大学事務員の仕事内容が知りたい!
大学には学生と教授、研究者だけではなく、その人たちをサポートする役割を担う大学事務員がいます。では、この大学事務員の方々が日々どんな仕事内容をこなしているのかというと、幅が広くご紹介するには広すぎるくらいです。多岐にわたる業務を、部署ごとに手分けをして正確かつ迅速に取り組んでいるのです。
近年、大学は変革期に入っており、少子高齢化をはじめとするさまざまな社会問題に悩まされています。しかし、それらに対応していき優秀な人材を育てる場を作ることが必要です。大学事務員はそうした場を作る縁の下の力持ちと言えるでしょう。今回はそんな大学事務員の仕事内容について詳しくまとめました。
大学職員の数は増えている
現在に至るまで大学職員数は増加し続けています。文部科学省が発表したデータによると、平成26年度では227,476名(このうち女性が150,256名)の職員が在籍しています(注1)。これは、従来の業務に加えて新しい取り組みをしなければならないという背景が大きく関与しています。これからも増えると考えられますので、求人は当分の間充実したままでしょう。
ただし、学生数の減少や研究成果が乏しい場合は、部署の消滅や経費削減により窮地に立たされる恐れがあります。
大学事務の仕事内容
幅広い事務員の職務をすべて紹介すると膨大な量になり、また、大学によっては異なる業務もありますので、今回は5つに絞ってご紹介します。これらはどの大学にもありますので大学事務員としての就職を検討される方は目安にしてください。
1 広報活動
大学では新たな学生獲得のために民間企業と結託して広報活動に取り組んでいます。また、地域住民の方からの大学運営の理解を得るためにも行われます。大学はもはや学歴だけを示す場所ではなく、地域住民の理解の下に成り立っていることを肝に銘じなければなりません。どこの大学も新規学生を獲得するのに躍起になっており、広報はそのために重宝されています。
広報活動は紙面で行うこともあれば、ネット上で構築する場合もあります。この際には、ホームページを作成する技能やイラストレーターなどを使ったデザインの技術が役に立つことがあります。
2 研究支援
研究とはテーマを決定し、調べてまとめて発表するだけではなく、必要なものを揃える必要があります。このときには必要な書類が出たり、情報整理を行う必要が出てきます。これらの研究のメインの活動とは別に、研究事務としてサポートするのが大学事務員の仕事のひとつです。
サポート内容の一部としては以下のようなことが挙げられます。
大学事務員が担う研究支援の内容
- 研究室の予算管理
- 研究に関する申請
- 共同研究者との手続き
- 知的財産の管理
- 特許の出願および管理
- 産学連携による研究の推奨
- 寄付講座の案内
3 学生相談
学生は大学構内だけでもさまざまな悩みを抱えます。また、構内に住んでいたり、一生を過ごすわけではないので構外での悩みも抱えることになります。大学事務員はこうした悩みを聞いて、解決策を提案する立場でもあります。講義の取り方や大学施設の使い方から資格取得や留学に関する情報の提供など内容は複雑です。時にはカウンセラーを紹介することもあります。現在、多くの大学ではカウンセラーの方が常勤しています。たとえ非常勤であっても事務方が連絡を取り手配することも可能です。
4 新規入学者への対応
さて、新しい学生を獲得すると言ってもその母数が減ってきている現状では単に勉強ができるとアピールするだけでは不十分です。多くの大学がやっているのは、キャンパスライフがいかに楽しいかや就職率が安定して高水準であることなど、様々なPRです。それに加え、特別な講義や講座などの紹介もします。
さらに、説明会を行い生の意見を宣伝したりもします。特に、最後の説明会を通して新規学生への対応の充実を図ることが重要な仕事と言えるでしょう。
また、保護者に対する十分な説明活動も不可欠です。モンスターペアレンツなどのいわゆるクレーマーの対応もありますが、事前に正確な情報を宣伝することでそのような被害を予防することも、大学事務員としての重要な仕事となっています。
5 一般事務
もちろん学生や教授、研究者、保護者などの支援だけでなく完全な事務作業もあります。人事や財務、企画や会計などの仕事があります。これらの中には給与体系や研究の評価などシビアなものが数多くあります。特に財務に関しては文部科学省から承認された助成金が含まれているのでその管理と評価をきちんとしないといけません。こうした事務の中枢とされる業務の運営があります。
