営業の中のルート営業について正しく知っていますか?
「営業」と言うと多くの人がイメージするのは「新規開拓」「飛び込み」と言われるスタイルの営業ですが、実際にはルート営業というお得意先を回るスタイルの営業も多くあります。しかしこのルート営業については、「飛び込み営業とは違う営業」という認識が強いためか、誤解されていることも少なくありません。新卒の就職活動や、転職活動の際にミスマッチが起きないように、正しいルート営業の姿について確認しておきましょう。
ルート営業とは
「ルート営業」というのは一般的には、一定の顧客や得意先などに対し、定期的に、あるいは定められた手順やルールに従って訪問して回る営業を言います。「ルートセールス」とも言われることがあります。主には、新規開拓や飛び込み営業と言われるスタイルの営業との違いを出すために使われることが多いです。
ルート営業のルートは「道筋」ですから、決まった道筋に従って顧客を訪問していくことからこのように呼ばれています。求人数も多く、未経験の人にも広く求人募集が行われていることから、実際に初心者や社会人経験の浅い人でも取り組みやすい職種です。
ルート営業と飛び込み営業の違い
ルート営業と一般営業の違いについては、一言で言えば「顧客の違い」と表現できます。
ルート営業では、すでに取引のある「既存顧客」に対して営業活動を行います。一方で一般的な営業では「新規の顧客」に対して営業活動を行うことになります。
これだけ聞くとルート営業は楽というイメージになりやすいのですが、実際には細やかなフォローやコンサルティング能力が問われる営業でもあり、また関係性ができているからこそ取引についても変化を生じさせにくい面がありますし、大口の取引先になると非常に気を遣います。
飛び込みの営業と比較すると、前任者からしっかり引継ぎが行われたりノウハウの承継ができますので、営業活動を新たに覚える上では比較的容易であると言えます。
また、一般的な営業と比較すると業務範囲が広くなる傾向があります。顧客との接点は営業訪問のみではなく、電話対応や注文処理、展示会などのイベント開催や、クレーム対応、必要に応じてメーカーや仕入れ元の状況確認など様々なことを行うことになります。また、各社の特徴やポイントを営業担当者が知っているということから、その企業に特化した形での提案資料の作成などを行うことも少なくありません。
新規開拓の営業が短時間・短期間での信頼構築やインパクトのある提案が重要であるように、ルート営業では中長期での信頼構築や、接点を増やし、細かな気配りで既存顧客の満足度を高め、自社の製品やサービスの利用拡大の材料を探していくことが必要となります。そのためには関係の構築はもちろん、自社の商品やサービスに関する知識が必要となり、それをいかに既存顧客に必要な形で提案できるかという提案力が必要です。
ルート営業によくある誤解
ルート営業は一般的な営業と比較するとイメージが正しく伝わっていない部分があります。よくある誤解について、正しい認識に直しておきましょう。
負担が少ないという誤解
未経験でも大丈夫な仕事で、心理的にも負担が少ないと言われると楽だろうとイメージしがちですが、ルート営業にはルート営業の大変さがあります。効率的に回ることができないと、担当を任せられている訪問先を回り切れず、また書類作成や事務処理で残業になることも少なくありません。展示会などを開催する時期には、残業も高頻度で発生し、連日遅くまで仕事をすることになります。
ノルマがないという誤解
ノルマが無いのがルート営業だと思われがちですが、ノルマというのは営業部員の一人当たり売上目標ですので、ノルマが完全にないわけではありません。ルート営業の場合は、受け持ちの顧客において売上を増やすことが求められています。あくまで、「新規開拓ほど重いノルマはない」という意味であり、「計算できる売上をあらかじめ持っているため、大幅未達の可能性は低い」ということでしかありません。
飛び込み営業と同じような仕事スタイルで良いという誤解
新規開拓を行う場合、電話でアポを取るか、アポなしで飛び込むかという形になりますが、ルート営業ではまず顧客の都合を確認して予定を組むことになります。また、必要に応じて商品やサービスの提案資料や、宿題として求められていたことに対する答えを用意していくことになります。
