通訳の仕事内容を知ろう
通訳という仕事を大まかに説明すると、言語が通じない人々の間に入って、双方の言葉を翻訳して会話させるということです。国際化が進む現代では、活躍の場が広がり需要が高まっている職業です。今回は、通訳の仕事内容、やりがいと魅力、辛さや大変さを紹介します。
通訳の仕事内容とは
通訳の仕事と一口に言っても、内容は様々です。今回は、通訳の主な仕事3種について説明します。
同時通訳の仕事内容
通訳者が、話している人の言葉を聞くのとほぼ同時に通訳することを「同時通訳」と言います。国際会議や記者会見といった、スムーズに進行させたい場での仕事が主になります。
話している外国語をその場で聞き取って意味や微妙なニュアンス、言いたいことを理解して、受け手に通訳していくことが求められるので、高い語学力はもちろん、話しながら聞いて翻訳するという高度なマルチタスクの技術が必要になります。正確に聞き取り、正確に翻訳するためには高い集中力も重要なので、重要な会議では2~4人で10~15分ごとに交代して回していきます。
逐次通訳の仕事内容
話者が短く切りの良い所まで発言し、その発言した分をまとめて通訳する方法を「逐次通訳(ちくじつうやく)」と言います。メモ等にまとめた後に通訳する場合もあるため、普通に会話するよりも約2倍ほど時間がかかりますが、正確な通訳が出来るというメリットもあります。
同時通訳よりも瞬発力の面では楽ではありますが、正確性や完成度の高さが求められます。商談やセミナー、ワークショップのような、相手へ正確に情報を伝えられる場面での仕事が多くなります。また、1回の仕事で同時通訳と逐次通訳を依頼されることもあります。
ウィスパリングの仕事内容
同時通訳・逐次通訳は、通訳者が別室で話者をモニタリングし、機械を通して通訳した内容を聞き手に伝えるのが主ですが、「ウィスパリング」では通訳者が話し手と聞き手のいる場に立ち会います。
ウィスパリングとは英語で「ひそひそ話」「囁くような」という意味であることから分かるように、通訳を必要とする人の耳元で、他の方の邪魔にならない程度の小声で通訳することを指します。ほとんどの場合、同時通訳になるので10~15分ごとに通訳者は交代することになります。耳元で通訳することになるので、通訳の必要な人が1~2人と少人数の場合の会議や商談が主な仕事場になります。
「通訳者」のやりがい
通訳者はそのほとんどがフリーランスで活躍しています。なぜかというと正社員の枠が少ないというのもありますが、実力次第では自分のやる気次第で一般的なサラリーマンよりも稼げるというメリットがあるからです。もちろん、企業に正社員として雇用されている通訳者であれば、フリーランスがなかなか経験しにくい海外大手企業の買収合併の同時通訳を任されるということもありますので、どちらが良いとは一概には言えません。
しかし、通訳という仕事の醍醐味は異国間のコミュニケーションを円滑に進めることにあります。互いの言語が通じなくて困っている人たちの間に立って、意思の疎通をスムーズに進められると通訳者にとって大きな達成感となります。
通訳者というのは、言語を学ぶと同時にその国の文化も学びます。例えば「善処いたします」という日本語は、本当に善処する時と遠回しに嫌だと伝えていること場合がありますが、「No」をハッキリ言わないという日本人の特性を知らない人は額面通りに前者の意味を伝えてしまいます。しかし日本の文化を知っている人は、発言者の態度や前後の言葉から感情を読み取って正しい意味に翻訳していきます。
話し手と聞き手の文化的背景、高尚な文学的表現から若者言葉までの単語や文法、日々これらを学び、さらに経験をしていくことで理解が深まり、通訳者としてのスキルアップが実感できるでしょう。通訳の質が上がれば更に活躍の場が広がり、やりがいも大きくなります。頑張れば頑張るほど、文字通り身一つで世界を舞台に活躍できるようになるのも通訳という仕事の魅力です。
「通訳者」の大変さ
日本語は曖昧な表現が多い言語と言われています。日本は単一民族なので、曖昧な意味を持つ言葉を使っても同じ日本人であれば文脈や雰囲気で相手の本当の気持ちを推し測る事が出来ます。しかし、海外との外交や商談の場でははっきりと言わなくては通じません。
