働きがいのある会社を求める人が増えている
以前は、社会人になるのであれば大企業に入社し、高収入を求めて仕事をするのが幸せなサラリーマンの姿だと思われていました。しかし、そうしたサラリーマンの理想像は今や変わってきているのが現状です。
誰もが大企業に入れるわけではない昨今、そのような客観的ステータスではなく「働いていて自分がやりがいを感じられれば幸せだ」という考えに移行してきているのです。そのような流れから、「”働きがいのある会社”を探そう!」という考えで就活を行う人が増えているのです。
働きがいのある会社とは?
世界約60カ国で従業員意識調査を行って、その調査結果に基づき毎年「働きがいのある会社」ランキングを発表している機関のGreat Place To Work(R) Institute Japan(以下、GPTW)は、従業員から見た働きがいのある会社を以下のように定義しています。
働きがいのある会社とは…
従業員が勤務する会社や経営者・管理者を信頼し、自分の仕事に誇りを持ち、一緒に働いている人たちと連帯感が持てる場所。
GPTWは、働きがいのある会社を判断する手法として、その職場で実際に働いている従業員からの評価を直接調査に反映させています。従業員の声が反映されているため、信ぴょう性が高いということですね。まずは、GPTWの定義や調査項目から働きがいのある会社について考えていきましょう。
働きがいがある会社かどうかを5つの指標で分かる
GPTWは、以下の5項目が満たされているかどうかを従業員に向けて調査しています。つまり、これらの条件が満たされている職場だと感じられれば、働きがいのある会社で仕事ができていると考えていいのではないでしょうか。
1.信用
- 勤務している会社や従業員を信頼しているか。
2.尊敬
- 会社は従業員の専門性を高める支援を行っているか。
- 従業員を人として大切にし、従業員の生活や家庭を尊重しているか。
3.公正
- 従業員に対して公正な報酬を提供しているか。
- 採用や昇進・昇格は平等に行われているか。
- 差別がなく、従業員が会社に不満を訴えられる制度があるか。
4.連帯感
- 従業員が自分らしくいられる環境が整っているか。
- 好意的で、人を歓迎するムードが漂っているか。
- 「家族」「チーム」といった連帯感が育まれているか。
5.誇り
- 自分の仕事と役割に誇りが持てるか。
- 会社やチーム、グループが推進する仕事に誇りが持てるか。
- 組織が提供する商品・サービスや、社会から受ける評価に誇りが持てるか。
働きがいのある会社を見極めるポイントは3つ
ここで、働きがいのある会社を見極めるための3つのポイントを紹介しましょう。給料のことや昇進に関する制度、何か問題が起こった際などに会社に相談しやすい環境が整えられているかなど入社前にある程度知ることができる事柄もあれば、実際働き始めてみなければ、本当の意味で働きがいのある会社なのかは分からないこともあります。
1.社員同士のコミュニケーションが盛んに行われているか
上記の項目を見てみると、会社や社内の同僚と固い信頼関係を結ぶことが働きがいのある会社には必須です。黙っていれば仕事が与えられ、黙々と作業をしていればいいという職場ではないのです。一般的に働きがいのある職場=周りと密なコミュニケーションが求められる、という点を頭に入れておきましょう。
今はホームページに社員ブログのようなものを載せている企業もありますから、そういうものを見てみると職場での社員たちの日常の様子が分かるでしょう。社員同士のコミュニケーションが盛んな会社なら、社員ブログからも日々の充実ぶりなどが伝わるはずです。
2.働いている人が働きがいを感じているか
どんなに働きがいのある(とされる)会社に入社したところで、すぐに働きがいを感じられるわけではありません。それは、自分の仕事の意味や重要性について分かっていないからです。
何も考えずに道路で交通整理を行っているよりも、「この時間に自分が交通整理を行うことで通行がスムーズになり、疲れたサラリーマンが退勤ラッシュに巻き込まれずに帰宅できる」と理解しながら職務にあたるのでは全くやりがいが異なります。
働きがいを見つける第一歩は…
まず、自分が担当している仕事について知ることです。
就活生の場合は、企業案内に載っている自分が希望する職種と同じ職種に就いている先輩社員の声を参考にすると、その人がどんなことにやりがいを感じているのかを知ることができます。また、入社希望の企業で働くOBやOGから話を聞くのも良いでしょう。
3.企業が働きがいのある支援制度を打ち出しているか
働きがいのある会社を見極めるポイントとして、女性社員に優しいかどうかを考える人もいるでしょう。ですが、必ずしも、産休や育休など女性社員向けの支援制度が整えられている会社が、働きがいのある会社というわけではありません。
そのことが分かる一例を挙げると、資生堂が「女性に優しい会社」から「働きがいのある会社」へ方針転換を行いました。つまり、以前打ち出していた「女性に優しい会社」という方針が必ずしも実を結んでいたわけではないのです。
資生堂が子育て支援策を充実させたことで…
- 出産退職者が減少した
- 周りに配慮のない制度利用(時短勤務)もみられるようになった
というメリット・デメリットの両方が明らかになりました。
資生堂の行った転換策は…
子育て支援策の目標を「子育てや介護をしながらも会社にいかに貢献してもらうか」に改め、「働きがいのある会社」を会社としての新たな目指すべき姿にした。
「いかに女性をフォローするか」という考えにとどまらず、企業のためにも建設的な目線に切り替わったことが分かります。ここで注目すべきは「基本は自助努力。制度は自力で解決できないときに頼るもの」という同社のスタンスです。手厚い子育て支援制度は、一方で制度に甘えてしまうぶら下がり社員を生み出す一因にもなります。このスタンスにより、女性の仕事へのモチベーションを保つ助けになるのではないでしょうか。
一方的に女性を支援するというのではなく、女性が自らの仕事に誇りを持ちつつ、出産等で助けを求めてきたときに支援するという形です。会社全体のことを考えると、今の資生堂のほうが”働きがいのある会社”に近いのではないかと考えられます。
実際のところ、働きがいのある会社かどうかは入社してみないと分からない
働きがいのある会社を見極める3つのポイントを紹介しましたが、就活生にとって見聞きする情報からしか判断材料を得ることができません。やはり働きがいのある会社だと感じるかどうかは、実際に入社してみなければ分かりません。
極端なことを言ってしまえば、働きがいが最初から備わっている会社などあるわけはないのです。また、何を働きがいと感じるかは人によって異なります。
自分が会社の一員として働きやすい職場を作っていこうという自覚を持つことで仕事に対する意識が変わっていき、働きがいを見い出せるようになっていきます。受け身になるのではなく、自分から働きかけていく姿勢を常に持っておきましょう。