パティシエの仕事内容を知ろう
幼い頃の将来の夢はなんでしたか?ケーキ屋やパティシエになりたかったという人は多いでしょう。事実、平成18年の調査でも男子小学生の間では運転士に次いで10位、女子小学生では保育士に次いで3位になっています(注1)。
とはいえ、パティシエの仕事内容をきちんと知っている人は多くありません。華やかなイメージの強いパティシエですが、地味な仕事もこなしてこそ、美味しいお菓子が作れるのです。今回は、パティシエの仕事内容について体験談と共に詳しく紹介します。
パティシエの仕事内容とは
パティシエはお菓子作りが仕事ですが、どこで働くかによって何を作るかが変わってきます。今回はパティシエが働くことになる主な職場とその仕事内容を紹介します。
洋菓子店のパティシエ
少人数のパティシエが働く洋菓子店ではケーキやクッキー、ゼリーなど、お菓子を作る全工程を一人で担当しなくてはいけない場合があります。一方、チェーンの洋菓子店では大人数のパティシエが働いており、作る量も多いため「焼き菓子担当」「生菓子担当」と担当が決められたり、「生地作成担当」「仕上げ担当」とお菓子作りの工程ごとに分担したりします。
小規模の洋菓子店ではパティシエが製造から販売までをこなしているところも多く、日によって大変忙しくなりますが、お客様の顔や反応を直接見られるメリットもあります。また、朝早くから働き始め、夜遅くに仕事が終わることも多くあります。繁忙期には休みがとりにくいという特徴もあります。
ホテルや結婚式場のパティシエ
ホテルや式場のスイーツというとパーティ用のデザートやウエディングケーキをイメージしがちですが、販売用の焼き菓子や生菓子も作っていることがあり、洋菓子店同様に色々な菓子をコンスタントに変わらぬ美味しさで提供することが求められます。
洋菓子店やレストランのように平日が忙しくなることは少ないですが、イベントや式が行われやすい週末や祝日はかなりせわしくなります。クリスマス前や当日は目が回るほどの忙しさになります。
飴細工やマジパン、砂糖細工といったデコレーションを施すことが多く、細かい作業に集中したり手早くデコレートしたりする技術が必要です。クライアントの希望に合わせたオーダーメイドのケーキなどを作ることもあります。
レストランのパティシエ
レストランで働くパティシエはデザート担当として勤務することがあり、アシェットデセール、いわゆる皿に盛りつけられた美しいデザートを作ることになりますので、盛り付け方や配色といった美的センスが求められます。
また、レストランによってはスイーツだけでなく通常の料理の補助を任されることもありますので、基礎的な料理の技術がないと苦労することになります。
工場のパティシエ
工場で大量生産するような洋菓子メーカーの中には、機械だけでなくパティシエを雇うこともあります。衛生管理を非常に厳しく行っているため、全身を覆うように真っ白な制服・手袋・マスク・帽子などを身に着けて作業します。
パティシエをしていてよかったこと
パティシエになりたいと思う人はお菓子が大好きです。毎日大好きなお菓子に囲まれて、自分の手でそれらを作り上げる喜びと楽しさ、一生ものの技術が身に付く素晴らしさもあります。
創造性、独創性を活かして自分の考えたスイーツを形にする楽しさだけでなく、それが商品化してショーウィンドウに並ぶ姿に喜んだり、お客様に買われた時に嬉しくなったりします。甘い物で人を幸せにするパティシエという仕事に、きっと誇りを持つでしょう。
また、パティシエは修行して腕を磨けば、独立して自分の店舗を持つことも可能です。自分の力量だけで世界を渡っていけるのは魅力的です。