大学事務の仕事では行動力と対応力が求められる
現在は少子高齢化の波もあってさまざまな業務が増えてきていますが、その業務の多くはイベント運営です。オープンキャンパスの時期や年度末など、イベントが集中する日程では1人当たりの業務量が過密状態になることがあります。一般業務もあり手配できる人員は限られるためです。
加えて、不真面目であったり単位不足の生徒に指導したり、モンスターペアレンツの対応にも精を出さなくてはいけません。トラブルの多くがその場で解決するように求められるものですので、迅速な解決のための行動力や対応力が求められます。
大学事務員の仕事内容の魅力
大学の事務員がいかに大変かはお分かりいただけたでしょう。しかし、大学生たちがいつでも楽しそうにしているところを見ることで、昔の自分を思い出して「負けていられない」といった気概をもらったり、また世代間を超えた交流で、一般企業では得られないような面白い情報を手に入れられるという点は大学事務の仕事の大きな魅力でしょう。
顧客と企業の関係ではなく、ましてや生徒と教師の関係でもありませんが、卒業式の時に感じる独特の感慨深さは新年度への活力になります。大学事務員は、大変な分だけお金では手に入れられない貴重な経験を得られる仕事でもあるのです。
大学事務員の仕事内容をこなすために必要なスキル
事前に大学事務に求められるスキルは多くありません。さまざまな業務をこなすため、その人材に合った職場が空いていればそこに補充していくという流れです。強いて言うのであれば次の4点のスキルは必要と言えるでしょう。
- コミュニケーション能力
- 英語能力
- フットワークの軽さ
- エクセルやワードなどのPCスキル
コミュニケーション能力はどんな職場であっても求められるものですが、特に大学事務員として働く上では必須のスキルとなります。さまざまな人とコンタクトを取らなくてはならず、その管理も大変です。自分の大学にいる教授の名前を間違えようものなら大変なことになります。また、初対面の方と接することが多いので、好印象の持てる接し方ができるかは大学の品位にもかかわってきます。
また、最近では外国人の講師や職員を雇う大学も増えてきているため、英語能力の強化が重要視されています。こちらは書く能力だけではなく、話す能力も求められます。
その他、さまざまな部署や施設に赴いて情報の送受信ができるようなフットワークの軽さ、メインの事務作業をこなすためのエクセルやワードといった基礎的なPCスキルも、大学職員を目指す上で最低限身に着けておきたいところです。
大学事務員になるには?
大学職員を目指す場合、学歴や年齢が前提条件になっている場合がありますが、一般的には国公立か私立かで特徴が異なります。これは運営体制が異なるためです。例えるなら公務員と一般企業の社員との違いがあります。
国公立大学の場合は、もともと大学事務員の方も公務員として認定されていたためにその名残が残っています。一次試験である教養試験を受け、二次試験の面接で合格すれば職員として採用されます。教養試験では時事や文章読解、資料解釈などが出題されます。二次試験では面接が行われるわけですが、母校を受験するか否かでも大きく出方が異なります。一方で「なぜこの大学を選んだのか」といった志望動機やこの職を選ぶ理由など、一般企業が選考で求める点と共通する部分があります。
私大の場合、試験内容がそれぞれの大学で異なるため一概には答えられませんが、エントリーシートでの書類選考、筆記試験、グループディスカッション、面接など一般企業が求めるような試験がなされるのが通常です。これらの試験に合格することで採用となります。
注意すべきは、運営元の学校法人が複数の施設を運営している場合、その中での異動もあり得るということです。
試験概要に関しては各大学のホームページから確認できますので、近場の大学等の求人で検索してみてください。
大学事務員の活躍の場は今後も広がる
大学職員の仕事内容が多様化する中、その活躍の場はどんどん広がりつつあります。今回はご紹介できなかった地域活動への取り組みも盛んに行われていたりと、大学での活動を通して地元を活性化させたいという熱意を持った職員になっているケースもあります。
大学事務は業務が多岐にわたるため決して楽な仕事とは言えませんが、一般企業では手に入らないような貴重な経験を積むことができます。大学に思い入れのある方にはおすすめの職業でしょう。
参考文献
- 注1:文部科学省「文部科学統計要覧(平成27年版)」