ファシリテーションは無駄な会議をなくすためのスキル
ファシリテーションやファシリテーターという言葉をご存知でしょうか。現代においてこの言葉は、混迷とした時代を切り開く突破口になりえます。
今日において「ファシリテーション」というものは、企業を初め福祉や看護といった多くの場で用いられており、総じて需要は高まってきています。今回はそんなファシリテーションについてご紹介します。この記事をもとにファシリテーションの有用性に興味を持ってみてください。
ファシリテーションとは
皆さんは、ビジネスのミーティングや打ち合わせ等で「今回の会議は意味がなかった」という思いをしたことがありませんか。予定では1時間だったのに、フタを開けてみたら2時間を軽々と超えるほど円滑に進まず、あまつさえ何の結果も出なかったなんてことになってしまえば、次のミーティングへのモチベーション等にも悪影響が出てしまいます。
円滑に効果的な会議をサポートすること、これが「ファシリテーション」です。また、ファシリテーションを行う人のことを「ファシリテーター」といいます。
ファシリテーションとは中立的な立場から参加者の発言を促したり、出された意見をまとめたりすることで目標達成を目指すものです。それぞれのアイデアを単なる点として見るのではなく、線で結んで平面や立体として物事を感知することで、新たな解決策やアイデアを生み出せます。
つまり、ファシリテーションとはまとまらない現状に新たな視点を取り入れられる役割や機能、もしくは実行できるスキルといえるでしょう。このような技術を持ち合わせていない場合、これからのビジネスにおいて常に後手に回ることになり、ビジネスマンとして非常に危うい立場に追い込まれることになります。
ファシリテーションで会議を導くファシリテーターの主な役割
大学や企業でファシリテーターと自称して活動している方がいますが、上手くいかず悩んでいる方も少なくありません。実は、その原因は本当にファシリテーターの役割を理解・把握出来ていないことにあります。ファシリテーターの役割を正しく理解し、円滑で効果的な話し合いを進めていきましょう。
ファシリテーターの役割は主に4点です。ファシリテーションで現状を打破しようと考えている人は、ぜひ頭に入れて置いてください。
ファシリテーターの役割4つ(注1)
- 中立
- 出しゃばらない
- 聞き役に徹する
- サポートする
ファシリテーターはあくまで中立的でなくてはなりません。意見のどれかに肩入れしてしまうと、本当に価値のあるものや最良の組み合わせを見逃してしまうからです。
中立であるためには出しゃばってはいけません。もしファシリテーターがリーダーのような働きをしてしまうと、意見を引き出す側ではなく発言する側へと変わってしまい、本来の役割から逸脱することになります。発言者ではなく、あくまで聞き役に徹する姿勢を持ち、リードしないことが必要です。
とはいえ「上手い聞き役」というのも難しいもので、ただ会議の内容を聞いているだけでは良いファシリテーターとはいえません。感情的になり過ぎたり、反対に意見もアイデアもまったく出てこなかったりする会議を、最後には皆が納得出来る結論が下される実りある話し合いにするのが「良い聞き役」です。
そして、ファシリテーターの一番重要な役割はサポートすることです。議論をただ聴いているだけでなく、設定された目的達成のための案内人になることが重要なのです。だからといって案内人が迷子にならないような無難な議論をするのではなく、どのような会議でも目的を見失わずに話し合いを進めていかねばなりません。
意味のある会議にするためにファシリテーターがすべきこと
さて、ファシリテーターの役割については大体お分かりいただけたでしょうが、ファシリテーションを行う上では何に注意してファシリテーターを選べば良いのでしょうか。
誰でもいいなら、そこらを歩いているヒマそうな人を捕まえて頼めばよいでしょう。しかし、そうはいきません。なぜなら、ファシリテーターには会議をする中でも特に重要な役割を担っているため、それ相応のスキルが必要であるからです。それに誰でもいいなら、毎回会議で意味のない時間を過ごすこともありません。
ファシリテーションといっても、その内容を一概に決めることは困難です。議題は何なのか、何が最終目標なのかといったことでファシリテーションの内容は大きく異なりますが、どのテーマでも使える良いファシリテーターのポイント4つをまとめてみました。
