日本の食文化を支えるパン職人になろう
パンは日本において米と同じ主食という位置にあり、日本の食生活に欠かせないものとなっています。あんぱんは明治時代に日本で作られた菓子パンで、昔から親しまれてきたものであることが分かります。若い人に限らず、パン職人になりたいと願う方は少なくありません。しばらく会社員として働いてから、やはり夢を諦めきれずにパン職人としての道を目指す方もいまず。
パン職人として働く場は、街中にあるこぢんまりとしたパン屋から全国でチェーン展開しているような大きなベーカリーまで、規模は大小さまざまです。もはやパンには舶来品というイメージはなく、日本の主食の1つとして定着しています。食文化の一翼を担うパン職人のなり方を、解説していきます。
パン職人になるには
パン職人に憧れる方は少なくありません。焼きたてパンのこんがりした焼き目と漂う美味しそうな香りに、老若男女を問わず多くの人が心奪われます。しかし子どもから大人までを笑顔にする美味しいパンを作る仕事に憧れを抱いても、意外と力の必要な立ち仕事であるため大変な職業の1つに数えられます。
何の知識もないままパン職人として自分の店を開業するという、リスクしかない方法をとる人はいないでしょう。職人としての技術を磨き、いずれ開業したい人は経営方法を勉強しなくてはいけません。現実を見ないまま店を開業するというのは命取りです。
パン職人になる方法1:パン屋で働く
大学などで経営を学んだ後すぐにベーカリーに勤めて、パン作りの技術と現場の現実を学ぶ方法です。専門学校に行くための余裕がない方や、近くの地域に専門学校がない方にはこちらの方法をオススメします。学校で習うよりもより実践的な技術をプロから教えてもらえますし、収益の管理や接客術を間近で見て学べるというメリットがあります。
しかし、専門学校のように親切丁寧に指導してくれるわけではないので、受け身ではなく自分から学びに行く積極性が必要です。また、技術等が無い場合は最初から正社員として採用されることが難しく、初めのうちはアルバイトやパートとして働くことになるでしょう。
ベーカリーにもウインドベーカリーやテールベーカリーのように製品のチェックや販売に至るまですべての業務を一貫して行う所もあれば、パンの販売のみを行うような職場もあります。修行先として理想的なのは、パン作りから販売、廃棄までを行う職場です。作ったパンがすべて売れるわけではないという現実に直面しておくことが、パン職人としての経験の中で外せないものです。
パン職人になる方法2:学校で学ぶ
専門学校等に通い、パン作りの技術や経営術を学び経験を積んでから工房やベーカリーに就職してから修行する方法もあります。専門学校の中には実習やアルバイト先として、提携しているベーカリーやパティスリーを紹介するところもありますし、パン職人として取得していると有利に働く資格に対して対策を立てるところもあります。
高校卒業後に入学する場合と、大学卒業後に入学する場合、大学や仕事をしながら学びに行く場合があります。それぞれ学校によって学ぶ期間が変わりますが、専門学校卒業後はパン屋に就職したり開業したりすることになります。
パン職人の給与は平サラリーマンよりも少ない
パン職人の給与は決して高いものではなく、雇われている立場にいると、どんなに高くても一般企業の平社員と同じくらいしかもらえません。同じくらいといっても、小さいパン屋は売り上げも不安定になりがちでボーナス等が付かないことが多いので、実際は平サラリーマンよりも少ない年収になります。
給与を上げるためには、自分でパン屋を開業する必要があります。自営業主になってしまえば、自分の給与を好きに決められるようになりますし、商売が軌道に乗れば月収40万円の職人になれる可能性もあります。当然、パンが売れなければ収入はありませんので、美味しい商品を作る技術が必要です。
収入を増やすにはパン作りの技術だけでなく売るための技術も必要
パン職人は「技術」が必要ですが、何もパン作りの話だけではありません。売るための技術も必要です。自社製品を売るためには、商品の見せ方や売り方が重要ですので、職人としてではなく商売人としての技術を身につける必要があります。
