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プロパー社員とは?中途社員ではないメリットとデメリット

プロパー社員という言葉は耳慣れない人も多いかもしれません。世間一般に浸透しているとはまだ言えないものの、ビジネスの現場で耳にしたときに焦ることがないよう、知っておきたいプロパー社員の意味と特徴、中途社員との違い、プロパー社員であることのメリットやデメリットを解説します。

プロパー社員とは?

プロパー社員とは、英語のproperから転じた和製英語を用いた、企業でよく使われる用語です。英語のproperには、「正規の、本来の」という意味があります。

プロパー社員の意味するところは、比較する対象によって変わってきます。一般的には、新卒入社のいわゆる「生え抜き社員」をプロパー社員と読んだり、非正規社員やグループ会社の社員に対して自社の正社員をプロパー社員と呼んだりすることが多いです。

新卒入社の社員が定年まで一つの会社で勤めあげることがめずらしくない、日本の企業独特の表現と言えるでしょう。

プロパー社員のメリットとデメリットとは

企業においてプロパー社員が働いていることで、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。企業側から見たメリット・デメリットならびに、プロパー社員本人から見たメリット・デメリットを解説します。なお、ここでは最も一般的な意味である、新卒入社の生え抜き社員をプロパー社員と定義しています。

プロパー社員のメリット

企業側から見たプロパー社員のメリットとしてまず挙げられるのは、プロパー社員は新卒で入社して以来、一貫してその企業で働いているため、愛社精神が強いということです。企業の理念もよく理解し、理念に沿った行動が身に着いているという点で、企業の模範社員とも言えるでしょう。

また、同期のプロパー社員同士の強固なつながりによって、部署を超えて調整が必要な業務がスムーズに進むなど、業務が効率的に進むチームワークのよさが期待できます。

一方、プロパー社員本人にとっての、プロパー社員でいることのメリットは、何と言っても企業内における待遇・給与面です。まだまだ年功序列型が多い日本の企業においては、新卒入社からずっと同じ企業に在籍していることで、プロパー社員としての恩恵を多いに受けることができるでしょう。

プロパー社員のデメリット

プロパー社員のデメリットは、企業側にとってもプロパー社員自身にとっても同じ内容となります。学校を卒業してから、一つの企業でしか勤務経験がないことから、視野が狭かったり、中途採用社員に比べて社会人としての経験が少なかったりすることです。

同じ価値観のなかで勤務を続けてきたことで、異質なものに出会ったときや、通常とは異なる場面において、フレキシブルな考え方や対応をするのが苦手な人がプロパー社員には多い印象があります。

プロパー社員と他社員の違いとは?

それでは、プロパー社員と、中途採用社員やグループ会社からの出向社員、非正規雇用社員といった他社員の違いとしては、どのようなものが挙げられるのでしょうか。

中途社員との違い

中途採用社員と比較したときのプロパー社員の意味するところは、新卒入社のいわゆる「生え抜き」社員です。

日本の企業は、新卒入社時から育て上げてきた生え抜きであるプロパー社員を大切にする傾向が強いです。そのため、中途採用社員がプロパー社員と同じスキルを持ち、同等の成果を上げていたとしても、プロパー社員のほうが評価されやすいといった事態も残念ながら多々見られるのが現状です。

シンプルに基本給や昇給の設定自体が、中途採用社員よりもプロパー社員のほうが優遇されているということもあります。当然のことですが、勤続年数の違いから、退職金にも違いが出てきます。

グループ会社や下請け業者からの出向社員との違い

グループ会社や下請け業者からの出向社員に対しては、自社の社員をプロパー社員と呼びます。たとえば、同じプロジェクトメンバーでありながら、自社の正社員とグループ会社からの出向社員などが入り乱れて働くことの多いIT業界においては、グループ会社からの出向社員や外注先企業の社員(下請け社員)に対して、自社の社員つまり元請け社員を「プロパー」と呼んで区別しています。

プロジェクトメンバーのなかでの立ち位置としては、やはり責任の重い仕事や花形の仕事をプロパー社員が担当することが多いと言えます。その分、プロパー社員が背負うプロジェクトに対する責任も重くなります。