例えば、日本人が「前向きに検討いたします」と発言した場合、通訳者はいちいち結論がどうなのかを確認しなくてはいけません。もし通訳者が勘違いしたまま翻訳してしまうと、双方の意見が食い違ったままビジネスや外交が進んでしまい、解決するものも解決しません。曖昧な表現をする日本語の翻訳の仕方は、通訳者の大きな悩みのひとつです。
商談や会議などビジネスシーンで通訳を行う場合、微妙なニュアンスを上手く伝えなくてはいけません。ちょっとした意味合いを伝えきれなかったせいで、その後の商談や会議がまとまらなかったというのは珍しいケースではありません。これは経験がものをいうことですので、沢山失敗をしたり壁にぶつかったりすることで、生のビジネス実務を身に着けていきましょう。
また、通訳者はあくまでも通訳することが仕事ですので、中立の立場をとらざるを得ません。しかし、そのために雇ってもらっている会社から「お前はどっちの立場なんだ」と苦情を寄せられてしまうこともあります。
通訳の仕事内容体験談
通訳に必要とされるスキルは柔軟性と対応力
MiiMii(33歳)
フリーランスの通訳として活動しているので、商談通訳からアテンド通訳、会議通訳や不動産関連の説明会での通訳などを行っています。商談ではそれぞれのビジネスの売りを通訳し、アテンド通訳では通訳以外にもホテルの予約や電車の乗り方のサポートなど、仕事内容は多岐に渡ります。
決まった勤務時間は特になく、お客様のニーズに答えて柔軟性を持って対応しています。アテンド通訳の場合は特に、早朝からの視察に同行して通訳をすることもあるので時間はまちまちです。休日は月に6日ほどは確保するようにしています。
仕事をしていて大変なことは、人の2倍、3倍話さなければならないので、顔や首回りの筋肉が凝ったり喉が渇いたりすることです。また、事前に資料などが貰えない場合は、業界特有の言い回しや略語の知識がないまま臨むことになるので、かなり緊張します。
しかし、通訳の経験を積んでいくなかで、自分の知らない業界や世界を覗かせてもらえるので、毎回学ばせていただいています。言葉というツールを使ってコミュニケーションの橋渡しができるのが、通訳という仕事の一番の醍醐味です。
マーケティング部付き通訳
ymama(40歳)
普段はマーケティング部に所属しているので他の正社員の方と同じ勤務形態で、勤務時間は9:00~17:30までで、週末は休日でした。アメリカとの電話会議がある時やアテンドが必要な時に通訳をしています。
通訳の内容はIT関連の営業・マーケティングに関する会議通訳が主で、その他にアメリカからの担当者連れて既存顧客を訪問することもありました。
仕事で大変なのは、自分の専門から少し外れた場合を想定して、下準備をたくさんしなければならないことです。専門用語の単語帳を作ったり、その分野の本を読んだり、資料を調べたり、下準備には時間をかけました。その分、自分の専門以外の知識も身に付き、知見が広がったことは大きな成果だと思います。
通訳の日常
のりお(38歳)
私の会社では9:00~18:00が通常の勤務時間でした。 正社員として忙しく働いていたのですが、プライベートの時間は十分とれていました。休日は土日祝日および一般的な盆と正月です。他に年に数回年休もとれました。
私の業務内容は、クライアントとの会議に参加し英語を日本語に同時通訳する仕事を行っていました。なお、同時通訳は集中力が肝だと感じます。一字一句逃さず聞き取り、いかに要点を漏らさず訳すかが勝負ですから、会議の時はかなり緊張感を高めていつも参加していました。
なお、通訳生活の中での達成感を感じたのは、海外M&A(合併買収)案件の契約締結の一助となれたことです。もちろん意思決定者にはなれないのですが、意思決定にかかわる会議内容を正確に聞き翻訳する魅力は何物にも変え難い経験となっています。
過去の通訳体験について
スポーツおじさん(49歳)
私は過去に、単発の日雇いで何回か通訳の仕事をさせていただいたことがあります。就業時間は各仕事によって異なります。ほとんどが朝~夕の仕事でしたが、深夜にずれ込むこともしばしばありました。
仕事内容は、政府系財団の職員の海外出張に同行して現地における移動のお世話から、訪問相手先の団体や個人と面談する際の通訳が主な仕事でした。具体的には、先方の意向や希望を聞き取り、職員に伝えることです。
