薬剤師の仕事内容は多彩!調剤するだけが業務じゃない

薬剤師の仕事内容は非常に多彩です。業務の幅広さから活躍できる職場も多く、今後も必要とされる職業の1つです。大学や病院、調剤薬局はもちろん、新薬を研究・開発する製薬会社に勤めることもあります。どの地域、どの時代においても必要とされる職業ですので、詳細を知っても損はありません。

薬剤師の仕事内容は多彩!調剤するだけが業務じゃない

薬剤師の仕事内容はさまざま

薬剤師という職業を聞くと薬局が思い浮かびますが、実際には仕事内容の多様さから就職先は薬局以外にも多く存在しています。

厚生労働省が発表している「平成26年(2014年)医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」によると、薬剤師としての登録者数は288,151人であり、年々登録数を増やしています(注1)。

薬剤師自体の人口が増えているにもかかわらず、世の中は薬剤師不足となっているため売り手市場が長年維持されています。また、薬剤師資格が国家資格であることが希少性を高めています。

薬剤師は患者のために薬を調合する医薬品のスペシャリスト

薬剤師は医薬品に関するスペシャリストです。専門家であるがゆえに持っていなければならない知識は多く、もちろん知識に基づいた正しい実技を習得している必要があります。経験と会得した知識を元に、病気や怪我を負っている患者の治癒のために薬の調合、あるいは医療品の研究に努めることを目的としています。

医師が指示した薬が患者にとって害にならないか確認するのが仕事

薬を調剤する薬剤師

薬剤師は薬の処方が主な役目ですが、患者1人1人に合った薬剤の調合だけでなく、医師が指示した薬が患者にとって害とならないかを確認しなくてはいけません。患者の症状や体調にかかわらず同じ分量で作られた市販の医薬品とは違い、薬剤師が患者に渡す薬は医師からのカルテや問診を元に作られています。

薬は用法・容量が決まっていますが、市販の医療品の場合は誰にでも害のないように作られており、人によっては効き目が弱かったり強すぎたりすることがあります。本来、薬は患者の生活習慣や病歴を踏まえて処方されるもので、場合によっては普通よりも効能を強くしないと効かなかったり、飲み合わせが悪い物もあります。薬剤師は、患者に相応しい薬は何かを検討しながら処方していく義務があります。

患者に薬を渡す前に他の薬剤師がチェックするのも慣例になっている

一般的に薬剤師を目にする機会が多い調剤薬局でも必ず処方内容に誤りが無いかを確認します。医薬分業という考え方のもと、医師と薬剤師の2重チェックを経て医療ミスを防ぎます。患者へ薬を渡す前に、他の薬剤師がさらにチェックすることも慣例となっています。

薬剤師の仕事内容

薬剤師として活躍する場は大きく分けて6つあります。それぞれの職場でやらなければならないことは変わってきますが、薬剤師としての基本的な役目はどこでも大きく変わらないため、各職場で役目を果たすように努めています。

調剤薬局で働く薬剤師の仕事内容

調剤薬局で働く薬剤師

病院やクリニックには必ず調剤薬局があり、医師の診断をもとに調剤を行います。調剤薬局で働く薬剤師の業務は主に3つあります。

薬剤師の業務

  • 調剤業務
  • 服薬指導
  • 薬歴管理

調剤業務では業務を行う前に必ず保険証とお薬手帳の確認をします。重複投薬や相互作用によって影響が出てしまう薬を投薬していないかをチェックするためであり、疑わしい場合は主治医に投薬指示について確認を取ること(疑義照会)になります。確認が取れ、投薬に問題なければ調剤を開始します。

調剤業務の次に服薬指導に移ります。どのように服用しなければならないかを患者さんに伝える業務ですが、薬剤師の一方通行的なコミュニケーションにならないよう、素人にも分かるように説明しなくてはいけません。

そして、1番考慮されなければならない業務が薬歴管理です。患者がこれまでどのような薬を服用してきたかを管理しておかなければなりません。また、薬表などを活用して逐一薬剤内容を確認しておくことも重要です。

ドラッグストアで働く薬剤師の仕事内容

ドラッグストアで働く薬剤師

ドラッグストアで働く場合は薬局業務に加えて、以下の2業務が追加されます。

薬剤師の業務

  • 一般用医薬品(OTC薬)の販売
  • 相談業務

ドラッグストアで働くということは、調剤薬局で働くよりも接客のスキルのような一般的な業務をこなす能力も必要とされます。医師からの指示によって調剤するだけでなく、市販薬やサプリメント、健康食品なども扱うのでより広い知識が求められます。将来的には医療用薬品が第一類医薬品(副作用、相互作用などの項目で安全性上、特に注意を要する医薬品)に移る可能性もあるため、ドラッグストアでの勤務経験は得難いものになる可能性があります。

