時代はパラレルワークに向かっている
「ふくぎょう」と聞くと「副業」を思い浮かべる方が多いでしょうが、今回ご紹介するのは「複業」についてです。1つの会社・企業ではなく、複数の場所で働くパラレルワークが徐々にその働き方が知られるようになっています。
しかし現在はパラレルワークを始めている方は少なく、副業と混同している人も多くいます。今回は、今後働き方の選択肢として身近になるであろう、パラレルワークについて紹介します。
パラレルワークとは
パラレルワークとは複数の箇所で働くことを指します。同様に複数の箇所で働く「副業」もありますが、今後の社会に浸透していくといわれるパラレルワーク・複業とは何が違うのでしょうか?
副業と複業の違い
「副業」は1つの本業に対していくつかの副業を行うことになり、受け持つ仕事にメインとサブがあるということになります。対して「複業」はメインもサブもなく、すべてが本業となります。片方の仕事を軸に考えるのではなく、全ての仕事に相応の努力と熱量を払います。
また、副業は企業から隠れて働くというイメージがありますが、複業の場合は公にして働きます。複業の場合はどれもメインなので、仕事によって名刺を作り分けて様々な場所で営業したり人脈を広げたりします。
現状のパラレルワークは複業ではなく副業に近い
本業の合間に、派遣業務やアルバイトというかたちで「副業」も行って生計を立てる方が多いでしょう。今では自宅でできる仕事も多いので、副業をする人もかなり増えています。対して「複業」では働ける場所が限られているというのが現状です。サイボウズなどの「複業」に力を入れている会社はありますが、まだまだ足りませんので在宅ワーク中心です。
「週3日は○○で週2日は▼▼で働く」といった体制を作り上げていかねば「複業」は達成できません。そのため、さまざまな働き方改革が行われている今はパラレルワークへとシフトしようとしています。
トップ経営者は皆パラレルワークをやっている
実はこのパラレルワークという概念自体は新しいわけではありませんが、限られた人しかしない働き方のため世間一般には馴染みが薄いでしょう。現在ではパラレルワークという働き方を選択する方は徐々に増えています。
よく経営陣の紹介として取締役や専務、部長、監査役などの紹介がされますが、これらの方たちは従業員ではなく管理職あるいは経営陣として位置することになっています。いわば役員職は一つの会社だけでなく複数の会社で複数の役職を兼任している場合があります。そうすることで所得が増えることはもちろんですが、社外秘などの情報管理や組織の運営に関して全力を尽くす義務があります。これはトップ経営者という腕利きの人たちは皆やっていることなのです。
パラレルワーカーになるなら時間を自由に使えることが大切
パラレルワークをする人のことをパラレルワーカーと言いますが、この人たちの働き方は基本的に不規則になることが多いです。というのも同じ業種や業界で働くとは限らずそれぞれに時間的制約を課せられるためです。有名なパラレルワーカーに投資ファンド・インテグラル株式会社代表取締役の佐山展夫氏がいます。
彼は投資会社を経営しながらもスカイマークの会長を兼任し橋大学大学院国際企業戦略研究科、京都大学経営管理大学院でも教授職を担っています。できる人は違うなと感じるかもしれません。なぜなら役職のどれもが有名であり自由度の高い役職だからです。これらの役職に就けるかは分かりませんが、仕事の自由度が増すということはパラレルワーカーにとって必須条件なのです。
パラレルワークのメリット
「パラレルワーク」をすることでいくつかのメリットがあり、それを享受するためには仕事の自由度を高めなければなりませんが、そうした政策が出てくるのはもはや時間の問題でしょう。
収入源を増やすことができる
「複業」のメリットの1つが、収入源が複数に増えるということです。世界の経済状況は安定したとは言い難く、いつリストラを宣告されるかは分からない状況です。
従来のように1つの本職だけに必要な収入のすべてを頼ってしまうと、その仕事を辞めなくてはいけない場合に一気に収入が0になってしまいます。そんなリスクを避けるために収入源とリスクを分散させられるのは複業のメリットといえます。
新しいことをどんどん身につけることができる
「複業」をすることで異業種への関与ができ見識と関係性を広げることができます。先ほどの収入の話ですと単純な足し算の話となりますが、それだけではパラレルワークをする必要はありません。むしろ仕事を新しいものにする力を身に着けることがパラレルワークの醍醐味なのです。
これは異業種に関与することでその業界で当たり前と言われる常識を吸収することにつながり、そこから戦略的ヒントを見出せます。さらに異業種との繋がりはビジネスの強みとなり、ビジネスマンとしての価値も格段にアップさせることができるのです。複数のタスクを個々に行うのではなく、有機的にリンクさせられるのはパラレルワークの強みです。
パラレルワークのデメリット
確かにパラレルワークを実行することにより、関わりを持つ人の数や種類は格段に広がるためビジネス上の利点も多く、人によっては複業により大きくステップアップを遂げる方もいます。しかし何事にも良い面ばかりではなく、パラレルワークにもデメリットがあります。
仕事が増えて忙しくなる
当然ですが、本職を増やすということは仕事量を増やすことに他なりません。仕事をするにあたって細かい業務や作業をおろそかにしてしまうと、全ての仕事のクオリティに影響を与えてしまいます。
パラレルワークをする際は効率化を図ったり、素直に同僚の力を頼んだりすると良いでしょう。ミスが多くなるとそれだけで結構なストレスを抱えますし、自分の仕事が何なのかを理解しておくことで重要度の高い仕事にレバレッジをかけることができます。
それぞれの情報管理が難しくなる
パラレルワークをするうえでまず徹底しなくてはいけないのが、情報管理です。例えば所属先がA社とB社なのであれば、それぞれの情報・書類の管理を別個にしなくてはいけません。また、それぞれの会社から得た情報を漏洩しないように管理しなくてはいけません。管理が杜撰だと罪に問われるので要注意です。
人間関係は自分の財産として築いていくべきですが、立場などはそれぞれのコミュニティ内のものだと割り切りましょう。そうすることで、余計なトラブルに巻き込まれるというデメリットを未然に防げるでしょう。
パラレルワークをするなら複雑になる人間関係に注意する
コミュニティをたくさん築き上げることはあなたのビジネスの場を広げたり、あなたの理想を叶えるために大きなヒントをくれるものです。パラレルワークというものはそうした可能性を秘めたものであり大いに広めていくことが求められるべき働き方です。
しかし、コミュニティを広げるということはそれだけ人間関係を複雑にするということです。各コミュニティにはそれぞれのマナーやあなたの立場があります。例え平等で自由をモットーにしていたとしても何らかのパワー関係はできてしまうものです。
「よそはよそ、うちはうち」を徹底する
別のコミュニティのパワーバランスを持ち込まないということが重要です。自分だけが注意していてもうまく達成できません。例えばA社では部長と課長の関係にある2人が、別のコミュニティでは立場が逆転していた場合、うまく関係が築くのは大変でしょう。
コミュニティを増やす場合は、各コミュニティで頭と気持ちを切り替える努力も必要だと理解しておきましょう。
パラレルワークはこれから身近になっていく
本業をいくつも持つというのは抵抗を感じる人が多いかと思います。しかし終身雇用や年功序列などの日本的なシステムが崩れてきている以上、パラレルワークという働き方は自分を守る術につながります。そのためこうした考え方を異物として見るのではなく受け入れる努力が必要です。近い将来、パラレルワークは身近な存在になるでしょう。その時のための心構えとして受け取ってもらえれば幸いです。