出世したくない人が増加している理由
出世したくない人が増えていますが、仕事をする以上は出世を狙うが正義というなかつての価値観は崩れてきています。出世したくない理由は責任を負うのが嫌だから?社会人として成長していない未熟な若者だからでしょうか?出世を追って得られたかつての幸せも今では仕事の意義と結びつきにくいのです。
出世したくない人が増えている
「出世したくない症候群」という言葉を聞くようになった程、20代から30代では「社長にはなりたくない」とか「出世したくない」という人が増えています。
会社に長く勤めていればそれだけで出世できた昔と比べて、今は実力が物を言う社会になりつつあります。ですが、いわゆる年功序列で成り立つ組織や「成功には苦労ありき」といった価値観の転換期でもある今、「管理職、中間管理職はつらい」というイメージはなおいっそう濃厚となり、若い人たちが「仕事」に夢を見難くなっているのかも知れません。
また、時間と労力を費やし得る「出世」や「権力」が、果たして「幸せ」なのか?といったところも、疑問視する若い人たちが増えています。
出世したくない理由とは?
20代から30代にかけての出世したくない理由は、その状況によって様々だと思いますが、若い人たちは、どうして出世に夢を見られなくなっているのでしょう?
仕事は人生で重要な立ち位置を占めます。仕事に割く時間も大きく、その中で何を成し遂げたいかは、自分の人生を豊かにします。
キーは、何をもって幸せと感じるか?というところにあります。単純に「出世」や「権力」を追って、仕事に時間と労力を費やし、精神をすり減らし、常にバイタリティを持ってビジネスに挑むのは難しいことです。
そこに幸せがあるならば、まだモチベーションを保てますが、生活も多様化する現在では家庭を築き守ることだけがステータスではなくなっている以上、出世や権力に対し夢は持ちにくいのではないでしょうか?
出世したくない理由、具体的には一体どんなものがあるのかを見ていきましょう。
社会人として成長しきっていない
新社会人から社会人数年目の人が、長い人生を考えずに出世するための努力を惜しむだなんて要領が悪いと思われがちですが、実際、社会人として成長しきっていないことが「出世しなくても良い」という認識につながっている面はあるかもしれません。例えて言うなら、学生の頃に周囲の目を気にして学級委員に立候補しないような心理状態、と言ったところでしょうか?
今勤めている会社で出世しても将来性が感じられない
社会人を10年ほど経験した人なら、近い将来の生活のため資産運用を視野に入れ始める人もいることでしょう。ですが、これが出世欲と結びつくかと言うとそうでもなく、自分の会社の経営状況もある程度見え不安を抱えたり、今の会社では自分の能力を十分に発揮できていないと感じるなら、現在の仕事で出世するのではなく、転職やほかの方法に意識が向くかもしれませんね。
出世と引き換えに今以上の責任を負いたくない
社会人になると自分の行動には責任がつきものです。
責任は管理職だけが有するものではなく、就職し、戦力として仕事をする上では誰しもに責任が発生するでしょう。単純に「責任を負いたくない」という理由は、会社にぶら下がっていたいと言っているのも同然の甘えた状態です。
ですが、先にも述べた通り、管理職に問題がある場合は、これを単純に否定することは出来ません。
出世と引き換えに「今以上の責任」を負わされ、甚大なストレス下で命すらも危機にさらされてしまうケースもあるのです。出世の先にあるものが甚大なストレスであったなら、出世したくないと考えるようになる人が増えても仕方がありません。
仕事よりも休日が大切
休日出勤や恒常的な残業・・・かつての日本では当たり前とされ、現在もなお見て見ぬふりされがちな定時を超える勤務時間も大きな問題です。
