「窓際族」は本当に現代の勝ち組なのか
「窓際族」というと眉をしかめる人も多いものですが、会社の中で特段仕事をすることもなく過ごしている人のことを表した言葉です。
この窓際族という言葉は1970年代からある言葉ですが、最近では肯定的に受け取られ、「あまり仕事をしなくても給料がもらえる人」だと考えられ、「現代の勝ち組」などと言われることもあります。
実際にそのような人が会社にいることは決して少なくありませんが、窓際族は果たして本当に「現代の勝ち組」と言えるものなのでしょうか。窓際族について正しい認識を持つことは、社会人としてのあるべき姿について考える機会にもなります。今一度よく考えてみましょう。
「窓際族」の意味とは?
窓際族とは出世ラインからはずれて職責や職務のない立場にある中高年サラリーマンという意味で、ここには揶揄的な意味が含まれます。
就職をしているにもかかわらず、社内で特に仕事もなく、また仕事がないが故に他の社員と積極的にコミュニケーションをとる必要性もなく、その働きぶりが他の社員に悪影響を与えないようにオフィスの隅(=窓際)に席が配置されることが多かったことから「窓際族」と表現されるようになりました。なお、現在では出世ライン上にいるかいないかはあまり関係がありません。
「窓際族」が日本で生まれた背景
実は海外では窓際族はほとんど存在しません。日本において窓際族が生まれたのは、年功序列・終身雇用という日本の独特の雇用システムが関係しています。
仕事をしてみるとその仕事への適性や会社への順応具合がわかるものですが、勤務年数に応じて期待される最低ラインにそのパフォーマンスが届かない場合、扱いにくい、仕事を任せられない人と評価されてしまいます。その結果仕事が回ってこなくなり、仕事がない状態となります。
しかし、日本企業における年功序列のもとでは、給料はそれでも上がっていきます。また、終身雇用が前提となっているため、会社側はよほどの事情がなければ解雇することもできませんし、下手に解雇するとトラブルが生じる可能性もあります。
そのため、会社には所属させつつ、周囲に悪影響を与えないようにするような配置が考案されます。「仕事の繁閑や必要性に応じて各処に配置をする予定」という名目で社内待機をすることが仕事となったものが窓際族の走りです。しかし、当然そういった出番はなかなかなく、普段していない仕事が急にできることもありません。
海外の企業なら戦力外の人間はすぐにリストラして終わりです。簡単に辞めさせることのできない当時のジレンマが生み出したものが窓際族であると言ってもよいでしょう。
窓際族はどのような仕事をしている?
窓際族の人というのはどのような仕事をしているかというと、ほとんど仕事らしい仕事はしていません。雑用のような仕事を頼まれる機会が多いのが特徴です。郵便を受けるための待機であったり、工事などの立ち合いだったり、「誰でもできる」「戦力は割きたくない」仕事が回ってきます。
ある窓際族の人の仕事のスタイルを例に挙げてみます。
- 9:00 定時に出社、メールチェック、新聞購読
- 10:00 会議に参加(発言なし、役割なし)
- 11:30 メールチェック、ネットサーフィン
- 12:00 昼食休憩
- 13:00 他の社員の日報を読む
- 15:00 メールチェック、ネットサーフィン、時々雑用
- 18:00 退社(定時)
メールチェックの中身もほぼ社内広報や、登録してあるメールマガジンが主で、業務上のコミュニケーションで必要となるものはほとんどありません。こうした日々が毎日続くので「不労所得」という捉え方をして憧れる若い人もいますが、決していいものではありません。役割も居場所もない中で給料をもらいその場にいるという重圧は、思っているよりも辛いものです。
窓際族になりやすい人の特徴4つ
窓際族になる可能性があるのは次のような人です。逆に、これを回避するための努力をしていけば窓際族にならずに済む可能性があるということになります。
1 年数に応じたスキルが大きく不足している人
仕事は勤務年数を重ねる中で要領を得て、スキルを高めて多くの仕事、質の高い仕事ができるようになるものですが、期待されるスキルのレベルから大きく外れて低い人は窓際族になる可能性があります。
2 社内で大きな問題を起こした人
社内で横領や暴力などのトラブルを起こしたことがあり、会社を解雇にはならなかったものの勤務態度やコミュニケーションに改善が見られない場合には、周囲からの信用を失って窓際に追いやられていく可能性があります。こうした人は能力があっても、一緒に仕事をすることを周囲も嫌がり、扱いにくいためです。
