日本語教師になる方法・仕事内容・やりがいをご紹介
日本語教師という仕事は、普通の学校の先生とは仕事の内容・やりがい・大変さが大きく異なります。働く場所も日本だけとは限らないので、海外に長期間滞在することもありますし、各国を数年ごとに飛び回る可能性もあります。このような非常に魅力の多い日本語教師という仕事について、詳しくご紹介いたします。
日本語教師とは?
日本語教師とは、日本語が母国語ではなく日本語を話したり読み書きが出来ない人に対して、日本語を教える仕事です。日本語を教えるにあたり、日本語の正しい文法についても教える必要がありますし、それを教えるために相手の国の言葉も多少は理解しておく必要があります。日本語を教える過程で日本という国の文化や習慣についても説明・教育を行う必要があるでしょう。
日本語教師になるには?
日本語教師になるためには、どのような場所と立場で日本語を教えるかということによって方法が異なります。
例えば、義務教育である小学校や中学校といった公的な場所で日本語を教える場合には、教員免許が必要になります。また国によってはその国特有の条件が必要になる場合がありますので、働きたい国があるのであれば条件をあらかじめ調べておく必要があります。
一方で、個人的に外国人に日本語教師として日本語を教える場合には、仮に事業としてお金をもらって教える場合であっても、特に資格・検定・免許等が必要ではないこともあります。
日本語を教えるためには日本語が話すことが出来たり読み書きが出来るということだけではなく、日本語についての深い知識や教え方を身に付ける必要があるのです。一般的には独学では難しいため、専門的な知識を大学・専門学校・養成学校に通ったりしながら、日本語という言語について学習や研究を行います。
日本語教師の勤務形態
日本語教師の勤務形態は、どういった場所や立場で日本語教師をするのかということによって多くのパターンがあります。
例えば、正社員として1日8時間、数十人の生徒に対して日本語を教えるということもあり得ますし、契約社員として週に2日程度教えるということもあり得ます。他にも、昼間は仕事をしている外国人が夜に日本語を教えて欲しいという場合もあるため、そういったニーズに応えるために、夜の時間帯に日本語を教えるということも珍しいことではありません。
海外で教える場合には、海外の現地法人に雇われる場合もありますので、そういった場合はその法人との契約内容によって働き方や待遇が日本と異なることも考えられます。
日本語教師の勤務先
日本語教師の働く場所は世界各国にあります。日本語を母国語としているのは日本だけなので、日本以外の国で日本語を学びたいと思っている人がいる場所であれば、日本語教師のニーズや活躍の場所はあるということです。
日本語教師は海外で働いているというイメージが強い人もいますが、働く場所は海外だけではなく、国内にもたくさんあります。例えば、日本に留学している留学生向けに日本語を教えるという場合、日本に仕事でやってきているビジネスマンに対して日本語を教えるなどが代表的な仕事です。
希望する職場をどこにするかは働く人によって違いますが、海外で働くときは数年間に渡り海外で生活することを視野に入れておいた方がいいでしょう。
日本語教師のやりがい
日本語教師には、普通の教師とは違ったやりがいがたくさんあります。
日本語を通して日本という国の文化を伝える楽しさがある
日本語教師の大きなやりがいの一つは、異文化の人に日本語を通して日本という国の文化を伝えるということです。日本語を母国語としない外人は、日本という国を日本語教師から教えてもらう日本語を通して学びます。教え方次第で、日本のことを好きになってもらうことができるのです。多くの人に日本という国を知ってもらい理解してもらうことが出来る仕事という意味では、とてもやりがいがある仕事です。
日本で生きる術を教えてあげるということはとても重要
当たり前のことですが、日本で生活しながら生きていくためには、日本語を話せるということは非常に重要です。日本語が話せないと日本でビジネスが出来る・出来ないという問題の前に、買い物すら満足に出来ないこともあり得ます。
そのような外国人に対して日本語を教えてあげるということは、日本での生き方を教えてあげるということに等しい行為です。教えてもらう立場としては、日本語を教えてもらうこと以外にも、日本の生活で困ったことがあれば積極的に日本人教師に質問して教えてもらうことが出来ます。
このように、日本で生活するために必要な術や能力を、言語を通して教えるという点においても重要な仕事であり、とてもやりがいがあります。
海外で日本語教師をすると多くの国の生活を経験出来る
