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日本の残業時間の平均は月どれくらい?

残業の平均時間について、具体的に多くの人がどれくらい残業をしているのかという数字を挙げながらご紹介します。また、法律において残業時間の上限は何時間と決められているのか、海外の労働時間についても触れます。その上で、業界による残業時間の違いについてもご紹介します。

日本の残業平均時間、もしかして多すぎる?

残業時間の多さについて考えた事のある人は多いのではないでしょうか。自分はもしかして働きすぎているのではないか、他の人達はどれくらい残業をしているのか。今回はそんな事が気になっている方々に向けて、残業の平均時間についてご紹介します。

日本の残業の平均時間

厚生労働省が毎月発表している「毎月勤労統計調査」において、「所定外労働時間」は、大体平均して月間およそ10時間程度とされています。(注1)しかし実際は、残業時間を雇用主が把握していない、または知っていても黙殺しているなどという事態も考えられるため、このデータに信憑性があると断定する事はできません。

インターネット上でも情報を集める事は出来ますが、平均時間を赤裸々に書いている人もいれば、大げさに書いている人もいるため、そちらも信用する事はできず、日本の正確な残業時間を断定するのは極めて困難であると言えます。

残業時間は月30時間を超える人が多い

ただ、残業時間を30時間以上であると答えている労働者が大多数を占めている事は確かです。主に30時間の残業時間をひと月に抱えている労働者が多くいるという事になります。その事から、1日の残業時間としては、1時間から2時間程度であると考えて良いでしょう。

それでももっと働いているという人は勿論いて、一番多い人は月100時間以上などというケースもあります。1日13時間以上働いている人がいる事になります。

残業時間が多いのは20~30代

年齢として、最も残業時間が多いのは、20代から30代にかけての労働者です。立場が上になる事などが原因で、40代からは残業時間が減少する傾向にあります。総合的に考えて、日本の残業時間の平均は、約20時間から40時間であると考えるのが妥当なところであると言えるでしょう。

残業時間が長いのは年収が高い層

残業時間が長いのは、年収が比較的高めである労働者です。30代後半で比較的高収入、という条件が揃っている労働者が、長く残業をしていると言えます。年収500万円から750万円の層は、およそ月間平均残業時間が60時間を超えているという統計があります。この事からも、残業時間の長さと年収は関係している事が見てとれます。

残業時間の長さが問題になっている

残業時間の長さが問題になり、各メディアでも過労死やブラック企業の存在が取りざたされている今日では、残業を減らそうという動きは活発化しています。企業をあげて平均的な残業時間を減らそうという動きが見られるところもあります。

理想的な残業時間は10時間以下

理想的な残業時間だと考えられているのは、10時間以下であるという答えが大半を占めていますが、これは、厚生労働省が「毎月勤労統計調査」において発表している「所定外労働時間」に合致しています。しかし、理想であるという事は実現していないという事ですから、やはり現状に合っているとは言えません。

なお、残業が多過ぎると感じられるのは、30時間程度とする人が多く、30時間という数字はボーダーラインとして常に現れています。

残業時間が給与に反映されない、いわゆる「サービス残業」の問題が深刻化する一方、残業代を貰えるのであれば多少の残業は厭わないという考えを持つ人が多数を占めているのも現状です。

法律で定められた残業時間の上限

日本の労働基準法では、1日8時間、週に合計40時間を超える労働は原則として認められていません。(注2)残業代が出るか出ないかに関わらず、この規則は必ず守られなければなりません。

残業時間は36(サブロク)協定で決められている

労働基準法36条に基づいて、時間外労働(残業)や休日勤務などについて、雇用主と労働者の間で結ばれる協定の事を「36(サブロク)協定」と言います。

労働基準法36条によれば、企業側は1日8時間、週合計40時間を超える時間外労働及び休日勤務を命じる場合には、労働組合などと書面で「36協定」を結び、労働基準監督署に届け出る義務と、協定を結んだ事を従業員に告げる義務があるとされています。また、それを違反すると罰則が与えられます。

認められる残業時間には上限がある

残業時間(時間外労働)は36協定によって上限が設けられています。例えば、1週間では15時間を最大とするなど、「36協定」にも最大限度があります。それ以上はどのような協定を結ぶ事もできず、労働者の権利が守られています。

変形労働時間制という、シフト制度の勤務時間で働いている労働者も多くいます。その人達にも、総合的な労働時間の最大限度は通常の労働者と変わりはありません。

過労死ラインの残業時間は80時間

行政が定めている「過労死ライン」は、ひと月に80時間(ひと月に20日出勤するとして、1日4時間以上の残業)とされています。これは、健康障害の発症2ヶ月前から半年の間で平均80時間を超える時間外労働(残業)をしている場合、健康障害と長時間労働の因果関係を認められやすいという目安になります。

