退職を決意したら提出する・受け取る書類と手続をチェック
大きな決断である「退職」に慣れている人はいません。
次の人生をスタートするためにあたり、退職手続の不安やストレスは少しでも少なくしたいものです。
就業規則や社会保険・税金など、会社に所属し給与が手元に入るまでに存在する仕組みを整理して、退職にはどんな手続きが必要か、そして、新しい会社にスムーズに入社するにはどう動くべきかを知っておきましょう。
退職に必要な書類と手続き
退職は簡単にできるものではありません。
正式な手続きをとって円満に退職をするためにはそれなりの時間と心構えが必要になります。それを踏まえたうえで、お世話になった会社を円満に退社するために必要な書類や手続きについてまとめました。
退職願(退職届)を提出する
退職を決意したらまずは直属の上司にその意思を伝えます。
慰留されるか否かは会社での存在感によりますが、どの会社でも共通しているのが意思を伝えてから実際に退職するまでには期間が設けられているということ。
就業規則がある会社は、就業規則の中に退社に関する項目が規定さている場合もあります。就業規則がない場合は最低でも2週間前には退職の意思を伝える必要が法律にて決まっています。
退職の意思を伝えるのに必要なのが「退職届」もしくは「退職願」です。
退職届とは、○月○日に退職をします。と退職する意志を伝えるもの。
退職願とは、○月○日に退職したいと思っております。と願い出るもの。
この二つの決定的な違いは、「退職願」は退職の意思を取り下げることができるという点です。
一方で「退職届」は会社に正式な手続きにのっとり退職する強い意志を表明し、会社も受理という形でそれを同意しているので取り下げはできません。
迷いがある状態で書類作成には至らないかとは思いますが、もし会社から「退職願」でも「退職届」でもどちらでもいいと言われた場合は、この違いをしっかりと理解した上で対応しましょう。基本的には退職願を用意しておけば問題ありません。
退職願・退職届は文書で提出します。
メールやSNSでの提出は正式なものとして扱われない場合がありますので、トラブルをさけるためにも便箋と封筒を用意して文書として提出しましょう。
健康保険証は返却する
会社経由で健康保険に加入している場合は、退職日から5日以内に保険証を会社に返却する必要があります。
退職日に出社する場合は帰る前に返却することもできますが、有休の消化等で最終出社日と退職日にずれがある場合は、退職日を迎えたら忘れないように保険証を返却しましょう。
会社では保険証を添付して、年金と健康保険の資格喪失を届け出ます。
返却を忘れて病院で使用してしまった場合、その時は普通に利用できますが、病院から保険料7割の請求手続きが入ったときに、資格を喪失しているので対応できません!と言われることになり、後日病院から7割分の請求も、つまり医療費全額の請求があなたにくることになります。
もしも保険証を紛失してしまったら、退職前でしたらその旨を人事総務担当者に伝えて再発行の手続きをしてもらいましょう。
退職後に紛失が発覚した場合も、返却ができない旨を必ず担当者に報告する必要があります。
社員証(身分証明証)は返却する
社員証を発行している会社の場合は、必ず返却が必要になります。
セキュリティキーを兼ねている会社も多いので、トラブル回避のためにも最終出社日に返却して帰ることをおすすめします。
通勤定期の扱いは会社に確認する
通勤定期については、会社によって対応が変わります。
- 残日数の払い戻し額を最後の給与より天引き
- 定期券そのものを返却する
- 自身で払い戻しをするのみで完了
知らずに定期残額分を給与から引かれては驚いてしまいますので、担当者にどの対応をするのかを確認しましょう。
1か月分の交通費を給与と共に支給するシステムの会社は、通勤として使用しない日数が多い場合は特に、交通費の扱いをどうするか総務に確認しましょう。
会社の制服や備品は返却する
制服や社章、ネックストラップや文房具等、普段会社で使用しているもののうち、会社から貸与されているものを整理しておきましょう。
貸与されていると知らずに返却をしないと、催促されたり、買い取りとして代金を請求されることも考えられます。
制服は夏用・冬用など自分が借りているものをクリーニングした上で返却することがマナーです。返却できないくらいに汚れていたり、紛失してしまった場合はその旨を正直に担当者に話して指示を仰ぎましょう。
なお、PCやタブレット、スマートフォンなども貸与の備品ですが、データやメールの中身等は基本的には削除せずにそのまま返却してください。業務上知り得た情報の提出とともに、引き継ぎ担当者がスムーズに業務を進めるために重要な情報源になるからです。
仕事に関する資料や名刺は扱いを会社に確認してから処分する
業務で得た名刺や資料・情報に関しても退職時はすべて会社に提出する必要があります。
