新入社員はなぜ退職するのか?よくある理由と学歴別の退職率
希望に持ち溢れて入社したはずの新入社員の中には、突然退職すると言い出して周囲を驚かせる人も……。まだ、何も始まっていないというのに、新入社員たちは退職を選ぶのには、どんな理由があるのでしょうか。
ここでは、新入社員の退職率や会社側に与える損失のほか、新入社員が会社を辞める理由をご紹介します。新入社員の退職に頭を痛めている上司のみなさんや、これから退職を検討している新入社員のみなさんは要チェックです。
新入社員の退職率は高いか?低いか?
厚生労働省が発表している「新規学卒者の離職状況」によると、平成26年度に卒業して1年目で退職した人の割合は、学歴別に次のようになっています。
- 大学卒:12.3%
- 短大卒:18.3%
- 高卒:19.5%
学歴ごとの離職率の高さは、昔に比べて特に高いというわけではなく、どちらかといえば横ばいの状態が続いていることから、最近の若者が打たれ弱く、すぐに退職してしまうという見方は間違っていると言えるでしょう。
就職してから3年以内に、中卒は7割、高卒は5割、大卒は3割が離職することから、一般的に離職率は「七五三現象」と呼ばれています。10年以上ほぼ同じ割合を保っていることから、特に離職率が高い中小企業では、雇用のミスマッチをなくすなどの、定着率を上げるため対策が行われています。
新入社員の退職が与える会社側の損失は?
新入社員が退職する場合、知っておきたいのが会社側に与える損失です。新入社員が採用されてから、さまざまな費用がかかっていることから、退職する時には、次のことについてしっかり肝に銘じておく必要があります。
時間的な損失
1人の新入社員を雇うために、事前に準備して求人活動や面接、試験などを行い、さらに採用後は、育成のために新人教育を行うなど、多くの時間的なコストを費やしています。
経済的な損失
時間的な損失と同様に、採用までの人事担当者の活動費のほか、採用後は育成のための経費、新入社員の給与の支払いなど、数百万円単位の経済的なコストがかかってしまいます。
精神的な損失
新入社員が辞めることによって、採用した人事担当者や教育担当者に精神的な影響を与えるだけでなく、同期入社の新入社員のモチベーションの低下につながる恐れがあります。
新入社員が退職を選ぶ8つの理由
入社したばかりの新入社員が退職するのには、具体的にどのような理由があるのでしょうか。主なものとして、ここでは8つの理由をご紹介します。
1.イメージと違った
実際に入社してみたら、「こんなはずではなかった」という現実とイメージのギャップを強く感じる新入社員がいます。会社の方針や指導のやり方に疑問を持つほか、自分が思い描いていた企業のイメージとはかけ離れた内情を知り、落胆して嫌気がさしてしまうこともしばしばあるようです。
2.職場の人間関係が悪い
入社してしばらく経ち、職場に慣れてくることで見えてくるのが、同じ職場で働く人との人間関係です。特定の個人に嫌われる、職場の全員を敵に回してしまうことで、パワハラが始まることも……。逆に、上司や先輩のウケが良すぎて、同期の新入社員の妬みをかうというケースも少なくありません。
3.労働時間が長い
実務に就いた途端に残業が始まり、休日出勤なんて当たり前といった環境に苦しめられて、退職を選ばざるを得ない新入社員もいるようです。勤務時間と休日はきちんと守られるべきものという常識が覆されても、せっかく採用してもらったからと、涙を呑んでいる人も多くいます。
4.ノルマがきつい
入社したばかりの右も左も分からない状態で、充分な新人教育も施されていないにもかかわらず、無理なノルマを押し付けられてしまうことがあります。そのような職場では、先輩や上司も自分のノルマをこなすのに精一杯で、新入社員の面倒を見る余裕などありません。
5.給与やボーナスが低すぎる
労働に見合った対価が支払われないのも、新入社員のモチベーションを下げる原因のひとつです。「あんなに頑張ったのに、これだけ?」と思った瞬間、退職の二文字が頭をよぎることもあります。会社によっては、1年目はボーナスがもらえない場合があるため、事前に確認しておくといいでしょう。
6.事前に聞いた業務内容と違う
会社説明会で説明を受けてやる気満々で入社したのに、いざ実務に就いたら雑用ばかりという場合、当初のモチベーションが高かった分だけ、余計激しく落ち込みます。「こんな事がしたくて入社したわけじゃない」という思いが日に日に強くなり、具体的に退職を考えるようになります。
7.他にやりたいことがある
「他にやりたいことがある」というのは、かなり前向きな転職理由です。夢を諦めて就職したものの、やっぱり諦めきれない……そんな夢を持って退職を決める場合は、入社してからもらったお給料はできるだけ使わずに、夢を実現するための費用に充てたほうがいいかもしれません。
8.社風や仕事が自分に合わない
入社後、実際に業務についてみて「何か違う」と感じてしまった場合、退職を考えることがあります。この先ずっとこの仕事を続けていっていいのか?と疑問を感じたり、仕事にやりがいが見い出せないなど、毎日違和感を覚えながら働き続けるよりは、一度リセットした方がいいと感じてしまうのです。
実際に新入社員が退職する時にはどうすればいいの?