健康障害発祥1ヶ月前は100時間(ひと月に20日出勤するとするならば、1日5時間以上の残業をしており、13時間の労働をしている)を超える時間外労働をしている場合も、同様に健康障害の因果関係を認めやすいとされています。残業時間が100時間を超えている人達は、注意が必要だと言えます。

80時間という「過労死ライン」はあくまでも目安ではありますが、ここまで残業時間が多くなると心身ともに疲れ切ってしまう人がほとんどである事も事実です。そういった意味では、80時間という過労死ラインは、労働者にとって充分であるとは言えないでしょう。

働き過ぎを防ぐために政府が働き方改革を掲げた

働きすぎによる健康障害を防ぐためには、ひと月の残業時間を45時間程度にしなければなりません。しかし、政府によって新しく掲げられた方針は、「月45時間を超えていいのは年6ヶ月まで」「1ヶ月の上限は100時間未満」「2~6ヶ月の平均は80時間以内」「1年の総時間は720時間以内」とされており、世間を騒がせています。(注3)これは、「過労死ライン」に触れてしまっているからです。この「働き方改革」は、諸手を挙げて喜べるものではないようです。しかし、さらにその後の改革で、残業時間の上限が規制されました。2019年から順次、適用される予定になっています。

業界によって残業時間は違う

残業時間の量は、業界によっても違います。特に残業が多い業界は、コンサルティング業、マスコミ業、不動産業、建設業、IT・通信業です。コンサルティング業などは、納期までに立ち上げたプロジェクトの完成を間に合わせなければならないため、必然的に残業時間が長くなるのだと考えられます。

サービス残業が多い業種

サービス残業が多いのは量販店やスーパーなどのサービス業です。特に管理職と現場との認識の食い違いが大きいです。新入社員の定着率が悪い事も仕事量の増加に繋がっています。残業代の申請が通らない事がしばしばあります。

介護業も、サービス残業が多い業界のひとつです。全ての仕事に手が回らず、事務処理などが後回しになってしまったり、休憩がとれなくなっています。

広告業は激務

広告業の残業の多さの実態はどうなのでしょうか。彼らは、次々と新しい広告(CM)を打ち出す業界に関わっているため、自然と激務になっています。クライアントがスピード勝負であるため、そのスピードに併走しなければならないという事です。

二転三転する現場での状況に合わせて動かなければならないため、時間が足りなくなってしまう事がしばしばある上、納期までに間に合わせなければならないために、1日に費やす時間が膨らんでいってしまうのです。広告業界でも「働き方改革」を始めてはいるものの、残業が多く激務である事に変わりはありません。

自社で仕事をしないIT業界

続いては残業が多いというイメージが強いIT業界です。いわゆる「ブラック企業」と呼ばれる企業が多いと思われている事でしょう。

中小IT企業は、派遣先で働く客先常駐という派遣事業で成り立っています。基本的には自社で仕事をするという事はありません。仲介業者が介入するために企業そのものに利益が入らず、労働者は長く働いても残業代が貰えなかったり、あるいはとても安かったりするのです。

残業が多いのは、大元の発注をしている大手IT企業と中小企業との間で齟齬が生じ、スケジュールが遅れて、納期が切迫してしまう事が頻繁に起こるからです。

残業が少ない業種

一方、残業が少ないのは金融業や医療機器の商社、機械関連のメーカーです。金融業は残業が少ない上に、残業があったとしてもサービス残業のように残業が出ないといった事が少ないです。基本的には月20時間程度の残業で済むという企業もあります。

医療機器に関しては、商社よりもメーカーの方が残業や休日出勤が多くあります。ただし、その分メーカーの方が商社よりも多少給料が良いという利点はあります。メーカーは、学会や展示会があるために休日出勤を求められる頻度が高く、残業も1~3時間はあると考えておくべきでしょう。

また、サービス業としては薬局やスポーツ施設など、営業時間が決まっているところが、残業が少ないです。

残業が少ない業界は、あくまでも「比較的」少ないというだけであり、残業が多い企業のレベルが高すぎるため、あまり少ないという実感はわきません。それでも、企業を挙げて残業を減らそうとする動きがあるため、業界全体もそれに追従していく可能性は高いと考えられます。