3 労働意欲のない人
労働意欲に乏しく仕事をしたがらない、仕事を与えられてもそれをなかなか終わらせようとしない人、誰かにすぐに頼る人は周囲からの信用を失い、仕事も回ってこなくなります。
また、能力はあるにもかかわらず、期待水準よりも低い仕事を続けて行う人も仕事を安心して任せられず、閑職となることがあります。
4 会社に残ることに執着する人
閑職に追いやられたとしても、それでも毎日会社に来ることによって給料がもらえるのだから良しと考えるタイプの人です。会社に残るための正当性を主張するために、出勤時間にきちんと出社し、定時まではしっかり会社に残る傾向があります。転職などのリスクを嫌い、社内に残ることで給与や社会的な立場を残そうと執着した考えを持っている人が多い傾向にあります。
窓際族予備軍かも!注意したい5つの兆候
会社から急に窓際族になるように言われることはまずありません。窓際族になる場合にはいくつかの兆候がありますので、それがあればクビも含めて危ないと思っておくほうが良いでしょう。
1 仕事が急に減る・質が変わる
窓際族になる兆候の代表的なものとして、仕事が急に減るようになります。仕事を求めても、誰でもできる単純な仕事を任されるようになることもあります。周囲は忙しく働いているのに、自分ひとりが浮いたような状態になっていたら黄信号です。
2 追い出し部屋へ配置される
「追い出し部屋」というのは、仕事もほとんどなく、他の社員との接触もほとんどない隔絶した環境のことを言います。もちろん「追い出し部屋」というそのままの名称ではなく、「キャリア開発センター」「~部」など別の名称で表現されますが、本質的に中身は同じです。大幅な減給などが行われたり、部屋の環境も劣悪な場合もあり、会社に残る気力を失わせることを目的にした環境が与えられたら注意です。
3 左遷・出向
通常、転勤や出向というのは戦力が不足していて強化が必要なところに人員を配置します。
しかし、明らかにそうではない環境への転勤(=左遷)や出向の辞令が出た場合には覚悟が必要です。行った先にも仕事があるとは限らず、給与などの待遇面でも悪くなる場合もあります。特に未経験の仕事などが任された場合には覚悟が必要です。
4 無茶なノルマを課せられる
新規の部署が立ちあげられ、その部署に配属され、そこで到底無理だと考えられるノルマを課せられた場合も注意しなくてはなりません。目標未達を理由に仕事を奪われたり、解雇される可能性もあります。
5 退職を勧められる
人事から早期退職制度の案内を受けたり、上司などからキャリア形成などのもっともらしい理由をもって転職を勧められるような場合も、窓際に追いやられていると考えた方が良いでしょう。
それでも窓際族に憧れる若者たち
精神的に社会的にかなり追い詰められてしまう窓際族ではありますが、それでも「働かなくても会社に残れる」というその不思議な立場に憧れる人も少なくありません。
現状、窓際族がいる状態を許容できる企業というのはよほど余裕のある企業であり、給与や福利厚生などの待遇面も悪くない可能性が高く、年数を重ねれば重ねるほど退職金なども期待できるからです。
また、仕事の時間を趣味や自分のキャリア開発、副業に充てることもできるので、自分の時間をたっぷりとることができるということや、そのためにエアコンやデスク、パソコンなど社内の設備やサービスを利用することができることは大きなメリットです。
将来にわたって安心というポジションではないことは重々承知した上で、このような存在になりたいと考える若い人が増えているのは、娯楽や時間の使い方が多様化した現代ならではとも言えるでしょう。
窓際族はもう絶滅している!兆候に注意して
窓際族というのは、決して不労所得を恒久的に得られる安定した立場ではありません。こうした窓際族にトラブルなく対処する研究なども進められており、終身雇用や年功序列のシステムも崩壊している現在では窓際族はもうどこにもいないでしょう。
仮に窓際族になれたとしても、その立場をずっと続けることはできません。きたるべき時に備え、自由な時間に転職準備として知識やスキルをしっかりと身に着けておくことが大切です。
窓際族は一言で表現すると「社会人としてうまくできなかったと評価された人」です。その烙印を押されてしまうと、心身ともに辛い立場に立たされます。兆候があれば自分の働き方を振り返り、評価が変わるように努力して窓際族となることを回避することが大切です。