パン職人としての技術と商売人としての技術、2つのスキルを手に入れた後もどのようなパンが市場で人気なのかと、常にアンテナを張っておくことが不可欠です。例えば売り上げの多いパンを調べたり、近所に住宅街ができて通勤客を見込めそうなら早朝販売を行ったりと、収益を上げるための努力が必要です。
パン職人になるには資格がなくてもOK
パン職人になるには特別な資格を取得する必要がありません。極論をいえば、言い張れば明日からでも始められる職業です。しかし資格を取得しておくことで、自分の技量・力量を客観的に保証できます。また、有資格者は正社員に採用されやすかったり、採用後の昇給条件としてあげられたりすることもあります。
パン職人に役立つ資格はいくつかありますが、本項では専門学校に通っていると取得を勧められることも多い「パン製造技能検定」について紹介します。
「パン製造技能検定」の国家資格もある
パン製造技能検定は国家検定制度の1つであり、特級、1級、2級の3つに分かれています。特級が1番高いランクで、管理者あるいは監督者としての技能が備わっていることの証明になります。1級は上級技能者、2級は中級技能者としての証明になります。
パン製造技能検定では、実技試験と学科試験の2つで合否を判定します。合格することで厚生労働大臣による合格証書が交付され、パン製造に必要な技術を持つ技能士を名乗ることが許可されます。受検料は各都道府県によって異なりますが、標準額は実技試験で17,900円、学科試験で3,100円です。
毎年9月ごろに検定の実施内容の公示が始まり、同時に受験申請書の配布が行われます。実技試験に関しては原則として事前に課題が発表されることになっています。合格ラインは実技試験60点以上、学科試験65点以上(100点満点)です。
パン職人の世界では女性も活躍中
多忙で体力勝負なところのある仕事ながら、女性のパン職人が大勢活躍されています。繊細な技巧が加えられている芸術的なパンだけでなく、魅力的な惣菜パンなど多くの種類を手掛けている方もおり、女性ならではの感性を生かしたパンも販売されています。芸術的なパンと聞くと、1個のパンに集中できるだけのゆとりがあるように感じられますが、実力が認められ自分の工房を持っているような方でないと難しく、実際の現場では1個のパンだけにかかずらっている時間はありません。
パン職人の業務
- 仕込み
- パン製造
- 販売
一見するとどれも体力を使うように見えませんが、全ての業務が力仕事になります。仕込みは前日に行うのが普通ですが、材料の運搬、配合だけでも量が量なので、かなりの体力が必要です。さらに翌朝の早いうちから出勤し、パンの成型と焼成を開店までにやっておかなくてはいけません。早朝から集中してパンを形作ったり焼き具合を確かめたりしなくてはいけないので、精神力も必要です。
いくらパンが好きだといっても、体力は使い続ければなくなります。普段から体力づくりに励んでおかないと働けなくなってしまいますので、パン職人を目指す方は身体作りも重んじましょう。
パン屋の開業を応援するコンサルティング会社もある
パン屋を開業するにあたり1人で開業準備を行う方は少ないでしょう。少なくとも配偶者やビジネスパートナーと一緒に準備することが一般的です。パン屋で修業したり専門学校に通ったりした分、パン職人としての技術は備わっているでしょうが、商売をするための知識や情報は欠けている方は少なくありません。
パン屋開業を専門にしているコンサルティング会社はありませんが、物件の市場調査や選定のアドバイス、資金の相談、店舗の設計などのサポートはもちろん、店舗を回せるように職人を派遣して開店するその日まで支援してくれます。
また、お店をどのようなコンセプトにするか、目玉商品をどのように見せていくかなど経営戦略に関しても相談に乗ってくれます。経営戦略の部分はコンサルティング会社の方に一任しているパン屋も多いです。コンサルティング料金はピンキリですが、相談することで自分の出来ることと出来ないことが見えてくるので、1度話してみると良いでしょう。
パン職人になるのはいつでもOK!
何かに挑戦することに、遅いということはありません。パン職人になりたいという夢を叶えたいと考えたならいつからでも始められます。パン職人として開業しなくても、どこかの店舗で働いたりパン教室を開いたりと、工夫次第で収入も得られるでしょう。