非正規雇用社員との違い

派遣社員や契約社員といった非正規雇用社員に対して、プロパー社員という言葉は「正社員」という意味で使われます。

非正規社員と正社員であるプロパー社員では、雇用契約自体が異なり、賃金や勤務形態、担当業務に至るまで大きな違いがあります。非正規雇用社員はプロパー社員の補佐のような形で業務に就くことが多いです。プロパー社員のほうが、責任のある仕事を担当しているのは言うまでもありません。

非正規雇用社員は有期雇用が多く、期限を迎えれば会社を去ることになります。そのような点でも、通常は企業に対する愛着はほとんどないでしょう。

昨今、社会問題となっているのは、非正規雇用社員でありながらプロパー社員と同等の責任のある業務に従事させられ、正社員として採用されることもなく、待遇の改善もないという状況です。このような理不尽な働き方を余儀なくされている非正規雇用社員は数多く存在します。

「プロパー社員」の特殊な使い方

製薬業界においては、MR(medical representative;医薬情報担当者)のことを「プロパー」と呼ぶ場合があります。これはプロパー社員という用語の使い方の特殊な例です。なじみが薄いですが、覚えておいて損はありません。

プロパー社員と他社員のコミュニケーションを円滑にするには?

プロパー社員と他社員の間には、それぞれの企業内における立ち位置の違いから、ときに軋轢が生じてしまうことがあります。雇用形態の違いから社員同士で分裂したり、もめごとがあったりしては、社内の空気も悪くなり、プロジェクトの成功が遠のきます。

そのようなプロパー社員と他社員の間の軋轢を防ぐためには、どのような対策をとることが効果的なのでしょうか。考えられる案を挙げていきます。

平等な実力評価制度を作る

どのような対策よりも優先して行うべきは、誰の目にも明確かつ平等な実力評価制度を構築するということです。プロパー社員であっても、中途採用社員であっても、実力次第で昇進・昇給していく制度があれば、お互いに対する負の感情がなくなるはずです。

非正規雇用社員であっても、プロパー社員と同等の業務をこなす能力のある社員については、特定の試験を受けることで正社員として採用するといった道筋を作ることも重要です。

社内研修を行う

プロパー社員と中途採用社員が一緒に出席する社内研修を設けて、双方のスキルや経験を受け渡しする機会とするのは非常に効果的です。お互いの考え方の違いや、積んできた経験の違いを理解し、尊重しあい、結果として切磋琢磨して高め合っていける関係になるほどすばらしいことはありません。

中途採用社員はさまざまなバックグラウンドを持っている人が多く、そのような経験をプロパー社員が知ることは、大きな刺激となります。その反対も然りです。

プロパー社員からすると、中途採用社員は異質なものに見えるかもしれませんが、同じ意見の社員ばかりの企業の末路は明るいとは言えません。中途採用社員によって新しい風が吹き、プロパー社員がその風を受け入れてさらなる進化を遂げられるような企業が、今後も発展していくはずです。

同世代で交流する機会を作る

中途採用社員には同期入社の社員がいなかったり、いても少なかったりして、入社当初は居心地の悪さを感じずにはいられないものです。そのようなときに、同世代であるプロパー社員がメンターのような形で中途採用社員をサポートしてくれたなら、中途採用社員はどれほど心強いでしょうか。

プロパー社員にとっても、今まで触れる機会のなかった世界観を持つ中途採用社員から得るものは大きいはずです。プロパー社員と中途採用社員の垣根を超えて、同世代同士で助け合ったり、交流したりできるような機会を企業が作ることは、企業にとってもメリットがあることは確実です。

メンター制度とは?メンターとメンティに求められること

社内行事を取り入れる

プロパー社員と他社員の垣根を超えてコミュニケーションが図れるような、社内行事を取り入れるのもよいでしょう。たとえば会社が費用を出して、ランダムに選んだ社員数人でランチを食べに行くといった制度です。コミュニケーションをとる機会を持つことがとにかく大切です。

企業力アップのカギはプロパー社員と他社員の協業にあり

比較対象によってその意味するところが変化するプロパー社員の定義を理解するのは、なかなか難しいかもしれませんが、良くも悪くも日本の文化がよく表れた興味深い言葉であると言えます。

プロパー社員のメリットとデメリットをよく理解したうえで、中途採用社員をはじめとした他社員と効果的に協業させることが、企業力をアップさせるためのカギとなってきます。プロパー社員と他社員それぞれの特徴を生かせる制度を構築することが、企業の喫緊の課題と言えるでしょう。