いろいろと迷った結果、新入社員が退職を決意した場合、次に考えなければいけないのが、どうやって会社側に退職の意思を伝えるかということです。スマートかつ確実に決意の伝えるためにはどうすればいいのか、その具体的な方法を順を追って説明します。
まずは直属の上司を呼び出す
退職の意思を伝える場合、偉い人なら誰でもいいというわけではなく、直属の上司にあたる人に伝える必要があります。ただし、中小企業などで直属の上司がおらず、社長が上司にあたる場合は直接伝えてしまって構いません。
また「トイレで会ったついでに」や「飲み会の席なら言いやすいかも」というのはNGです。周囲に同僚がいるような場所ではなく、会議室やミーティングスペースのような改まった場で、できれば二人きりで話さなければいけません。
上司が忙しい時間は避け、余裕がある時間帯を見計らって、「ご相談したいことがあるのですが、少々お時間よろしいですか」などと声をかけて、二人きりで話す事ができるシチュエーションを作ります。その際には、必ず筆記用具を用紙しておきましょう。
次に上司に退職したい旨を伝える
話し合いの場を設けることができたら、まずは「お忙しいところすみません」と前置きをしてから、「退職させていただきたいのですが」と切り出します。このような場合、上司に当たる人は引き止めにかかるでしょう。
新入社員が退職することによって、採用や研修にかけたお金や時間が全て無駄になってしまうため、企業としては何とかして引き止めたいと考えるのです。しかし、ここで無理矢理振り払うのはあまりにも印象が悪いので、上司の話を遮ったりせずに一通り最後まで聞いておきましょう。
ただし、キッパリと辞める意思を伝える必要があるため、最初に申し訳ないという気持ちを見せてから、やむを得ず退職する事を決めたということを伝えます。その際、会社側への文句やグチ、同僚の悪口など、ネガティブな印象を与える会話は避け、最後まで誠実さを見せる必要があります。
最後に退職願を提出する
話し合いの結果、何とか上司に同意してもらったら、あとは退職願を提出しましょう。退職願には「一身上の都合により」という理由を記載しておけば、特に問題ありません。この場合、「退職届」ではなく「退職願」を提出します。
新入社員が退職の際にすべき3つのこと
新入社員とはいえ会社の一員として短期間でも働いていた以上、退職する際にはやらなければいけない事があります。主に次の3つのことについては新人でも絶対に必要なため、忘れずに行いましょう。
1.挨拶
辞めることが決まったらやっておきたいのが、お世話になった方たちへの挨拶です。できれば、同じ部署の人達全員に挨拶するのが理想ですが、人数が多い大企業では、特に直接交流のあった人に限定しておいて構いません。「この度、退職する事になりました。大変お世話になりました。」というように、簡潔に挨拶して回りましょう。
2.引き継ぎ準備
新入社員研修の期間が終了して、実務に就いているという場合は、後任の担当者への引き継ぎが必要となる場合があるため、業務の進め方や仕事の内容をまとめたメモや資料を残していくと良いでしょう。
3.身辺の整理
ほんの数か月間の在籍といえども、毎日会社に通っていれば、個人のデスクなど身の回りに私物が増えるほか、筆記用具や資料など会社から付与された備品があることから、休憩などの空き時間を使って徐々に整理をしておきましょう。
新入社員の退職理由は様々~最後まで誠実に振る舞おう
今回紹介したように、新入社員が退職を決めるには様々な理由があります。どうしても働き続けることができないため、新天地を求めているだけなので、会社としては、退職が決まったら快く送り出してあげたいものです。
また、新入社員は退職すると決めたら、あとは最後まで誠実に振る舞うことが大切です。退職したい旨を上司に口頭ではなくメールで伝えたり、仕事の引き継ぎをきちんとしなかったりすることのないようにしなければいけません。ここに挙げた新入社員が退職する際にやるべきことを参考にしてください。