パティシエをしていて大変なこと
パティシエをしていて大変なのは、その仕事のハードさです。朝早くから夜遅くまで働いているのに他業種に比べて給料が安い場合が多くあります。また、パティシエに限らずサービス業の宿命と言えますが、土日祝日に休みを取りにくいです。
そして、傷が絶えないのもパティシエの特徴です。やけど、切り傷、うっ血など、とにかく仕事中に傷が出来やすいです。さらに、同じ場所で同じ姿勢を取りながら立って作業する時間が長いので、腰痛に悩むでしょう。同じように、大量のクリームを混ぜたり生地を練ったりすると腱鞘炎になりやすくなります。
20代のパティシエの仕事体験談
パティシエの仕事について
まい(28歳)
勤務時間は7:00から20:00で、休日は週1回の定休日のみなので月4回程度です。年末年始のみ、まとまった休みが5日程度あります。
仕事内容はケーキの仕込みから仕上げ、品出し、焼き菓子の包装やラッピング、洗い物、掃除、材料の在庫管理から発注、電話の予約対応です。
大変なことは意外と力仕事が多いこと、オーブンを使うので夏場はとても暑く、火も扱っているので火傷をしてしまうことがあります。お店にもよりますが、労働時間が長いです。
パティシエをしていて良かったのは、ケーキがいつもより上手に作れた時や、自分が作ったケーキを見たり食べたりしたお客様の笑顔が見られた時です。
過去にパティシエをした経験談
しり(23歳)
昔パティシエとして働いていた時は、朝6時起きは当たり前で7時には勤務先の厨房に入り、休憩を挟んでの夜23時まで仕事をしていました。肉体的にハードな仕事です。
仕事が休みの日は週に1日あり、希望公休をいれれば月に6日ぐらいは休みがありました。しかし、休日も自分が終わらなかった仕事を片付けに行っていたので、実質1週間のうちに休みがあるかかないかでした。
パティシエの1日の流れは、朝は冷蔵庫の中身を見ながら仕込みを始め、足りない食材を発注しながらランチやディナーの仕込みをして、必要な時に盛り付けていきます。
パティシエはただフルーツを切ったり、お菓子作りしたりするわけではありません。市場からきた新鮮なフルーツを自分の目で確かめたり、このフルーツをどのスイーツに使えば良いかと頭を働かせたりしながら働く仕事です。
辛いことといえば発注を間違えるといったミスをしてしまったことですが、パティシエをしていた頃は毎日が楽しく、現在では知識が身に付いて色々なデザートを作れるようになりました!
憧れのパティシエになって
みなよ(26歳)
私は製菓の専門学校に一年間通い、結婚式場専属のパティシエとして式場に就職しました。勤務時間は10:00~19:00の8時間労働で、休みは月に7~8回ほどありました。
平日は週末にある結婚式の仕込みをしたり、ウエディングケーキの細工を作ったりといった、前準備を中心に仕事を進めます。また、見学に来られた方にデセール(柔らかいデザート用ビスケット)も作り提供します。土日祝日は、前準備してあるケーキやデザートの仕上げをして提供します。
細かさが求められる職業なので、指先の使い方や手元だけでなく全体のバランスを見ながら作業するのが大変だと感じました。集中していると無意識のうちに肩や首に力が入りこってしまうので、アフターケアは欠かせません。
パティシエをしていて思ったのが、色の鮮やかなケーキや飴細工などと触れることが多いので、感性が豊かになりました。パティシエはどこまでもクオリティを追求できるので、すごい魅力がある職業です。
30代のパティシエの仕事体験談
パティシエは凄い!
