社内文書の書き方は社内評価にも関わってくる
ビジネス文書には、大きく分けて社内でのみやりとりされる「社内文書」と、企業間での連絡通知に使用される「社外文書」の2種類があります。社内文書は、上司への提出文書や、各部署間の連絡・報告、また本社から各支社、営業所への通達など、社内でのみ使用されるビジネス文書です。
社内文書は社会人になってはじめて触れるビジネス文書であるといえるでしょう。社内でのやり取りされる文書ではありますが、適切な書き方ができるかどうかは社内における評価にも関わってくるといっても過言ではありません。社会人として、社内文書の書き方とマナーを身につけることはとても大切です。
社内文書は目的別に4つの種類に分かれる
社内文書は、その目的に沿っていくつかの種類に分かれます。どのような種類の文書があるのか一通り覚えておきましょう。
1.組織として決定した事項を通達する指示命令・決済の社内文書
企業組織としてすでに決定した事項を、一方的に通達する社内文書です。発信元の部署に所属していなければ、作成する機会はないかもしれませんが、社内文書を代表する一形式として覚えておきましょう。
- 社則・社内規定などの通達書
- 人事・労務・福利厚生に関する伝達書類
2.直属の上司など社内の首脳陣あてに報告・届け出を行うための社内文書
- 有給休暇取得、遅刻・早退の申請書類
- 退職願
- 出張届
- 業務改善などの提案書類
- 始末書
3.会社全体や部署間、役職間で連絡・調整を行うための社内文書
- 社内行事の出欠確認や交通機関乗降場所のアンケート
- 社内行事の決定事項連絡
- 落とし物や資料の持ち主探しなどの回覧文書
4.会議で決定した事項や討議した内容などを記録・保存するための社内文書
- 社内会議の議事録
- 人事異動の記録
伝達事項を一目で理解してもらえる社内文書の書き方のポイント
社内文書は、社外文書とは異なり、伝達事項が一目で理解されることを第一とし、不要な要素をできる限り排除した形式で作成されるのが特徴です。
「百聞は一見に如かず」なので、はじめて社内文書を作成する場合は、上司や先輩社員にこれまでに作成された社内文書のデータをフォーマット例として提供してもらうのがおすすめです。「社内文書の作成方法がわからない」と悩んでいる時間が無駄なので、自分から声をかけてお願いしましょう。
1.社内文書は書く前に既定のフォーマットがあるかどうか確認する
有給休暇申請などの届け出をする社内文書は使用する機会が多く、規定のフォーマットの存在を入社当初から知っていることが大半でしょう。
しかしながら、たとえば始末書といったなかなか日常で作成する機会がないものでも、会社規定のフォーマットがある場合があります。いきなり独自のフォーマットで作成を始めず、上司に規定のフォーマットの有無を先に確認したほうが書き直しのリスクが減ります。
事前に確認しておけば、規定のフォーマットがあるにもかかわらず独自のフォーマットで作成された文書を確認し、注意して書き直しを促すという労力を上司にかけてしまうといった事態も避けられます。
2.社内文書は誰が読んでもすぐに内容を把握できるシンプルな文章を心がける
社内文書は、多忙な業務の合間にさっと目を通されることが多い文書です。簡潔で誰が読んでもわかりやすく、一目で内容を把握できる文章を心がけなければなりません。一文一文を短く切り、余計な接続詞なども排除して、シンプルな内容と文章で作成しましょう。
3.社内文書はビジネス文書で慣例となる時候の挨拶は必要ない
社内文書が社外文書と大きく異なる点は、時候の挨拶の有無です。社外文書の場合、必ず“〇〇の候、貴社におかれましては益々ご清祥のこととお慶び申し上げます”といった、時候の挨拶が必須となりますが、社内文書には必要ありません。すぐに本題に入って、伝達事項のみ簡潔に伝えるようにしましょう。社内メールで慣例化している“お疲れ様です”といった導入の言葉も不要です。
4. 社内文書の書き方は敬語は使わず“ですます”調で記載する
