商社はどうして激務なの?
商社マンは激務だとよく耳にするけれど、どうしてそんなに忙しいの?と疑問に思った事がある方もいらっしゃるかも知れません。就活をするにあたって商社の内定を望む学生も多いですが、なぜ激務なのに商社が人気なのでしょうか。今回は、商社が激務である理由について詳しくご説明していきます。
商社とは何か
商社は、それぞれのメーカーが作った商品を小売店へ卸す役割を持っています。メーカーが小売店へ直接販売するのは難しいため、代行していると考えれば良いでしょう。メーカーから買い付けてきた商品に利益を上乗せして、仲介していくというビジネスをしています。
商社がしているのは、いわゆるBtoB(会社に対して商品を売る商売)というビジネススタイルです。商社は輸入、輸出など、海外との取引にももちろん手広く関係しています。商社には大きく分けて「総合商社」と「専門商社」の2つがあります。
総合商社
総合商社は、稼げると思った事なら何でもチャレンジするというスタンスが商売の基本にあるため、ビジネスの規模が大きいと言えます。広く、浅く手を出す事で、大きな利益を上げています。
卸す事だけでなく、事業経営や資源ビジネスなど、あらゆるビジネスに手を出す事が可能なのが総合商社の強みです。ただし、規模の小さい商売に関しては不得手であるという弱みも持っています。
専門商社
専門商社は、ある分野に特化しているという特徴を持っています。食品分野や鉄鋼分野、化学品分野などが挙げられます。
総合商社とは逆に、狭く深くがビジネスのスタンスです。特定分野の業界に詳しく、豊かな人脈を持っています。総合商社よりも細やかな顧客対応ができる事が強みのひとつです。
専門商社の弱み
専門商社の弱みは、自社の得意とする分野以外のビジネスに手を広げられない事や、規模を広げにくい事、特定分野に依存しているため市場が変動した場合、何らかの影響をダイレクトに受けてしまうという事にあります。また、専門商社がたくさん集まった集合体が総合商社であると考えても良いでしょう。
総合商社の強み
総合商社は規模が大きい事を強みに、ハイリスク・ハイリターンを狙う事ができるため、資源の権益に投資する事ができるのが大きな特徴のひとつです。また、メーカーが工場を作る時に出資をする事で利益を得る事もあります。不動産投資をする商社もあります。
商社の根幹は物を卸す商売
現在は手広くビジネスを手がけ、どんどん利益を上げようとしている商社が多くありますが、根幹にあるのは物を卸すという商売です。
商品をメーカー(企業)から小売店(企業)に卸す、BtoBのビジネスをしているのが基準であると考えれば商社のイメージは掴めるでしょう。
なぜ商社は激務と言われるのか
就活生に人気の商社は、なぜ激務と言われているのでしょうか。ここでは、なぜ商社が激務であると言われるのかについて説明していきます。
海外取引では時差があるから
商社の仕事は海外との取引も多く、仕事相手が国内に限らないため、時差を考慮しなければなりません。相手の国の時間に合わせなければならない場合も多いので、体力的にタフである事が求められるという事が挙げられます。交渉も現地で行ったり、その場に繰り返し赴く必要があるなど、日本と外国を往復する事が求められるので、必然的に激務となります。
休日出勤があるから
商社ではもちろん休日出勤も求められ、営業での外回りから戻ってきてオフィスで書類整理、というスケジュールの1日もあれば、1日中外回りで足を棒にしなければならない日もあります。
そのため、商社の仕事はストレスがたまりやすいと言えます。体調管理には気を付けておかないと、体を壊してしまう可能性が高いでしょう。海外出張はグローバル化する企業ならどこでもある事でしょうが、商社はその中でも抜きんでて回数が多い激務と言えます。
扱っている商品の数が多いから
客数と商品数が多いため、取り引き相手が増えるのは嬉しい事ではありますが、その分仕事はどんどん増えていくのが商社です。
人脈を大切にするから
人脈を絶えず維持しておかなければいけないという事も商社の仕事が激務になる要素のひとつです。相手はいつ商売相手になるかわからない存在ですから、飲み会の席に誘われても断るのはご法度です。
役職が上がるにつれて接待は増えて予定は埋まり、体が休まる暇はなくなります。交際費も多くかかります。メーカーと顧客両方に気を遣わなければならないため、精神的なストレスがたまることが避けられません。
仕事の量が多いから
実際商社で働いてみると、入社時に予想していたよりも、残業が遥かに多くて激務だったと感じている人が多いです。朝早く出社し、夜遅くまで働き詰めで、給料が良くても仕事の量が多すぎると感じてしまう人が多いのではないでしょうか。
大きなプロジェクトが始まると特に激務は極まり、ここで海外出張は更に増えます。残業続きの毎日で、タクシーで帰宅する事も珍しくなくなります。定時で帰る事はなかなか難しいため、ぴったり定時で帰りたい人には商社の仕事はあまりおすすめできません。