人間が健康的に人間らしく生き、翌日の仕事に挑むためにも心身を健康に保つには休日は必要不可欠。しっかりと休息を取ることは業務時間の仕事効率化にも非常に大切ですが、ただ働けばいいという価値観が根付いている日本企業においては、残業が正義とみなされることが少なくなく、先輩や上司より早く帰ったら咎められたという話も聞きます。
短時間で効率的に仕事をすることを否定されるような組織では、幸せの条件である社員の健康など守れませんし、出世したら家に帰れなくなってしまう・・・こんな状況を望む人などそうそういません。
また、残業代が払われているのならまだしも、サービス残業もざらではありません。残業代が支払われない強制的なサービス残業や人を人とも思わない残業スケジュールはお断りしてちゃんと帰りましょう。
出世よりも育児を優先したいと考える女性が多い
女性が出世したくないと思う理由には、まず第一に子供のことがあげられるでしょう。
30代になったら子供が欲しい、仕事より育児を優先したいと考える人も少なくありません。
また、男社会の企業形態の中にいて女性であることで理不尽な経験をしているのなら、これ以上のストレスに耐えられないということもあるでしょう。身近に出世している女性が特例すぎるのなら、真似し難いというのもあるかもしれません。
出世したくない人が増えているのは「出世」に意義がないと思うから
以上のような理由があり「出世したくない」と考えるには、仕事に取り組み成功する意義が持てていないとも考えられます。仕事を「何のためにするのか?」というところに仕事に取り組む意義があるのですが、かつての出世の価値にはモチベーションは保つだけのメリットはもう存在しないのかもしれません。
出世することを幸せと感じない
従来までは、出世するとどのようなメリットがあると考えられていたのでしょうか?
高価なものを食べたり、ブランドものを購入したり、土地付き一軒家に住んでドイツ車に乗って、子供に高度な教育を受けさせることがステータスとして力を発揮していたときは、プライベートの「幸せ」と「仕事での成功」が結び付きやすかったと言えます。
出世し給料が上がり、会社での自分の地位が上がると、人脈も広がるし、大きな仕事での決定権も得られ、権力を有し、社内の経営や人事に関しての情報も「早く」「詳しく」「正確に」得られることができました。
しかし、このような目に見えるかつての幸せが、現在では「幸せ」として通用していない面があります。人の求めるものが変わった今、仕事での成功が一概に出世とは言えないのです。
出世のメリットよりもデメリットが大きくなっている
出世するデメリットを考えてみましょう。
かつては出世には年功序列が大きな要因となっている面がありましたが、現在では実力によるところもあります。つまり、日々の勤務態度に出世につながる要素はなくなってきています。漫然に朝出勤して残業して・・・といった姿勢では、ただの労働者と化してしまうでしょう。
そんな中、自分をコントロールし、ストレスと戦い、日々勤め上げて出世したとします。ですが、管理職に待ち受けていたのは、部下のミスで頭を下げたり、より上の上司から責任を押し付けられるといった出世で得られる権力に酔う暇もない新たなストレス・・・そんな話があまりにも多いなら、「出世しても報われない」と思ってしまっても仕方がないのかもしれませんね。
出世は、上の評価により決められるものです。ちょっとやそっとの努力や気遣いで成し遂げられることではなく、そこまでには報われない努力も大半を占めることもあるでしょう。努力が報われなくても意義があるのなら良いのですが、そうではない場合はモチベーションを保てません。
上に認められることが前提の「出世」だけを目標に掲げてしまうのには、仕事にのまれ会社にのまれてしまうフラグでもあり、自分の人生の豊かさを考えたときにリスキーと言えるのではないでしょうか?