苦労したことは、専門用語や言語の持つ微妙なニュアンスの訳し方です。あとは、日本語には無い言葉、あるいは外国語にはない日本語を示す単語をどう相手に伝えるかに悩みました。文化、生活習慣の違いから生まれる差異を、どうやって正しく双方に伝えるかということに注力しました。
通訳をして良かったことは、異なった言葉を使う人同士でも通訳者が上手く訳すことで、相互理解が深まったときです。友好の架け橋となれたことを実感できます。
通訳の責任感とやりがい
カウル(32歳)
私は貿易会社で正社員として勤務しており、通訳の仕事をしていました。勤務時間は9:00~18:00で土日祝がお休みでしたが、休日に商談会やイベントが重なったときは出勤し、後日に振替休日がありました。
具体的な仕事内容は、日本企業と韓国企業の商談会の通訳で、ビジネスに直結するとても重要な役割を担っていました。扱う製品は食品や生活用品、機械やその部品など多岐に渡るため、専門用語を含んだ内容を通訳するときはとても難しかったです。会社の利益に繋がることも、不利益を被ることもあるため、いつも責任感を持って通訳に臨んでいました。
通訳をしていて良かったと思う瞬間は、企業の担当者からまた通訳の依頼を受けるときです。通訳もビジネスの一員として認めてくれたと感じるからです。
通訳と実務
もも(40歳)
勤務時間は、通常の企業と同じように午前9時から午後6時まででした。平日のみの出勤だったので、土日祝の休日は自由に使うことができました。
正社員として採用され、外国人の上司をサポートする傍ら実務を行っていました。新規案件に対して、外国人上司が日本の実務に明るくない状況だったので、一次対応を私が日本語で受け、それを通訳して意思の疎通を図り、上司からの依頼を処理するという仕事です。
外国と日本の商慣習はビジネスをする上で違いがあり、両者の板挟みになりながら、それぞれの作業が滞りなく進むようにするのが大変でした。ただ言葉を伝えるだけでなく、その理由をきちんと説明して両者が納得をして仕事ができるための潤滑油としての役割が大きいと思います。
言葉を通訳するだけではなく、本質的に両者を繋ぎ、しっかりとしたチームを作り上げる役割も担っているのかなと思いながら通訳としての業務をしていました。この人はこういうことを伝えたいのだなと、心の中を汲み取るところまでできると仕事が順調に回っていくように思います。うまく仕事が回るととても嬉しくなり、通訳をしてよかったと思います。
基本は事務員、たまに通訳。
事務の花子(40歳)
普段は9:00-15:00で働くフルタイムの営業事務なので、カレンダー通りの祝日が基本です。海外との取引がある会社なので、来客や電話の際に呼ばれます。
主に商談の通訳ですが、お客様を連れてお買い物に行ったりお食事に同席したりするので、勤務時間外や休日出勤もたまにあったりします。通常業務の方が疎かになってしまっては本末転倒ではありますが、その辺は加味してもらっているので残業することはありません。
年に一度くらい海外出張もあり、展示会などへの出席・立会いでずっと立ちっぱなし、喋りっぱなしなので体力的に少しキツイです。
自分には意思決定権はありませんが、気持ちよく商談が決まると、密かに自分の手柄だと思って嬉しくなります。
通訳の仕事をして
みんみん(21歳)
私は、朝の8時から夕方の17:30まで正社員として働いていました。休日は基本的に土日で、月に6日ほどです。派遣会社で通訳をしていて、主な内容は仕事内容や会社のルールを説明することでした。通訳者は私しかいなかったので、引っ張りだこで大変でした。
通訳のお仕事をしていたことで、派遣会社のお仕事以外でも通訳する相手と仲良くなったり、「これはなんて言うの?」と聞かれたりしたときに、勉強を頑張って良かったと感じます。
通訳の仕事内容は日本の文化や魅力を伝えること
近年特にグローバル化が進み、通訳の需要は高まっているといってもいいでしょう。訪日観光客は、2015年は16,969,126人、2016年には21,049,676人とその数を増やしており、通訳案内士のような外国人観光客相手に日本の観光地や文化、魅力を伝える仕事もあります。
また、ビジネス目的で日本を訪れる外国人も2016年には1,701,902人と、2015年に比べて60,602人と観光客ほどではありませんが緩やかに増えてきています。将来、ビジネスシーンでの通訳者のますますの活躍が期待されています。