社内文書において、“おっしゃる”、“いただく”のような敬語を使用する必要はありません。回りくどい文章になるのを避けるためです。“ですます”調の丁寧語でシンプルな文章を作成するよう、心がけましょう。
読み手を不快にさせずによい印象を残すために求められる社内文書の書き方マナー
社内文書では、社外文書に通じるビジネスマナーが必要とされます。社内文書ならではの気遣いがあればなおよいという場面も見受けられます。読み手を不快にさせずよい印象を残すために、社内文書に求められるマナーをご紹介します。
伝達事項に誤りがないように校正と推敲に細心の注意を払う
社内文書では、伝達情報の正確性は何よりも大切です。迅速な伝達を目指すあまり、誤字脱字が見受けられたり、そもそも情報に誤りがあったりしては本末転倒です。さっと目を通すだけでも、第三者が読めば誤字脱字にはすぐに気が付きます。伝達情報に誤りがあり、訂正版を出しても、読み手が文書を確認するタイミングによっては混乱を招きます。誤った情報を伝えることがないよう、校正、推敲は必ず行ってください。
人の名前や部署名に間違いがないように念入りに確認する
ビジネス文書やプライベートな手紙にかかわらず、人名を誤って記載することは最も失礼にあたります。所属部署や役職、名前の漢字に誤りがないかどうかは特に念入りに確認するようにしましょう。同姓の社員がいるのに姓のみで表記し、混乱を招くような事態は避けることが不可欠です。
感情表現や個性を主張するような無駄な情報を入れない
社内文書・社外文書に共通していえることですが、感情表現や個性を主張する文章などは不要です。ビジネス文書においては個性を主張することは全く求められていません。規定のフォーマットに沿って、伝達事項を正確に、簡潔に記載することに集中しましょう。
社内文書を回覧する場合はスムーズに閲覧されるよう工夫する
手動で社内文書を回覧する場合、所在不明になったり、誰に回したのかがわからなくなったりすることが多々起こります。このような事態を避けるためには、社内文書の回覧主である作成者による工夫が必要になってきます。
伝達事項に関して無関係の部署にまで回覧されてしまわないよう、回覧の発信者名(部署名)を明記します。可能であれば、回覧対象者全員の名前とチェック欄を設け、確認した人は自分の名前欄にサインのうえ他の人へ回してもらうと、どこまで回覧したかわからなくなる事態は避けられます。
いつまでに誰に戻してもらいたいのかを明記し、途中で放置されることがないよう、「不在の場合は机に置かず、在席中の人に優先して回覧してください」といった一言を添えるとなおよいでしょう。
ルールとパターンを覚えよう!社内文書のフォーマット例
社内文書は、フォーマットのルールやパターンさえ覚えてしまえば簡単に作成できます。構成要素、必要事項の記載順や、右寄せや左寄せといったフォーマットの特徴に注意して覚えましょう。言うまでもないことですが、社内文書に関わらず、ビジネス文書において奇をてらったフォントの使用は控えてください。
社員旅行に関する連絡の社内文書フォーマット例
社内文書の書き方とマナーを身に着けて信頼を得よう
社内文書には、ビジネス文書の基本ルールが詰まっています。簡潔に誰に対してもわかりやすく正確に伝わる文章を作成するというスキルが試される文書でもあります。一社会人として、ビジネスマナーの基本を押さえている人間であるかどうかを、社内文書で見られているという意識をもって作成しましょう。
「たかが社内文書。誤りがあっても訂正すれば問題ない」といった考え方の人も残念ながらいますが、「一事が万事」という言葉があります。届け出書類を雑に作成し、提出後に毎回のように上司から修正と再提出を求められるような人は、自らの評価を下げているといえます。
社内書類を的確に作成し、迅速に提出できる人は、仕事のパフォーマンスもいい人が多いです。読み手の気持ちを考えた正確かつ簡潔な社内書類の作成を心がけ、社内での信頼を得られる社会人を目指しましょう。