特に20代~30代のうちは、のんびり働く事はできず、努力すればするほど仕事量が増えて忙しくなります。社内での競争も苛烈を極めます。
発展途上国への転勤もあるから
商社の特徴として、全国転勤だけでなく、発展途上国や治安があまり良くない国にも転勤で行かなければいけない可能性があるという事が挙げられます。
動かしているお金の単位が大きいため、常にプレッシャーと闘わなければならないというストレスもあります。深夜でも海外支店との連絡は電話やメールで取らなくてはならないので、就寝前でも気が抜けないという部署もあり、激務を避けることは難しいでしょう。
激務でも商社に就職するメリット
では、その激務に耐えても働きたいと思う、働く人が得られる商社のメリットとは何なのでしょうか。
平均年収が高い
商社での待遇は、一般企業に比べて遥かに恵まれています。平均年収が高く、自分が努力すれば努力した分だけ、見返りとしてきちんと報酬が目に見える形で返ってきます。競合他社との利益競争が激しい分、勝ち取る事のできる金額も大きいと考えられます。
総合商社の方が、専門商社と比べて平均年収としては高く好待遇と言えますが、専門商社であってもサラリーマンの平均年収の倍くらいは稼ぐ事ができます。
人脈が広がる
商社は人との関わりを大切にしなければならない業界なので、人脈が広がる事は間違いありません。色々な人と接する事で、人間として「できた人」になれるでしょう。人間関係づくりがうまくなり、自然と世渡り上手になる事ができます。
やりがいがある
自分のモチベーションを保つ事さえできれば、とてもやりがいのある仕事ができるのが商社です。大きなプロジェクトに携わる事も多々あるので、成功した時の達成感や日々の充実感は、商社ならではのものであると言えるでしょう。
商社が事業を拡大するために、新しくビジネスを始めようとしている時などに関わる事が出来れば、ビジネスマンとしての自分にとって、成長するための大きなチャンスになります。激務ではありますが、自己実現のためのチャンスがたくさんあるのが、商社で働く事の大きなメリットのひとつであると言えます。
スキルアップできる
商社で働くことは自分のスキルアップにはこの上ない舞台となり、他の会社への転職を繰り返さなくても、社内にいるだけで次々と新しいプロジェクトに関わる事ができるため、自然とスキルアップする事ができます。自分の描いている理想のビジョンに近づく事ができるでしょう。日々そうして成長する事によって、何よりも仕事を楽しむ事ができます。
商社でしか味わえない、他の企業ではなかなか体験する事ができないような大きなお金を動かす経験や、そういった事をするために日々奔走するという環境に身を置く、といった事にやりがいを感じる事さえできれば、商社で働く事は最高に楽しい事でしょう。
商社で働くメリットは、高給である事ももちろんですが、何よりも自分がその環境にやりがいや楽しさを感じられる事です。やりがいを感じる部分は人それぞれではありますが、商社の仕事は激務であるため、そのつらさをやりがいとして楽しむ事ができなければ続ける事はできないでしょう。
激務な商社に就職するデメリット
一方で、激務の商社で働くことには、このようなデメリットもあります。
商社は体調を崩しやすい
一番の商社で働くデメリットは、とにかく残業が多く激務であるため、体調を崩しやすいという事です。入社したての頃は耐えられても、それが続くと体がついていかないという人もいます。体調不良は誰かの助けがあって解決する問題ではないため、デメリットのひとつとしてはかなり大きいものであると言えます。
商社では海外出張が頻繁に起きるという事も、それを楽しめれば良いのですが、時差も残業のうちに入りますし、出張のたびにかかる疲労も蓄積されていきます。
商社は海外転勤がある
海外への突然の転勤を命じられる事も珍しくなく、人生設計を立てる事が難しい事も商社で働くデメリットであると言えるでしょう。治安の悪い地域への転勤も、業務命令であれば行かなくてはならないので、あまりそういった事に乗り気でない場合は、商社で働くことにやりがいを感じる事もできず、楽しむ事もできずに仕事に打ち込めないでしょう。
支給される携帯端末などにメールが送られてきた場合は、休日や夜間問わずすぐに返事をしなければならないという部署もあり、心が休まらず精神的ストレスがたまるというデメリットがあります。
商社は精神的なストレスが大きい
商社で仕事をすると、深夜までの残業という肉体的なストレスに加えて精神的なストレスがのしかかってくるため、疲労困憊する激務である事は間違いないと言えるでしょう。
商社は交際費がかかる