日本語教師として海外で日本語を教える場合、色々な国で生活をすることが出来ます。日本語を他国の人に教えるということは、他国の文化や日本との文化の違いを理解しながら教えるということになるため、視野や世界観が広がります。
さらに、普通の人にとってはどこの国でも仕事を探せるわけではありませんが、日本語教師は日本語を教えるということが仕事になるので、海外で仕事を探す時に仕事を見つけやすいという利点もあります。
日本語教師の大変さ
日本語教師の仕事はやりがいがある一方で、大変さもあります。日本語教師を目指すなら、大変さを知って覚悟をする必要があります。
日本語を教えるということはハードルが高い
日本語は、他の言語と比較してみても、簡単な言語ではありません。例えば、英語であれば原則として「A~Z」までのアルファベットで全ての言葉を説明することが出来ますが、日本語の場合は「ひらがな」「カタカナ」「漢字」と覚えることがたくさんあります。
更に、英語では自分を意味する「私」という言葉を「I」という単語のみで表現することが出来ますが、日本語の場合は「私」「あたし」「僕」「俺」等、表現の仕方がたくさんあります。
読み方も音読み・訓読みだけではなく、漢字の組み合わせによって変わります。例えば、英語では「apple」と書いて「オレンジ」と読むということはありませんが、日本語の場合は「五月雨」と書いて「さみだれ」と読むといったような変則的な読み方をする言葉がたくさんありますので、教えるのは大変です
日本の文化や習慣を伝えるということが難しい
日本語を教えるためには、日本の文化や習慣はもちろんのこと、海外と日本という国の違いを細かく理解しておく必要があります。
例えば、「五月雨」はなぜ「六月雨」や「七月雨」ではなく「五月雨」なのかということを説明する際、日本人であれば「五月は他の月とは違い、雨が降ったり止んだりすることがだらだらと続く」ということを説明出来ますが、相手が外国人の場合は違います。五月に雨が降ったり止んだりするということは、どこの国でも共通なわけではありません。一年中暑い国もあれば、一年中乾燥している国もありますし、五月にはほとんど雨が降らないという国もあります。
このように、日本に住んでいる日本人にとってはあたり前のことが、外国人にとってはあたり前ではないということがたくさんあります。「五月雨」の例で言えば、日本という国にとっての五月の気候や雨が降ったり止んだりするということから話して理解してもらう必要があるという意味で、日本人に教えるよりも大変です。
日本人の考え方や概念を伝えることが難しい
日本人の考え方や概念は、多くの国で共通していますが、日本人特有のものもたくさんあります。例えば、「物を捨てる」ということはどこの国の人でも行いますので、物を捨てるという概念を外人に伝えることは難しいことではありません。
一方で、「もったいないから物を捨てない」という概念は、簡単には理解出来ることではありません。数年前にニュースにもなりましたが、「もったいない」という概念は日本人にとっては当たり前のことでも、国によっては「もったいない」という概念が無く、言葉自体、存在しない国もあるのです。
日本語教師経験者の声
ここからは、日本語教師の実情が分かる経験者の声を見ていきましょう。
日本のロシア大学で教えました
さくら_あか(31歳)
ロシアの大学、国内の日本語学校で教えていました。ロシアでは、週に6コマほどしか担当がなく、授業準備の時間や学生と交流する時間が十分にありました。しかし、特に勤務時間、休日というものはありませんでした。ですから、現地語を学ぶために大学の授業を取るなどし、充実した日々を過ごせました。
日本の日本語学校では、勤務時間が9時~17時とはいえ、午前に授業があれば8時に来なければならない時があったり、午後に授業があればその引き継ぎをしていると17時をとっくに過ぎてしまい、帰ってからも授業の準備をする必要があります。
その他に名簿、授業日報など書類作成、テストの作成、弁論大会の準備・運営など業務は非常に膨大です。自分の時間はありませんでした。就学生を対象とした日本語学校は、どこも同じような状況だと聞きました。
一方、学生の成長が感じられる瞬間は、嬉しいものです。私が教えた日本語を一生懸命練習して、日常生活で使っているのです。またいつか教えたいと考えています。
香港で教えました
あやめ(40歳)
香港の多言語を教える語学学校で教えていました。勤務時間はシフトによりますが、10時~19時、12時~21時で、休みは月に6日です。主な授業は外国人への日本語授業、日本へ留学を希望する学生のカウンセラー担当(学校選びから賃貸契約など細かいところまで相談にのる)です。