飛び込み営業では、基本的には自社の商品やサービスの性能や利点を説明し、売り込むことが大事ですが、ルート営業になるとより相手に合わせてカスタマイズした提案が必要になりますので、そのための資料作りが必要となります。すでに利用してもらっている商品やサービスについて疑問点や改善希望などを細かに集めることも重要で、アフターフォローを常に考えながら営業活動をする必要があります。
新規開拓と違い、決まった訪問先を回るため、ノルマが達成できたから時間の使い方をある程度自由にできるということもありません。
ルート営業が向いている人をチェック
飛び込み営業はちょっと難しいけれどルート営業ならできそうかも感じる人は少なくないかも知れません。ルート営業が向いている人についても確認しておきましょう。
必要な情報をうまく引き出せる聞き上手である
ルート営業で最も大事なスキルのひとつは、ヒアリング力です。聞き上手な人であってこそ、必要な情報を引き出して営業につなげることができます。共感したり、担当者の目線で考えられるビジネス思考が求められます。雑談からビジネスの話にうまく繋げられるトーク力も大事です。得意な人は、うまく志望動機に取り入れアピールすると良いでしょう。
誰からも好感を持たれる
ルート営業では、嫌われてしまうと話になりません。そのため、言葉遣いや振る舞いなどのビジネスマナーをしっかりしていることや、印象の良い清潔感のある身だしなみはとても大切です。お得意様だからと言って、何をしても大丈夫なのではありません。親しき仲にも礼儀ありです。
どんな人にもどんな時でも気配りができる
ルート営業では、常に相手に気を配ることで信頼関係を作っていきます。自分本位でなく、相手中心のコミュニケーションができることや、相手の時間を大事にすること、相手にとって何か有益な情報をひとつでも持っていくことなどが大切です。
事務処理能力が高くスピーディにこなせる
ルート営業はスケジューリングに書類作成、数値の確認など様々な事務処理能力が求められますので、こうしたことに負担感が無く得意な人は特に向いています。時間を効率的に使えるようになれば訪問件数も増やせて成果につなげやすいですし、不要な残業も回避しやすくなります。
ルート営業には特有の困りごとがある
ルート営業は飛び込み営業より楽な仕事ではありません。ルート営業には特有の困りごとがあることも知っておきましょう。
取引額が大きいので小さなミスでも大きな利益を失う可能性がある
法人相手で、大口の取引先の場合には、取引額が大きいためにひとつのミスが大きな利益の喪失につながることもありますし、発注ミスなどから先方に多大な損害を与えてしまうこともあります。そのため、完全に取引が終わるまで気が気でないという場合が多いです。
付き合いが長いために顧客に無理を言われる
既存の取引先があり、付き合いも長い場合には無理なお願いをされることがあります。今後の関係維持のために引き受けるべきか、それとも長期的にトラブルの種になることを避けるために断るのか、慎重な判断が求められ、ストレスに感じることもあります。上司と顧客の間に挟まれることも多いので心理的にも辛いです。
すでに必要なものを納めているので売上拡大が難しい
ルート営業では、すでに必要なものが決まっており、それを販売して終わっているため、売上の拡大が難しくなります。また、何かのトラブルや先方都合によって取引が無くなってしまうと、ノルマを埋めるための方法がなかなか見つからず、大穴を空けてしまうことになりやすいです。
時には新規開拓が命じられることもある
ルート営業でも、新規開拓が全くないということはあまりありません。新規開拓が必要性に迫られて求められることもありますし、取引先企業の紹介によって新規の開拓に行くケースもあります。普段と違うスタイルの営業なので、心理的に負担が大きく感じられる人も多いです。
売上が変化しないので新規開拓ほど評価されない
会社にもよりますが、新規開拓の営業と比較して、ルート営業は売上を上げても変化率が大きくない限りあまり評価されない傾向があります。そのため、年収の伸びや、昇給の面で不利に感じることがあります。
ルート営業は言われているほど楽じゃない
ルート営業は、新規開拓や飛び込みの営業と比べると気分的に楽な面も確かにありますが、それでも一般的に思われているほど楽なものではないことをしっかりイメージしておきましょう。
種類に関わらず、営業職は企業の商品やサービスを販売するいわば最前線であり、その最前線で戦う社員たちは尊敬もされる一方で人知れない多くの苦労をしているものです。最前線で戦っているからこそ評価もされ、大きな成果を挙げるなら英雄扱いをされるでしょう。ルート営業を考えている人は、正しい認識で営業畑に飛び込むようにしましょう。