商社では経費で落とせない種類の飲み会にも参加しなければいけない事も多いため、交際費がかかる事も否めません。疲れていても休日、業務後も誘われたり誘ったりして接待をしなければならないため、飲み会やゴルフなどで時間と体力、お金はどんどん減っていきます。
商社は人とうまくつきあわなくてはならない
商社では人間関係の軋轢の中でうまく立ち回らなくてはならないため、気苦労が絶えない事もストレスになります。人とうまくつきあっていく事を覚えなくてはいけないため、ここでも精神的な負荷は免れないでしょう。
商社は体の疲れが精神の疲れにまでに及び追いつめられる
商社の仕事は、体力的な問題がだんだんメンタル面に支障をきたしてくるというデメリットもあります。体の疲れが精神的な疲れにまで及んできて、自分が知らないうちにどんどん追い詰められていくという状況に陥る人もいます。
そういったネガティブな理由で退職を考える人もいるため、高給で華やかなイメージの裏側には、激務であり、並々ならぬ肉体的、精神的なストレスを受ける事や、安くない交際費を払わなくてはならない事などが現実として待ち受けている事を忘れないようにしたいところです。
激務でもすごい!日本の5大商社の特徴
日本の総合商社の中でトップ5の企業をまとめて「5大商社」と呼びます。三菱商事、伊藤忠商事、丸紅、三井物産、住友商事が5大商事であるとされています。
三菱商事
三菱商事は、日本初の株式会社である九十九商会の流れをくむ企業であり、国内外に200以上の拠点を持つ最大の総合商社です。「組織の三菱」と言われ、組織体制を強みとしており、語学力に長けた人材を欲しています。
資源分野では石炭・LNGが主力であり、生活産業ではローソンや三菱食品などを経営しています。貿易仲介を中心としたビジネスを展開しながら、資源開発や食料流通にも事業を拡大したと捉えれば良いでしょう。
三井物産
三井物産は日本で最初の総合商社です。原油や鉄鉱石など、資源分野において大きく他を引き離しています。
「人の三井」と呼ばれており、個人を大事にする風潮があります。個性のある人を求めているという採用方針が立てられています。
三井物産全体の純利益の大半を資源・エネルギー部門が占めているほど、資源分野に強みを持っています。
住友商事
住友商事は、戦後(1945年)に商社として設立された会社です。不動産を多く持っており、信用を重んじる事を基本とした経営をしています。
資源分野においては非鉄金属に強みを持っており、非資源分野においてはIT関連などに進出しています。資源分野以外にも力を入れており、都市再開発などを展開しています。住友グループの歴史を大切にしており、「結束の住友」として定評があります。
伊藤忠商事
伊藤忠商事は、みずほグループの総合商社です。衣類、繊維や食料など、非資源分野に強みをもち、中国でのビジネス展開に長けています。
ブランドビジネスで成功を収めるかたわら、ファミリーマートで競争を有利に運ぶ方向性を探るバリューチェーンを固めています。
伊藤忠商事は、創業者の伊藤忠兵衛が事業の基盤としていた「三方よし」の精神を大切にしています。「三方よし」とは、「売り手よし、買い手よし、世間よし」という、三者それぞれが満足した結果が伊藤忠商事の成長にも繋がるという考え方です。
伊藤忠財閥の中核企業であった頃は、世界最大の繊維商社でした。現在東証・名証市場第一部上場しています。
丸紅
丸紅は、芙蓉グループの企業であり、伊藤忠商事と同じ起源を持っています。紙パルプや穀物においてトップクラスの強みを持っています。また、エネルギー部門と食品部門が二本柱となっています。
非資源・資源両方にバランスよく手を広げており、資源分野では銅やガス、非資源分野では電力やインフラなどにも精通しています。
1858年に伊藤忠兵衛が創業したため、伊藤忠商事とは起源を同じくしています。創業後一度伊藤忠商事と分割され、戦時中に合併されますが、再び分割され今に至ります。社風は堅実なものと言えます。
激務じゃない商社マンもいる?
ここまで、商社に勤める人達がいかに激務であるかについてお伝えしてきましたが、「激務じゃない商社マン」もいるという事について触れておきます。
時間のやりくりができて、かつ会社の福利厚生がしっかりしていれば、休暇を取得する事ができる場合もあります。部署やタイミングにもよりますが、余裕があれば定時で帰れるというケースもあります。残業に関しては個人によって量が違うため、どうこなしていくかがポイントになります。
また、中小専門の商社であれば、年収が低く会社が安定していない代わりに、激務じゃない生活を送る事ができます。最低限の仕事しかしないようにして、出世欲を捨て、接待をやめれば、激務からは解放されます。
やりがいがあれば激務にも耐えられるのが商社の仕事
激務であってもそれに耐えられるのは、自分が商社の仕事にやりがいを見出せるからではないでしょうか。毎日上を向いて頑張れる自信があるという気骨ある方には、商社という舞台は、きっとぴったりなグラウンドになるでしょう。