仕事で大変だったのは、授業以外での教材準備や個人のデーター整理・管理に時間を取られてしまい、いつもかなり残業が多かったことです。基本残業手当がつかなかったので(外国人教師だったので、住居手当などすべて込みの給料設定だった)労働した時間の割には、かなり薄給だったと思います。
でも、学生を日本留学へ送り出して、その後「頑張っています」「日本での生活が楽しいです」と連絡を貰うととても嬉しかったです。
カンボジアで教えました
MAME0509(35歳)
世界遺産アンコールワットで有名なカンボジアのシェムリアップで日本語教師として、約1年間勤務しました。平日は午前1コマ、午後1コマを担当し、土曜日は課外授業というルーティーンで、月平均5日前後の休日でした。
私は主に、超初心者レベルの習得者対象の日本語教師だったため、ひらがな、カタカナの読み書きや簡単な挨拶など、日本でいう小学校一年生レベルのクラスを受け持っていました。
東南アジア特有の、よく言えばあまり細かいことを気にしない国民性には度々悩まされました。寝坊したから今日は学校行かない、登校途中で友達に会ったから遊ぶから今日は学校行かないなども少なくなく、「学校とは絶対行くものなんだ」と理解してもらうのが一番苦労したことです。
ですが、日本帰国時、覚えたての日本語の寄せ書きをクラスみんなからプレゼントされたときは、それまでの苦労も吹っ飛び、思わず涙が出てしまいました。最終的には、この地で日本語教師として働けてよかったなと今では思います。
韓国で教えました
こぐま(33歳)
韓国ソウルで日本語教師をしていました。地域のセンターで週に1度、日本語授業のある時にやりました。午後2時から1時間の授業で、地域の奥様たちが受けられるカリキュラムの一つでした。
日本語の教材を元に、基礎から順に教えていき、その中で日本の文化や風習や国民性などの違いを紹介したりしました。
大変なことはやはり韓国と日本と歴史的な問題があるので、ニュース等で過敏になっている時は話題になりやすく、韓国は愛国心の強い国なのでお互いに過敏になってしまい対応に困ることがありました。
良かったことは、文化の違いを通して私も沢山のことを学ぶことが出来る、良い機会になったし、私自身日本についてもっと勉強する意欲がわいたことです。
中国の雲南省で教えました
ソムチャイ(50歳)
日本語教師の勤務地は留学先の中国の雲南省で、月曜~土曜の毎日19時~21時までの2時間教えていました。月・水・金が中級者、火・木・土が上級者向けに教えていました。日曜は休みだったものの、知り合いの語学学校の中国人の先生に自由トークの「日語角(日本語コーナー)」への参加を求められていたので、積極的に参加しました。
授業では主に会話力アップのための授業を行ない、大変なことは質問が多いことと自己中心の生徒が時々現れるので平等さを保つことでした。
日本語教師をしていて良かったことは、先ずその国の人たちの考え方に触れることができることと、日本と中国の比較文化について学べたことです。特にいいと感じるのが、世界でも屈指の勤勉な人たちが多い中国では生徒のやる気に引っ張られ、教え方の工夫やより良い教材を探すなど自身も成長できたことです。
シンガポールで教えました
ayu(47歳)
シンガポールの日本語学校で教えていました。フルタイムの場合、勤務時間は週40時間程度(うち半分は授業時間)でした。授業はだいたい平日の夜と週末にあるため、それに合わせてそれぞれシフトを組んでいたので、出勤時間や退勤時間はバラバラでした。週休1日(平日)の他、年末年始の休みや有給休暇もありました。
日本語教師の仕事内容は、授業の他、副教材・絵教材の作成などを分担して行っていました。一口にシンガポール人と言っても中華系、マレー系、インド系と分かれており、それぞれの宗教や文化、生活習慣の違いなどにも配慮しなければならず、大人数のクラスを担当するのはとても大変でした。
一方でアニメ好き、旅行好き、アイドル好きなど、楽しみながら趣味で日本語を学ぶ人が大部分だったので、教える方も楽しく授業をすることができました。日本語を通じて自分自身が日本語の美しさや日本の良さを改めて知ることができたのは、大きな収穫だったと思います。
日本語教師には一般の教師とは違うやりがいと大変さがある
日本人で日本語を母国語として普段から話していれば、日本語を教えることは簡単であると考えてしまいがちですが、それは大きな誤解です。日本人にとっての当たり前を、当たり前では無い人に教えて理解してもらうということは大変なことです。考え方によっては、日本人に普通の勉強を教えるよりも難しい場合も多々あります。
だからこそ、その分やりがいもたくさんある仕事といえます。興味を持っている方は是非、日本語教師という仕事を目指してみてください。