膨大な量になってしまった資料は、そのまま置いていくのもその後の職場で迷惑になるため、直属の上司に相談の上、廃棄できるものは自分で整理してから退職するようにしましょう。
なお、会社で得た人脈を転職先でも利用したいからと名刺や情報を持ち出すことは、個人情報保護や企業秘密の考え方から禁止する会社は多く、中には退職時に誓約書の提出を求められることもあります。
誓約書の内容は「退職後何年は競合企業で働かない」「業務上知り得た情報は持ち出さない」等ありますが、上司に相談して許可が得た場合を除き、会社を経由してのクライアントの情報はすべて会社に報告・提出する必要があります。
返却物を直接返せない時は郵送でも大丈夫
基本的には直接会社に出向いて返却するのが望ましいのですが、退社時にその地域を離れている場合や、どうしても会社に行きづらい場合には、郵送で返却しても問題ありません。
突然送り届けるのは失礼ですし、トラブルの元になります。ちゃんと会社に郵送にて返却する旨を伝え、内容物の一覧が分かる添え状も添付しましょう。
郵便・宅配便でもしっかりと郵送したことを証明できるよう、発送伝票の控えはしばらく保管しておきましょう。
また、保険証など個人情報が記載されているものに関しては、対面にてちゃんと相手側が受け取ったことが証明される、簡易書留にて送るようにしましょう。沢山の物を返却するからと言って保険証を混ぜて送らないように、別口で保険証のみ簡易書留で送るようにしましょう。
簡易書留の封筒は郵便局で購入することができ、その場で出せますし、後ほどポストに投函することもできます。
退職した後に会社から受け取る書類とその後の手続き
円満に退職できたら、次に待っているのは新しい生活です。
転職するにしても、起業するにしても、フリーランスになるにしても、それまで会社の一員として
当たり前のように対応してきた社会の仕組みを見直すきっかけになることは確かです。健康保険・年金・雇用保険・税金などを理解して新しい生活をスムーズに始めましょう。
雇用保険被保険者証
雇用保険は社会保険の一つで、主に職を失い収入が得られない状況になったときの生活保障のための保険として用いられています。
下記の条件を満たしている従業員がいる会社は加入する義務が発生します。
【加入条件】
- 所定労働時間(休憩時間を除く労働時間)が1週間で20時間以上
- 雇用見込みが31日以上ある
雇用形態での区別はありませんが、一般的に正社員は無条件で加入、非正規雇用は勤務体系と照らし合わせて検討することが多くなります。雇用保険は会社経由で加入しているものですが、最初に就職した会社が雇用保険加入手続きをした際に割り振られた「雇用保険被保険者番号」は一生あなたのものとしてついてきます。
会社を退職すると、会社はハローワークに従業員が離職した旨と、雇用保険の資格を喪失した旨を報告します。これであなたはハローワークを通じて失業保険の受給や職業訓練の受講、新しい職の紹介を受けることができるようになります。
退職時は必ず会社から「雇用保険被保険者証」を受け取ってください。
雇用保険被保険者証は会社に所属していた時の情報となりますので、退職した時点で過去のものになるのですが、自分がどの会社で雇用保険に加入していたのかの履歴の確認と、雇用保険被保険者番号を手元においておくためにも必ず受け取っておく必要があります。
似た書類で「離職票」というものがありますが、それは退職後に会社が手続きをしてからハローワークが発行するものなので、10日から2週間程度経ってからあなたの手元に送られてきます。
年金手帳
社会保険の年金制度が厚生年金です。
こちらも加入条件を満たせばだれもが加入し、国に納める必要があるものになります。
【加入条件】
- 雇用の見込みが2ヶ月以上ある
- 労働時間が正社員の4分の3以上ある
入社時に年金手帳の提出を求められると思いますが、加入手続きの後で手帳を個人保管として返却されるか、会社保管とされるかは会社によって異なります。年金手帳の所在の記憶があいまいな場合は、担当者に必ず確認をしましょう。
会社保管の場合は、退職時に必ず返却してもらい、次の職場にすぐに提出できるようにする必要があります。もし、紛失してしまった場合は再発行を年金事務所に申請する必要があります。
健康保険資格喪失証明書
社会保険の一環に健康保険もあります。
こちらは会社によって加入する団体が異なりますが、基本的に会社経由で保険加入するものですので、退職すると資格を喪失することになります。資格喪失届は退職後に会社が対応するものですが、会社経由の健康保険を辞めたことを証明する書類は退職時に会社からもらうことができます。
健康保険資格喪失証明書は国民健康保険への切り替えや、被扶養者として健康保険に加入する手続きの際に必要になります。
なお、現職の健康保険を任意で継続するという選択肢もあります。会社が加入している保険組合により任意継続の申請や保険料支払いの条件が異なりますので、任意継続を希望する場合は退職前に総務に相談しておきましょう。