製薬会社で働く薬剤師の仕事内容

製薬会社で働く薬剤師

製薬会社に勤める場合は創薬をするために、以下のような業務を行うことになります。

薬剤師の業務

  • CRC(治験コーディネーター)
  • CRA(臨床開発モニター)
  • MR(医薬情報担当者)
  • 臨床開発(QC,QA,DM)
  • DI業務

治験コーディネーターとも呼ばれるCRCは、医療機関において医学的判断が必要ない仕事を行い、全体のサポートをします。CRAは臨床開発モニターとも呼ばれており、治験契約や終了などの諸々の手続きを行います。

MRのように自社の医薬品の安全性と効果についてアピールする業務や、品質管理(QC)、データマネジメント(DM)を含む臨床開発の仕事もあります。DIは医療品情報(Drug Information)という意味で、その名の通り医薬品に関する注意や効能について正確に情報を伝えることが主な役目です。

病院で働く薬剤師の仕事内容

病院薬剤師の役割は総合的な業務となっており、多くの薬剤師を必要としています。6つの職場の中で最も業務が多い職場でしょう。以下すべての業務を個人でこなすことは難しいですが、複数人にローテーションさせている病院もあります。

薬剤師の業務

  • 調剤業務
  • 服薬指導(外来・入院)
  • 薬歴管理
  • 薬剤師外来
  • 病棟薬剤業務
  • 注射薬調剤業務
  • DI業務
  • 医薬品の管理

大学で働く薬剤師の仕事内容

大学で働く薬剤師のことを「実務家教員」と呼ぶこともあります。大学教員ですので研究や講義を行い学会や研究会で研究成果を報告します。近年では実務を行う実習先の確保が重く見られるようになっています。実務家教員になるためには最低でも5年間の実務経験が必要となります。また学歴および研究歴に加えて推薦が重要になります。基本的な業務は以下の通りです。

薬剤師の業務

  • 実務実習先のマッチング
  • 学内臨床実習事前準備、講義
  • 実務実習の巡回あいさつ
  • 薬局実務研修
  • 学内評価者講習会の開催
  • 模擬患者の養成

行政で働く薬剤師の仕事内容

公立病院の場合は不要なこともありますが、基本的には公務員試験に合格後、行政が運営する各職場に配属されることになります。薬剤師の資格に加えて公務員試験にも合格しなければなりませんので専門性が高い職業となっています。行政で働く薬剤師の仕事には次のようなものがあります。

薬剤師の業務

  • 厚生労働省などの省庁で法令や薬事行政など
  • 都道府県庁関係課
  • 麻薬取締官
  • 保健所(薬事衛生/環境衛生/食品衛生)
  • 研究機関
  • 薬事情報センター
  • 公立病院などの医療機関

薬剤師になるには国家資格に合格する必要がある

国家試験を受ける学生達

薬剤師の求人は薬局が1番多い一方で、製薬会社のMR(医薬情報担当者)への転職志望者が多いです。しかし、どちらにしても薬剤師国家資格に合格する必要があります。

平成18年度の大学入学者から薬学部は6年制に変更されました。薬剤師になるためには薬学部としての過程を修了し、3月に行われる薬剤師国家試験に合格しなければなりません。合格後、厚生労働省に申請することで薬剤師名簿に登録することになります。また、厚生労働大臣から薬剤師免許が授与されます。勤務先によっては別途条件が出されることもあります。

薬剤師の給与と待遇

薬剤師の初任給は400万円前後が望めます。国家公務員として働く場合は公給として定められていますので、待遇に関しても他の国家公務員と同等の扱いを受けることになります。また、民間企業に勤めると年収が1,000万円以上になることもあります。待遇に関しては企業によって異なりますが、一般的に育児や介護の休業制度が整えられています。

薬剤師のやりがいと苦労

パソコンで調べる薬剤師

薬剤師は個々人に合わせた薬を処方しなければなりません。個々人は性格も違う上に症状も異なります。ただの風邪でも皆同じ薬というわけにはいきません。診察が終わってから内容を確認しつつ処方しなければいけませんので多忙を極めます。

創薬に関しても正確な臨床データと厳密な論理展開が必要となります。膨大なデータを前にして的確な判断が求められ研究に次ぐ研究の毎日であり四六時中気が抜けません。

しかし、自分で処方した薬や作った薬で症状が緩和したり、患者さんと話しをしているときに「話しやすい」と感じてくれることで日々の苦労が報われます。

薬剤師の仕事はエネルギッシュ!

薬剤師の仕事はかなりエネルギッシュな内容になっています。ゆえに高給になっていることが多いです。また、薬剤師の多くは学歴が高く安定した職に就いていることが多いです。薬剤師は増え続けているもののそれ以上に薬を必要としている高齢者がいる以上は職業として安定するでしょう。

また、薬剤師にとって必要なことは薬学の知識以上に相手の痛みが分かることです。人の痛みが理解できる人材というのはいつの世でも人に好かれやすいのが事実です。