会議の概要をまとめたメモを作る
まず、会議時間やその会議の目的など基礎設定をまとめておくことが必要です。案外、この点を確認するだけで無駄な時間や話し合いそのものを省けます。
そして、会議内容を理解しておく必要があります。企業であれば予算、可能日数、外部との関係など、考慮すべき様々なことがありますから、それらを踏まえた議題概要をA4サイズの紙1枚にまとめておくと、議題に戻りやすく議題からの逸脱を防げます。
良い意見が引き出されるように導く
ファシリテーターにはしっかりと聞く力が必要ですが、他にも「相槌のタイミング」「復唱」といった傾聴力、「意見を聞き出す」質問スキルが重要となります。
質問には「犬か猫か」「ハイかイイエか」というような答えを選ばせるクローズド・クエスチョンと、「どれがいい?」「何が問題だと思う?」という相手の意見を訊くオープン・クエスチョンがあることを意識すると良いでしょう。
アイデアが出ている間は聞く力と相槌のタイミングを読むスキルを使って相手に話をさせて、発言していない人には質問をして意見を聞き出し、「つまり~」「ということは~」と相手の言葉を復唱したりまとめたりする…このように、発言者の意図や目的を聞き取り、目的達成のためのキーワードやセンテンスを聞き出すのが、ファシリテーターとしての役割です。
会議の内容を可視化する
聞きたいことが聞けたら終わり、それならただのアンケートです。集めた情報は皆で正しく共有しなければ、後で意見や認識の食い違いが生まれてしまいます。「情報を伝えたから共有した」と思わず、「情報が相手に正しく伝わったから共有できた」と意識しないと、後々大きな失敗に繋がってしまう恐れがあります。
後悔をしないためにも、内容の可視化が重要です。
ただ言葉を言っても意味を正しく理解することは難しく、大抵は「分かったつもりになっている」ことが多いです。提示された情報は出来れば、図やイラストといった目に見える形にしておく必要があります。
絵が苦手な方や、抽象的な情報の場合は文字でも構いません。あくまでも大切なことは、情報を頭の外で表現できるかです。インプットした後にアウトプットを行うことで、漠然とした内容をより明確に出来ます。目に見える形で認識を共有することで、誤解や勘違いを減らせます。
会議が終わったら全体構成を確認する
最後に、話し合った内容が実現されることになった時の全体構成に違和感はないかの確認が必要です。すべての内容を整理した際に、設定した判断基準からは外れてしまうものや企業の状況にそぐわないものがないかをチェックします。
予算、可能日数、外部との関係などを考えることが重要です。「無理は無いか?」「関係のないことが紛れ込んではいないか?」といったことを、改めて意識しながら見直しましょう。
ファシリテーションで会議を行う際の注意点
実際のファシリテーションを用いた会議では以下の3点について気をつけていただきたいと思います。
ファシリテーションでの注意点3つ
- 時間を守る
- 内容はホワイトボードなどにまとめ、消さない
- 本当に必要な人だけを参加させる
時間は必ず守る、社会人としての常識です。1時間と決めたなら、1時間以内に話し合いの決着をつけましょう。時間内で決まらなかったからと、延長をしても弛むだけですので、すっぱりと止めてしまいましょう。時間内に収めるために、ファシリテーターは「あと10分で終了ですが、みなさんいかがでしょう」などと声かけをして、まとめの時間であることをアピールすることが必要です。
また、せっかく出された意見や資料を消さずに、残しておきましょう。会議が何回か続くようであれば、ホワイトボードに書いた内容をスマホで撮っておくと消されても見返せます。
最後に、会議に必要な人だけを集めましょう。沢山人がいると、様々な意見が出るような気がしますが、その分ノイズも多くなり混乱しやすくなるので、適切なメンバーの身を集めてください。このとき、部署や部門にこだわらずに必要な人を集めるのがポイントです。
意味のある会議にするにはファシリテーションが大切
富士ゼロックスやOffice123など、すでにファシリテーションに力を入れている会社は数多くあります。もちろん大手企業だけでなく、幅広い場でファシリテーションを使っていくことで目的達成のための有意義な話し合いが可能になります。
現在は技術の進歩や国際化などにより、ビジネスもかなり緻密で複雑な局面にあり、事業を現実化するために合理的な進行は重要になっています。
参考文献