任意継続は、申請の期間が退職後20日以内・加入期間は2年までと制限があり、保険料の計算方法は各都道府県が決定した料率に退職時の標準報酬月額をかけるという方法で算出されます。
国民健康保険との大きな違いは扶養家族の考え方で、扶養家族が多い場合は任意継続の方が保険料を安く抑えられる可能性がありますが、転職して他の会社から健康保険に加入する可能性が高い場合は、任意継続をするメリットは特にはありません。
退職証明書
退職証明書はその名とおり退職を証明するもので、失業手当の給付の際、もしくは新しい就職先で前職のキャリアを証明する際に利用されます。
基本的に自分から会社に申請をして発行してもらう必要があり、その大きな理由は退職する側が望まない情報を会社が記載することを禁止されているからです。
【記載項目】
- 在職期間
- 業務の種類
- 役職や賃金
- 退職理由もしくは解雇の理由
上記の項目から退職者が必要な情報を指定して証明書を作成してもらうことになります。一方で、退職者側が求めているにもかかわらず会社が証明書を発行しないことも禁止されています。
ただ、退職者側もこの書類を使う機会は新しい会社や役所・税務署から求められることがない限りありません。
源泉徴収票
源泉徴収票には1月1日から12月31日までの間に会社が支払った給与の額や所得税として徴収した額が記載されます。源泉徴収票が必要になるのは年末で、新しい会社に提出しなければ年末調整ができず、自分で確定申告をすることになります。
なお、退職金など給与・賞与以外の手当が出た場合は源泉徴収票は2種類になります。退職手当の源泉徴収票は「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」と表記されています。
退職金等が出た場合は、必ず2種類の源泉徴収票が届くことを確認してください。源泉徴収票は最後の給与明細と同送されることが多くなります。
離職票(雇用保険被保険者離職票)
退職後、会社がハローワークに離職証明書および雇用保険資格喪失届を提出することで、ハローワークから離職票が会社に渡されます。離職票には退職前半年間の給与や退職理由が記載されていますので、退職理由が会社と合意にいたったもので間違いがないかをしっかりと確認しましょう。
【退職理由記載】
- 自己都合退職
- 会社都合退職
退職理由によって、失業給付の期間が変わりますので、結果的には受給できる金額、また再就職手当にも影響があります。
離職票は「離職票1」と「離職票2」の2枚セットで、ハローワークで求職をする際や失業給付を受ける際に必ず必要になります。すでに次の就職先が決まっている場合や、失業給付を受けない場合には、離職票は不要です。
離職票-1の見本
離職票-1の記入例
離職票1は資格喪失確認通知書というもので、雇用保険の加入情報や、失業保険が振り込まれる口座情報などが記載されています。書き方として、ここで離職者の方は、下部の黒線の枠内に口座情報を記入します。
上部にある被保険者番号や氏名、雇用保険の加入年月日、被保険者種類・区分等の欄については、会社側で提示済みの内容となります。失業手当の金額に関わる部分ですので、内容に間違いが無いか確認しましょう。その下の破線で囲まれた欄については、ハローワーク側で記入する欄となります。
離職票-2の見本
離職票-2の記入例
離職票2は左右に分かれた1枚の用紙です。左側には雇用保険の被保険者番号、離職年月日、事業所・離職者・事業主の情報、離職の日以前の賃金支払い状況、その他特記事項が記載されています。右側は離職理由欄となっており、退職の理由についての項目と、確認の書名の欄があります。
左側の欄はすべて事業主のほうで記入する項目となっています。右側の欄は、事業主の記入の欄と、離職者の記入の欄とが設けられています。書き方として、退職された方は離職者記入欄と、退職理由の内容に意義が有るか無いかの判断、記入した事項に間違いがないことの確認の署名と捺印の部分です。従って、左側の欄の情報に間違いが無いかの確認も重要ですが、離職票2で最も重要なのは退職理由を示す右側の項目となります。
離職票-2のポイント
離職票2は用紙右側で自己都合退職なのか会社都合退職なのかが失業給付に関係することとなります。退職される方にとっては、退職において会社に主因があるのであれば3ヶ月の給付制限がなく、最大受給期間の長い会社都合としたほうが良いですし、事業者側にとっては自己都合で治めたいと考えるかもしれません。ここで両者の言い分に食い違いがあると状況が複雑になってきます。