出世したい人としたくない人は「幸せ」の価値観が違う
仕事は人間が生きていくうえで誰しもに大切なものですが、より大きな成功を求めて取り組む人とそうではない人は必ずいます。出世したくない人すべてが「毎月お給料をもらえていればOK」と考え会社にぶら下がっているのではなく、それぞれ大切なものが違い、何が幸せかも違うのです。
出世したくないから、と一概にその価値観や人間性を否定することはできません。大切にすべきは「何のために働くのか」であるといえます。これがない人は、ただ責任を追いたくないから出世したくないのではなく、どんなふうに生きていきたいかを一度真剣に考えてみると良いでしょう。
「出世したくない」と思った筆者のエピソード
私自身、社会人5年目まで「出世したい」と考えるタイプでした。給料がたくさん欲しい、周囲に羨望の目で見られたいというより、純粋にスポーツのような感覚に近く、自分の能力を活かしたいし認められたい、またその先に幸せがあると考えていました。当時の私は長時間残業も早朝出勤も祝日出勤も苦ではありませんでした。
私の出世欲が消えたきっかけ
ガリガリと仕事に取り組んでいた私にも転機がありました。あるとき仕事や飲み会で推定年収1500万円以上を得るようになった、いわゆる出世した人の身近な方に話を聞く機会があったのです。
Aさんの話
一人目のAさんは、世界的にも有名企業となった日本法人の社長だった方のお子さんでした。
いわゆる2世というわけではなく、その方もお父様と同じような業界に所属しており、業界が狭いのでなんとなくばれた、という感じでした。
その方の仕事の姿勢は地道な感じで、得意ではなかった英語も仕事で必要に迫られて、日々努力して身につけていました。社長であったお父様については、「あまり家にいたことがない」そうで、親への尊敬の念や反発心などは感じられず、赤の他人に近い存在のように感じました。仕事での成功は一目置いている所はあれど、特に目標というわけでもない様子が印象的でした。
Bさんの話
二人目のBさんは、比較的若い世代のベンチャー企業経営者でした。
その会社は確かに急成長したのですが、実業家に必要であろう知識力や人脈や発想力などの突出した能力を持つ天才肌という評価を一度も聞いたことはありません。むしろ、誹謗中傷に近く事実ではない部分もあるのでしょうが、違法に近いことでのし上がり、そのうち訴えられるのではないかと一部で囁かれていました。
この二人をきっかけに私は自分の出世欲にとても疑問を抱くようになりました。二人には色々な事情があり、私の情報収集に偏りがあったかもしれません。しかし、これが「出世=幸せ」ではないと認識するに至ったきっかけであることには違いありません。
出世しなくても安定できる職を探した
会社員生活に慣れてきた私は、出世しなくて安定できる方法を模索しました。
一つめは公務員への転職です。出世しなくても安定して仕事があり、定年まで勤められそうだと思いました。
現在は公務員で社会人を経験した人向けの採用の募集が増えてきています。経験者採用対策用の通信講座もあります。
受験自体は無料なので倍率は高めですが、35歳位までなら年齢制限を気にせず、都心なら年間10回程チャレンジできることも。地方都市の場合でも一次試験は東京都内で実施を行うこともあります。
試験日は7月から9月の土日に集中しているので試験日が重なったり、近隣の地方自治体では試験日を合わせていたりしますのでスケジュールを管理していきましょう。
会社員を続けながら公務員採用に向けた活動は大変!
会社員を続けながら大変だったのは試験勉強だけではなく、応募に必要な書類の準備でした。
会社員としての仕事ではトラブルや小競り合いがありそれらが大きなストレスとなってのしかかります。そもそも会社員から公務員へ転職したいと考えているのは心身ともに疲れがたまっていたからなのですが、そうした中で書類を用意するのはなお一層の負担となりました。私の場合は3年間試験会場まで行き着いたのは6回程度でした。
運良く、書類試験や筆記試験は受かり、面接に進んだのは、湘南方面の地方自治体でした。私がその地方自治体に応募したのは、趣味が水泳だったので、海で毎日のように泳ぎたいと思ったからでした。
面接で感じた不信感
地方出身で社会人として上京した私にとって、湘南方面も都心と変わりない華やかさがありましたが、お洒落な飲食店に行くのは飽きていたので興味はないし、どうしても欲しい物はインターネットで済みます。