くらげ(38歳)
今は普通の主婦ですが、私が都内の有名店でお仕事していた時のエピソードをお話します。勤務時間は6時半~0時までで、休日は月に4~5日でした。
担当していた仕事内容は、その日に使う生クリームとカスタードクリームの準備、ケーキのカットや盛付等の仕上げ作業、材料の補充、洗い場や掃除、その他必要なことは全てやります。
仕事で大変だったことは、入ったばかりの下働きは右も左もわからないまま、仕事の流れを読んで準備しなければいけないことでした。上手く出来るまではずっと怒られている状態なので精神的に参りますし、慣れてきても常に緊張状態でした。
それから常に時間に追われており、立ち仕事で休憩がありませんでした。忙し過ぎて昼食が夜の20:30以降でないと食べられない時や、朝早く夜遅いので常に睡眠不足でしたので、体力に自信があった私でもかなりきつかったです。
逆にパティシエをしていて良かった事は、自分が作ったケーキを友達にプレゼントした時とても喜んでもらえたことです。やっぱり人を幸せにするパティシエの仕事って素晴らしいです。
綺麗な美味しいお菓子
mogu(36歳)
勤務時間は8時から17時までですが、忙しい時期は2~3時間の残業がありました。休みは不定休で月に8日程あります。
仕事内容は経験年数や専属場所によって、作業は多岐に渡リます。私の場合は、朝からお菓子で使う生地や焼き菓子などを焼き、焼き上がった生地を成形したり、飾り付けしたりしてショウケースやストック用に保存します。
材料の仕分けをすることもあるのですが、種類も多く重たい物もたくさんあって大変です。忙しい時は特に体力や忍耐力が必要になってきます。
パティシエをしていて良いことは、お菓子作りや技術などが身に付きますし、手ずから作り上げたお菓子を前にすると達成感を覚えます。また、新しい商品を考えて、商品化されるとやりがいを感じます。
パティシエの仕事
hiro(30歳)
私は専門学校を出てから6年間に2店の個人経営の小さいケーキ店でパティシエとして働いていました。
朝は7時半に出勤し、その日お店に並べるケーキを仕上げていきます。オープンまでに開店準備が整ったら、焼き菓子・ケーキ等の仕込みをしていきます。店頭で接客をすることも多く、お客様を待たせていないかと、仕込みの仕事をしながら販売スペースにも気を配ることも大切でした。
7時から20時までと勤務時間は長く、休みは月6日と少ないです。ずっと立ち仕事のうえ、体力勝負で大変なことも多い仕事ですが、お客様の「美味しかった」という声を聞くと明日も頑張ろうという気持ちになります。昨日できなかったことが今日はできるようになる楽しみがある、やりがいのある職業です。
パティシエであるために大切なこと
マカロン(34歳)
パティシエとして働いていたとき、勤務時間は8:00~20:00でした。私の場合は週4での契約で、たまに休日にも出勤していたのでお休みは月に12日位でした。
私はシュークリームやプリンを担当しており、全部の工程を一人で仕上げていました。店長からアイディアがあったらどんどん出すようにと言われていましたから、その作業の他にもアイディアを形にし、良ければ商品化していきます。
仕事をしていて大変だと思うのは、体力勝負ということです。華やかな仕事に見えるかもしれませんが、立ちっぱなしだったり、重たいものを持ったりすることも多いですから、まずは体力がないとやっていけません。
パティシエをしていて良かったと思うのは、人を喜ばせられるということです。「美味しかった」「綺麗だった」とお客様が喜んで下さるなら幸せな気持ちになれますし、パティシエとしてやりがいを感じます。
40代のパティシエの仕事体験談
甘くない?パティシエ
もえっち(40歳)
甘い香りに包まれて華やかなイメージが強いですが実際の所は…ガチガチの体力勝負なガテン系!
私が勤務していたお店は7時~19時位のシフト、クリスマスやバレンタインなどの繁忙期は徹夜になる事もありました。定休日が無いお店だったので休日も平日のみ、土日が稼ぎ時の飲食店やサービス業の宿命かもしれません。
パティシエというとケーキを連想すると思いますが、乾き物と呼ばれるクッキーや流し物と呼ばれるゼリー類なども作ります。家庭でのお菓子作りは優雅で可愛らしいものですが、業務用ともなれば両手で抱える大きなミキサーに人が入れそうな大きなオーブン、火傷もしょっちゅうの正に体力仕事なのです。また、バターや生クリームなどの油脂類や消毒用のアルコールは手荒れしやすく、肌の弱い人には厳しい環境でもあります。
過酷な職場であるパティシエですが、嬉しい事ももちろんあります。自分が一から手がけたケーキが、お店のショーケースに並んでキラキラ輝いている光景は絶対に忘れられない思い出です。閉店時にそれが売り切れるのもまた嬉しくてたまらないのです。お菓子と違って「甘くない」お仕事ですが、喜びは計り知れません。
パティシエの仕事内容は意外とハード
パティシエのようなアーティステックな面を持つ職業全てにいえることですが、知識は学べば学ぶだけ、センスは良い物を観れば観るだけ、技術は練習すればするだけ、どんどん向上していきます。それはつまり、限りがないということでもあります。体力勝負の激務で薄給ですが、いつまでも謙虚な姿勢で学び続ける姿勢を忘れずにいましょう。
参考文献