「敬具」とは手紙の最後に位置する結語
敬具とは手紙の最後に用いる結語で、ビジネス文書やビジネスレターの形式として用いられることが多いです。本来の意味は「以上、謹んで申し上げます」ということになります。訓読みすると「うやうやしくととのえる」となり、「敬意を表して結ぶ」という意味になります。
敬具とほぼ同じ意味で使用されるのは「敬白」
結語が必ず「敬具」とは限りません。敬具は基本、「拝啓」という頭語とセットです。
拝啓より丁寧な表現の頭語として「謹啓」があり、この結語は「敬白」になります。敬白は敬具とほぼ同じ「謹んで申すこと」という意味を持っています。
敬具の代わりに女性だけが使える結語は「かしこ」
敬具や敬白の代わりに女性だけが使える結語があります。それが「かしこ」です。「かしこ」の意味は「恐れ多く存じます」または「恐れ慎む」になります。「かしこ」は拝啓や謹啓などの頭語、基本的にはどの組み合わせでも対応できる結語ですが、一般的な組み合わせは通常の手紙ですと「一筆申し上げます」が頭語になります。
ちなみにこの頭語も女性だけが使えるものですので全体的にやわらかい印象の文面になります。改まった手紙の場合、一般的な頭語は「謹んで申し上げます」、急ぎの場合は「突然で恐縮ですが」、前文を省いた手紙の場合は「前文お許しください」になります。いずれも女性用の頭語です。
「拝啓」「謹啓」の後には時候の挨拶+安否の挨拶を忘れずに
「拝啓」や「謹啓」などを用いた改まった手紙の場合は、時候の挨拶と安否の挨拶を必ず書きましょう。時候の挨拶とは季節を表す挨拶の一文で頭語の後に続く礼儀文です。手紙の書き出しに必ず使います。季節の挨拶とそれに続く安否の挨拶とまとめて前文に書くことで、すっきりとした印象の文章になります。
季節ごとの時候の挨拶一例
・1月…初春、迎春、新春(~の候、~のみぎり、~の折に繋げる)
・2月…立春、早春、向春(~の候、~のみぎり、~の折に繋げる)
・3月…早春、春分、春風(~の候、~のみぎり、~の折に繋げる)
・4月…春暖、春晩、春風(~の候、~のみぎり、~の折に繋げる)
・5月…晩春、暮春、惜春(~の候、~のみぎり、~の折に繋げる)
・6月…梅雨、長雨、小夏(~の候、~のみぎり、~の折に繋げる)
・7月…盛夏、猛暑、酷暑(~の候、~のみぎり、~の折に繋げる)
・8月…残暑、残夏、早涼(~の候、~のみぎり、~の折に繋げる)
・9月…初秋、早秋、爽秋(~の候、~のみぎり、~の折に繋げる)
・10月…秋冷、秋麗、秋涼(~の候、~のみぎり、~の折に繋げる)
・11月…晩秋、深秋、初冬(~の候、~のみぎり、~の折に繋げる)
・12月…師走、寒冷、歳末(~の候、~のみぎり、~の折に繋げる)
時候の挨拶+安否の挨拶 使用例
・初春の候、貴社いよいよご清栄のこととお喜び申し上げます。
・師走の折、皆様におかれましてはますますご健勝のこととお喜び申し上げます
メールでは「拝啓」「敬具」などの頭語結語は原則使用しない
基本的に社内、社外ともにメールでのやりとりの時は、「拝啓」「敬具」などの文言は使用しません。件名を分かりやすく簡潔にするだとか、最初の一文目に「○○様」と相手の名前を記すだとかビジネスメールにはビジネスメールのルールがあります。手紙と混同して間違えないように気をつけてください。
「拝啓」「敬具」の英語表現
外国にも「拝啓」「敬具」に代わる挨拶表現は存在します。まず「拝啓」ですが、英語の場合は「Dear」が用いられます。また「敬具」には「sincerely,」「sincerelyyours,」「Yourssincerely」などがあります。
「拝啓」と「敬具」の位置
「拝啓」や「敬具」の位置ですが、一般的に、拝啓の後は改行せず、一文字空けて、時候の挨拶など前文を続けます。また、敬具の位置ですが、末文を書き終えたら改行して、右寄せにして書きます。
用紙の余白に余裕がない場合、末文と同じ行の右端に敬具と書くのもOKのようです。追伸などがある場合は、敬具を先に書いて、後に追伸を付け足しますが、ビジネス文書の場合、なるべく追伸はないほうが好ましいでしょう。
「拝啓」「敬具」の位置を文例で確認
実際に文例を紹介しますので「拝啓」「敬具」の位置など確認してください。
文例(お歳暮のお礼状)
拝啓 師走の候、貴社におかれましてはますますご清祥のこととお喜び申し上げます。
さてこの度は、ご過分なお歳暮を恵贈賜り、誠に有難く厚く御礼申し上げます。
弊社は皆様のご支援にお応えすべく、社業の発展に全力を注いで参る所存でございます。どうか今後ともご支援ご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
まずは略儀ながら書中をもちまして御礼申し上げます。
「拝啓」「敬具」を正しく使ってビジネス文書が作れてこそ社会人
「拝啓」も「敬具」も普段の生活や友達との手紙のやりとりではあまり使用しないものです。ですが社会人になると取引先のお客様とのやりとりなどビジネス文書を書く機会が格段に増えます。最初は見様見真似で構わないので使い方や書き方に少しずつ慣れていきましょう。