この点について、離職票2の書き方は、会社側で必要事項を記入し残りを空欄で渡される場合と、双方で話し合って記入する場合とがあります。どちらの書き方が離職者にとって有利、不利ということはありませんが、後者ですと記入の前に話し合いができますので、お互いに齟齬が発生しないでしょう。その分、プレッシャーをかけられるかも知れません。前者の場合、もしかすると会社側からの話し合いに応じない姿勢の表れかもしれませんし、ハローワークで異議を申し立てれば会社に確認をとってくれますが、ハローワークで変更を強制することはできません。最悪の場合、裁判で争うことも発展するでしょう。退職理由については、退職前に会社と十分話し合っておく必要があります。
厚生年金基金加入員証
厚生年金基金として会社が企業年金に入っている場合は、退職時に必ず加入員証をもらいましょう。
会社を退職した場合、企業年金の一時金支払いか、資産の企業年金連合への移換かを選んで申請の対応をする必要があります。
それぞれにメリット・デメリットがありますが、どちらを選ぶにしても企業年金に加入していた証拠となる書類は必ず必要です。退職までの間に個人で保管しているか、会社保管かを確認しましょう。
離職票と源泉徴収票は退社後に郵送されます
離職票は会社がハローワークに退職を報告したのち、源泉徴収票は最後の給与および退職金の給与計算が確定したのちに、書類として会社にて作成されます。そのため、退職日には手元には届かないので、引っ越し等で住所が変わる場合は必ず郵送可能な宛先を報告しておきましょう。
また、郵送が難しい場合は直接会社に取りにいくことも可能ですが、退職後の会社ですので、正式なアポイントという感覚で訪問することがマナーとして必要です。
なお、離職票は退職後10日以内と決まっておりますが、源泉徴収票が届く目安は退職後1か月程度です。それ以降会社から連絡がない場合は問い合わせましょう。
退職したのに離職票が貰えない場合はどうする?
離職票を請求された場合、応じるのは会社の義務です。また、退職者が出た場合ハローワークに雇用保険の被保険者から外す手続きをしているので、離職票は必ずハローワークにて手続きされています。
雇用保険に加入しているのに手続きをしていない場合、雇用保険法に抵触することになるので、その旨を会社に伝えて離職票をもらいましょう。
離職票はハローワークでの求職だけでなく、雇用保険(失業手当)の受給申請には欠かせない書類です。会社から離職票をもらえないと焦る前に、退職までに離職票を希望する旨をしっかりと会社に伝えておくことが必要です。
万が一、退社後10日経っても離職票が貰えず、会社に問い合わせてもだめな場合は、ハローワーク経由で請求することができるので、ハローワークに相談しましょう。
雇用保険(失業保険)の申請に必要な書類
雇用保険の失業手当受給申請はハローワークにて行います。
【提出書類と手続きに必要な物】
- 離職票-1・離職票-2
- 雇用保険被保険者証
- マイナンバーがわかる書類(もしくは本人確認書類)
- 印鑑
- 写真(直近3ヶ月以内撮影)
- 求職申込書(ハローワークで記入)
- ハローワークカード
失業手当受給には「求職の意思」があることを示す必要があります。その上で仕事が見つからないやむを得ない期間を保証してもらうという姿勢で申請をしましょう。
なお、失業手当の金額は以下の事項を元に算出されます。
【雇用保険の受給期間と受給金額の算出元】
- 退職日の年齢
- 退職前半年間の給与額合計を180日で割った賃金日額
- 勤続年数
- 退職理由
アルバイト・パートで退職しても雇用保険をもらえる
アルバイト・パートなどの雇用形態でも、一定条件を満たしていれば雇用保険に加入することができます。
【加入条件】※学生はこの限りにあらず
- 所定労働時間(休憩時間を除く労働時間)が1週間で20時間以上
- 雇用見込みが31日以上ある
会社はこの条件を満たす従業員を雇用した時点で雇用保険への加入義務が発生するため、雇用形態が正社員でなかったとしても雇用保険への加入状況を会社に確認しましょう。
雇用保険資格取得等確認通知書(被保険者通知用)という形で会社から加入手続きが完了したことを報告してもらえます。なお、会社から通知書がどうしてももらえない場合は、ハローワークで加入状況を照会することも可能です。
雇用保険を貰うためにバイト先・パート先からも貰う必要がある書類
失業手当受給を申請するために必要な書類と手続きは、正社員であっても、パート・アルバイトであっても同じです。雇用保険に加入していることが確認できたら、退職時には必ず「離職票-1・離職票-2」と雇用保険被保険者証を勤務先に請求しましょう。
退職するときは書類の手続きを忘れずに!
退職は、退職者側も会社側においても、沢山の手続きと沢山の必要書類が発生する重大事項です。
自分は去る立場だからと、会社が対応してくれるのを待っているだけでなく、お世話になった会社を円満に退社し、新しい職場での業務をスムーズにスタートできるよう、退職確定から退職日までになにが必要で、その後どのように動くことが最善かを把握しておくことが重要です。
しっかりと業務の引き継ぎをして会社や担当者との関係性を良くしておくと、問い合わせの際に対応してもらいやすくなることも忘れないようにしましょう。