失業保険は退職者の全員が受給できるものではなく、一定の要件を満たせば、失業給付を受けとることができます。雇用保険、失業保険、どちらの言葉もよく使われますので、イコールであるということを憶えておきましょう。
失業保険とは?
失業保険とは、現在「雇用保険」と名前が改められた制度で、失業状態で、かつ求職活動をしている人への生活支援をし、再就職へと導こうとするものです。尚、失業保険の給付は、雇用保険に加入して、かつ条件に当てはまらなければ受け取ることはできません。但し、会社に属して働いている限りでは、必ず雇用保険に加入していますので、多くの方が被保険者となっています。
失業保険の受給資格
ここでは多くの労働者の方が属している一般被保険者について説明します。受給資格の条件は主に以下の通りです。
- 退職日以前の1年間の中で、6ヶ月以上の雇用保険被保険者期間がある
- 失業状態にあり、就職する能力があるが、就職先が見つからない
- ハローワークで求職活動をしている
まず重要なのが、雇用保険の被保険者期間、つまり退職以前に働いていた期間です。一般被保険者であれば14日以上労働した月が6ヶ月以上、短時間労働被保険者であれば過去2年間に1年以上必要です。また、1週間のうち20時間以上の所定労働時間が必要です。尚、これらは期間内であれば複数の会社の合算でも構いません。但し、失業保険の基本手当を受けてしまうと、それ以前の被保険者期間はリセットされてしまいますので、基本手当受給後の期間での合算になります。
加えて、求職状態である必要があります。これはつまり、現在は職が無いという状態で、かつ、すぐに働ける状態ですが職が見つからないという状態でなければいけません。したがって、すぐに就職できないような状態であれば、失業給付は受給できません。例えば、病気やケガ、出産、育児、介護などの理由や、職業訓練校を除くその他学校などに通う場合、自営業や会社役員などに就任している場合などもすぐに働ける状態ではないので、受給資格がありません。
基本手当の金額計算方法
基本手当の総額は「基本手当日額」と「所定給付日数」を掛けた金額で求められ、基本手当日額は「賃金日額」と「給付率」を掛けた金額で求められます。したがって、まずは賃金日額というものを求めます。
賃金日額は離職日以前の6ヶ月の給与の合計を180で割った値で求められます。
賃金日額 = 離職前6ヶ月間の給与総額 ÷ 180(6ヶ月×30日)
基本手当日額は賃金日額と給付率を乗算した数字です。給付率は固定ではなく、約50~80%で賃金日額によって遁減するように設定されています。つまり、賃金日額が多いと、給付率は小さくなります。また、基本手当日額には下限額、上限額があります。
基本手当日額 = 賃金日額 × 給付率
そして、基本手当日額と所定給付日数を乗算したものが基本手当日額です。所定給付日数については後述します。
基本手当の総額 = 基本手当日額 × 所定給付日数
尚、アルバイトなどで収入を得た場合、収入に応じた金額が基本手当日額から減額されることになります。収入があった場合、ハローワークに申告しなければ不正受給とみなされる場合もあります。
受給期間と所定給付日数について
失業保険には受給期間と所定給付日数というものがあります。受給期間は雇用保険の被保険者資格を喪失した日、つまり退職の翌日から1年間を原則としており、この期間内で所定給付日数を限度に受給できます。つまり、所定給付日数があっても受給期間内でなければ受け取ることができません。受給期間はすぐに働けない事情により受給ができないとき、手続きにより延長することができます。所定給付日数は以下の通りです。
自己都合退職の場合
被保険者期間 | 5年未満 | 5年以上 10年未満 |
10年以上 20年未満 |
20年以上 |
---|---|---|---|---|
所定給付日数 | 90日 | 90日 | 120日 | 150日 |
会社都合退職の場合
被保険者期間 | 1年未満 | 5年未満 | 5年以上 10年未満 |
10年以上 20年未満 |
20年以上 |
---|---|---|---|---|---|
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | - |
30歳以上 35歳未満 |
180日 | 210日 | 240日 | ||
35歳以上 45歳未満 |
240日 | 270日 | |||
45歳以上 60歳未満 |
180日 | 240日 | 270日 | 330日 | |
60歳以上 65歳未満 |
150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
退職の種類についてはこちらで
再就職手当とは?
失業状態で失業給付を貰っている期間、早期に再就職が決まった際に、再就職手当というものを貰うことができます。さながら再就職祝いのようなものですが、この手当を受け取るには一定の条件と、申請手続きが必要となります。
再就職手当とは、失業保険の受給中で所定給付日数が一定以上まだ残っている段階で、規定の条件を満たした再就職が決定した際にもらえる雇用保険の制度のことです。就業促進手当というもののひとつで、この他に短期労働に給付される就業手当、条件を満たす一部の受給資格者が再就職した際に給付される常用就業支度手当というものがあります。就業手当は、受給期間内に週20時間、一日4時間以上の短期間の労働をした際、所定給付日数を消費してその3割をもらえる手当です。
再就職手当の条件
再就職手当の給付が受けられる条件は、まず所定給付日数が3分の1以上、かつ45日以上残っている場合に限られます。つまり所定給付日数が135日以上であれば3分の2を経過する前、135日未満であれば残り45日を経過する前である必要があります。
また、待機期間中に就職したものや求職の申し込み以前に決定した就職については条件外です。加えて以前の会社に再雇用された場合も対象外です。自己都合退職であった場合の給付制限から1ヶ月の間であれば、ハローワークか民間の職業紹介事業者からの紹介での再就職でなければいけません。また、過去3年間に再就職手当、もしくは常用就業支度手当の給付がある場合にも受けられません。再就職手当の対象になるのは、1年間以上継続して雇用される見込みがある就職に限り、ハローワークにて審査されます。
再就職手当の計算方法
再就職手当で支給される金額は所定給付日数の残日数と基本手当日額を掛けたものに30パーセントを乗算した支給額となります。所定給付日数の残日数は、再就職先への就職日の前日までで計算します。要約すると、その後もらえる予定だった金額の3割が手当ということになります。但し、基本手当日額には失業手当の上限とは別に、再就職手当の計算の為の上限額が設定されています。
再就職手当 = 基本手当日額 × 所定給付日数の残日数 × 30パーセント
再就職手当の申請手続き
再就職手当をもらうには、再就職日の翌日から1ヶ月以内に申請手続きをしなければいけません。再就職先の会社から採用証明書を発行してもらい、ハローワークへと提出します。そして再就職手当を希望する場合はハローワークで再就職手当支給申請書を記入し、受給資格者証とともに提出します。支給日は審査後となるので、支給まで1ヶ月ほどかかりますが、支給要件に該当すると判断されれば、再就職手当が支給されます。
尚、再就職をした時点で失業手当の支給はとまりますが、再就職手当を受け取った後、会社の倒産などのなんらかの理由によってまた失業してしまった場合、雇用保険被保険者期間が6ヶ月以内で、かつ受給期間内に限って、残日数で基本手当の再受給を受けることもできます。その際、再就職手当を申請したときの残日数から、再就職手当の金額を基本手当日額で割った日数分を差し引いた日数が残日数となります。