいいんですが、ちょっと探してみたいと思います。
コンセプチュアルスキルはリーダー・管理職でより必要とされます
最後にひとつだけ加えておきますが、実はコンセプチュアルスキルはリーダー・管理職でより必要になるスキルと言われているんです。
―そうなんですか?どうして管理職で?
管理職というのは、部下を管理するだけでなく、部下の仕事も管理しています。しかし、いつも部下と一緒に同行して一緒の仕事をしているわけではありません。
―そうですね。しかし、それがコンセプチュアルスキルとどういう関係があるんですか?
管理職は、部下の仕事のひとつひとつを「報告・連絡・相談」によって得られる「情報」という形で把握しています。この情報を精密に考えてみたり、組み合わせてチームや部下の状況を把握し、問題を解決していくためには、概念を扱うスキルが必要不可欠だからです。
―確かに言われてみると、人数が増えるほどコンセプチュアルスキルがないとどうしようもない気がします。
そうなんです。そのため、コンサルタントなどを呼んで管理職向けのコンセプチュアルスキル研修を行う企業も多くなっています。新卒者にもコンセプチュアルスキルを求める傾向があるのは、将来の幹部候補として資質のある人材を求めるからなんですね。
―なるほど、では、新卒者でもやはりコンセプチュアルスキルは絶対に身に着けておいた方が良さそうですね。就活サークルで行う意義がわかりました。本日はお忙しい中、ありがとうございました!
コンセプチュアルスキルは学生のうちから意識して考えるようにしておこう
コンセプチュアルスキルは、「概念化能力」と表現されることもありますが、概念を使って考え、問題発見や解決などについて考える実践的な能力です。目に見える問題ばかりでなく、目に見えない様々な問題が多くなっている現代のビジネス環境において、コンセプチュアルスキルを活用する場面は非常に多くなっています。
コンセプチュアルスキルは、日々の思考訓練によっても伸ばすことが可能ですから、ビジネスパーソンや学生たちも、普段から意識して考えるようにしておくと良いでしょう。