海外と日本の労働時間を比べてみる

「Karoushi(過労死)」という言葉は、海外でもそのまま日本特有の言葉として使われています。それほどに日本人は、世界からワーカホリックと言われているのです。

しかし、独立行政法人労働政策研究研修機構がまとめた2014年世界の平均年間労働時間のグラフを見ると、イタリアが1,734時間、アメリカが1,789時間であるのに対して、日本の平均年間労働時間は1,729時間と、世界の平均年間労働時間とあまり大きく変わらないのです。(注4)

欧米では長時間仕事をすることを良しとしない

外国、例えば欧米では、長時間仕事する事を良しとしない風潮があります。アメリカでは、残業をする人は能力不足であるとか、効率が悪いとか、マイナスイメージとして捉えられてしまいます。日本人が世界から残業が多いと思われているのは、残業をするのが「頑張っている人」「偉い人」だとされてしまうからです。

海外に残業の概念を当てはめるのは難しい

海外の労働時間は捉え方が日本と異なるため、「残業」という概念をあてはめるのが困難であると言えます。例えば、メキシコや韓国などの労働時間が長い国は、1年間で平均2000時間以上働いています。メキシコでは、賃金の発生しない労働も労働時間として含まれるために平均労働時間が長くなっています。また、韓国では共働きの家庭が多いため、結果的に平均労働時間が長くなっています。

残業時間が短い国は?

残業時間が短いのは、フランスやドイツ、オランダ、ノルウェーなど、欧米各国が主です。世界でも、「自分が働きすぎている」と感じている人は多く、今、仕事とプライベートの両立について見直すべき時が来ています。その中でも日本は、労働時間は平均的であるのにも関わらず、多くの人が残業に苦しんでいます。

フレックスタイム制と残業時間、残業代

フレックスタイム制という、変則的な時間の使い方を取り入れている企業もあります。フレックスタイム制でも、もちろん残業代は発生します。フレックスタイム制は、労働者が出社時間と退社時間を決められるので、効率よく仕事に取り組む事ができるので、フレックスタイム制の方が働きやすいとする人が多いです。それでは、フレックスタイム制の仕組みについてご説明します。

必ず出勤していなければならないコアタイムがある

1日のうちに必ず出勤していなければいけない時間の事を「コアタイム」と呼びます。出社時間と退社時間がコアタイムを挟むように現れ、これを「フレキシブルタイム」と呼びます。コアタイムに関しては、通常の企業と同じ考え方で、遅刻や早退の概念が存在しています。

会議などはコアタイム中に設けられます。また、コアタイム中には休憩時間を入れる必要があります。コアタイムを設けなければならないという義務はありませんが、フレキシブルタイムはコアタイムの前後どちらか片方のみに設ける事はできません。フレキシブルタイムの間には、いつでも出社、退社が可能です。

働いた時間のトータルが総労働時間内なら残業にならない

フレックスタイム制においては、月、あるいは週のトータルで総労働時間内に収まれば残業扱いにはなりません。トータルに影響がなければ、1日に何時間働いたかは関係がないという事になります。

この制度では、労働時間が日によって違うため、週ごとや月ごとの労働時間を設定する必要があります。週ごとや月ごとに設定する労働時間を清算期間と言います。清算期間での総労働時間を基準に残業かどうかを決めます。総労働時間は法律にのっとって、1日8時間以内、1週間に40時間以内としなければなりません。

総労働時間を超えたら残業になる

ひと月の総労働時間に不足した労働時間を翌月に繰り越す事や、不足分の賃金を削る事ができます。企業が決めた清算期間のうちに、総労働時間を超えた場合には、きちんと残業時間は発生します。フレックスタイム制では、総労働時間を超えた月があれば、必ずその月に残業代を支払わなくてはなりません。なお、18歳未満の労働者にはフレックスタイム制は適応できません。

フレックスタイム制を取り入れている企業は少ない

フレックスタイム制を取り入れている企業は約4%と、緩やかに減少傾向にあり、労働者の人気とは裏腹に、増加の兆しは見られません。その中では、IT業界ではフレックスタイム制を取り入れている企業が比較的多く、また、一部の部署や個人のみを対象に導入する事ができるため、大企業で取り入れられている割合が高いと言えます。このようなフレックスタイム制という変則的な時間設定であっても、残業代が発生しないという事は決してあり得ません

フレックスタイムとは?導入のメリットとデメリット

残業で働きすぎて体を壊してしまっては意味がない

残業代が発生するからといって、働きすぎて体を壊してしまっては意味がありません。残業をする意味をもう一度考え、家族や大切な人達に心配をかけないようにしましょう。もし残業時間の長さで苦しんでいるのであれば、一人で抱え込まず誰かに相談してください。