面接の際に、都内に住んでいるのになぜここを受験したのかと聞かれました。私は3年前まで横浜市内に住んでいて土地勘があるし、ここに住みたいからと伝えました。
「試験に受からなくてもここに住むのですか?」即座に他の、その中では一番権限を持っている面接官がまた同じようなことを聞いてきました。「上京してきて10年都内での生活スタイルができているのに」面接官はついさっきの私の話を聞いていませんでした。これには、単なる誤解とかではなく、何としても落としたいのだなという感じがしました。
それならば書類の段階で落としてくれれば、他の地方自治体の試験を3回受ける機会があったのに・・・。出世しなくても安定したいという腹を抱えての選択ではありましたが、仕事をする以上双方の信頼が大切であることには変わりありません。私は公務員の経験者採用試験自体に不信感を持つこととなり、それ以降は試験を受けるのをやめました。
土日の副業での体験
公務員への転職を辞め、新たに収入を増やす方法として実践したのが副業です。そこで、土日は無資格でできる医療機関でのアルバイトに行きました。
最初のひと月は体調管理と仕事を覚えるため、平日の本業を定時退社したものの、仕事内容は単純で苦ではありませんでした。本業と比べて職場環境の条件が良く、チャンスがあれば、社員として採用してほしいと思う程でした。労働時間を考えると実質的な時給は、採用時に提示された時給より50円程下がりました。本業の会社員での仕事内容と比較すると、人とそれ程関わることもなく、体力的精神的な負担は少ないものでした。ですが、結局、半年程で自主的に辞めることとなりました。
アルバイトをやめた理由
最大の理由は同じアルバイトの年上の女性でした。彼女は今までずっと専業主婦のようでした。私が会社員として勤めていた中で身についていた、他人がミスしたことを補うという習慣を不満のようでした。
自分のことも不十分なのに、他人の粗探しばかりしていると患者さんの前で大声をあげて訴えました。他にも仕事のやり方を巡って、しょっちゅう怒鳴りちらしてきました。ときには怒鳴っていること自体が私のせいだと依存的な文句を言われることも。
応戦することも考えましたが、本業に影響するのでは本末転倒です。採用面接時に、組織で働くことに慣れている私に長く働いて欲しいと語っていた、管理者達は見て見ぬ振り。私には副業であるこの仕事を続ける理由もありませんでした。
経験を通して得たものは「出世が人生のすべてではない」
この苦い経験から、本業を会社員として働くのなら、そこで身についてしまった習慣が会社員以外の人には通用するわけではないことを学びました。自分なりに仕事で得られた教訓から導き出した習慣を、年上の全く違う人生経験の人から否定されたときは対処に困るし、そのまま変なトラウマとなり、本業に差し支えることもあるということでした。
この土日の副業で得られたメリットもあります。金銭面では少し貯金が貯まったことです。日中家にいないので、半年で8万円程必然的に光熱費が節約されました。
また、本業での同僚達のさりげない気遣いにも気づき、もっと低姿勢で人に接した方が人間関係はうまくいくことを学びました。アルバイトをやめるきっかけでもあった彼女にも、随分酷い目にあわされた反面で、人と波風を極力立てたがらない私に、多少人と揉めても時にはもっと発言して前に出る大切さを教えてくれました。
現在では無理のない範囲で本業を続けながら、別の副業を続け、なんとか平穏な日々を送れています。
出世したくない人は出世よりもっと大切なものがある
会社員である以上は、ある程度出世した方が仕事のやりがいを感じる機会や、人との出会いによって得られるものがあるでしょう。責任が発生する分、得られるものは多くなり、それはあなた次第で無限となります。
出世自体は上司達の評価による受け身のもの。たくさんの優秀な同僚達の中から自分を選んでもらうだけの評価が必要です。出世するかどうかについてのこの迷いが僅差となり、自分の仕事の立場が悪くなることもあるかもしれません。
ですが、出世に悩む人は、「出世」以外に本当に大切にしたいことがあるのではないでしょうか?
自分は何のために働くのか?と考えたとき、漫然と生活の安定のためと考えていたら、ある程度のところで出世欲もなくなるでしょう。
あなたにとっての仕事の夢や価値は、本当は自分の生活のためや企業の生活のためだけじゃない、世のため人のため、社会のために働くことにあるのかもしれませんね。