「職場における仲間はずれ」は珍しくない
「まさか大人にもなって」と思う人もいるでしょうが、職場における仲間外れは珍しくなく、それが原因で心を病んでしまったり、離職してしまうケースも少なくありません。
職場における仲間はずれは、構造的には学校で子供たちが行うようなものと大きく変わりはしませんが、生活がかかった職場環境で起こっているということが、強いストレスを与えてしまう原因になっている面もあります。
職場の仲間はずれのターゲットになることはできるだけ避けたいところですし、もしもその状況が発生しているなら何かしらの対策を考えていく必要があります。職場における仲間外れへの考え方や対策について知識があれば、自分を守るだけでなく、身近で困っている誰かの支えになることができるでしょう。
様々な職場における仲間はずれの例
職場における仲間はずれは様々な形で生じていますが、気づかない人は本当に気づかないものです。どのような状態が仲間外れと感じられることが多いのでしょうか。
1 会話に加わろうとするとすぐに会話がしぼむ
ある会話で盛り上がっているグループの会話に混ざろうとすると、急に会話がしぼみ始め、そのまま会話が途切れてしまうということがあります。1回2回ならたまたまと考えることができますが、毎回そういった傾向がある場合は「仲間はずれ」にされている可能性があります。
2 仕事が回ってこない
上司から仲間はずれにされている場合に多いパターンなのが、他のメンバーには良い仕事が回ってくるのに、自分のところには良い仕事が回らず雑用ばかりを押し付けられるケースです。
3 お菓子などの配布が自分にだけ来ない
職場ではお土産や何かのプレゼントとしてお菓子などが配られることがありますが、不在ということでもないのに自分だけ回ってこないことがあります。明らかに避けられている状況であれば仲間はずれが起こっていないか疑うべきです。
4 プライベートなお誘いが自分にだけ来ない
会社の忘年会や部署の打ち上げなどのお誘いはあっても、女子会や同期での集まり、グループ旅行、同僚の結婚式などプライベートなイベントには誘ってもらえない状況がある場合も心配です。今はSNSなどでそういった活動の報告がされることもありますが、事前に何の連絡もなかったイベントの報告が上がると寂しい気持ちになります。
5 知らない話題が多い
普段からコミュニティの会話に入っていない場合には仕方のない面もありますが、職場では同じように時間を過ごしているはずなのに、知らない話題や他のメンバーの間では通じる用語などができている場合は、プライベートやSNSなどにおいて仲間外れになっている可能性があります。
「気にするべき」仲間はずれと「気にする必要のない」仲間はずれ
会社での仲間外れがどうして問題になるのかというと「寂しい気持ちになるから」です。その気持ちによって他のメンバーとコミュニケーションを取るのが難しくなったり、また気分が滅入ってしまって自分の仕事が手につかなくなることもあります。ひどくなってくると自分の居場所について不安を感じるようになってしまうこともあります。
仲間外れの問題を考える上では、「気にするべき仲間はずれ」と「気にする必要のない仲間はずれ」を見分けることが大切になってきます。
気にする必要のある仲間外れ
職場というのは、基本的に「特定の仕事を目的にする集まり・組織」です。仕事を目的にして集まっているため、もしも仲間はずれが生じていることによって仕事に支障が出ている場合は積極的に対策を行った方が良いでしょう。また、仲間外れが原因となっていて、それが個人や職場における仕事の生産性に大きく影響を及ぼしていると考えられる場合には、会社も対応しなくてはならないことになっていますし、場合によっては専門機関や法に訴えることも可能です。
気にする必要のない仲間外れ
職場は「特定の仕事を目的にする集まり・組織」ですので、目的にしている仕事に関して問題がなければ、仲間はずれについて気にする必要はありません。仲間外れの状況を繕うとしている組織は会社そのものではなく、その中の一部の人であることがほとんどです。そのため、自分の気持ちの面や仕事の面で問題がなければ、気にする必要もなく、仲間はずれになっているからと解雇されることもありません。
職場で仲間はずれになった時の対処法
職場で仲間外れになっている、もしくはその兆候が見られる場合にはどういった対処法が有効なのでしょうか。
1 気持ちの良い態度を心がける
会社において仲間はずれが生じる理由として多いのは、「何となくいけ好かない」というものです。最初は「何となく」から始まり、その理由を探し始めるようになると、ありがちなちょっとしたミスすら嫌う理由になってしまいます。
揚げ足を取られないようにするためにも、また「何となく」を思わせないためにも普段から気持ちの良い態度で応対することが、職場での仲間はずれに対し最も有効な対策になります。服装や言葉遣い、表情などで良い印象を与えましょう。気持ちの良い態度の人を嫌っている人が、むしろ問題のある人として距離を置かれるようになります。
2 仕事をしっかりする
会社は仕事をするための場所であり集まりです。そのため、自分の仕事がしっかりできていないと評価されることはありません。逆に言えば仕事をしっかりする人は評価される人であり、その人を仲間外れにすること自体にリスクが発生します。仲間はずれを扇動する人ほど「自分の方が仕事をしている」と優位に立とうとする人が多いので、スマートな防衛策になります。
3 記録・資料を集める
職場における仲間外れは、しかるべきところに相談して解決することもできますが、そのためには根拠となる記録が必要となります。仲間外れと考えられる状況が発生した日時や出来事をメモにしておいたり、メールやSNSの情報などを保存しておくなど、資料集めをしておくと役立つことがあります。ただ、気分のいいものではなく、心理的に溝が深まりますので、短時間で終わらせて次のステップに進む方が良いでしょう。
4 相手の価値観を受け入れる態度を見せる
社会人にもなれば、年齢や性別、出身地や価値観などは非常に様々になりますが、その中で相手の価値観を尊重することが求められます。自分の価値観と違う、考えや信条と合わないからと突っぱねるような態度を取っている人なら、一度近づいてみるのも良い方法です。心理的に壁があると感じるとどうしても声もかけにくくなるものです。自分が相手の価値観を受け入れる態度を見せることで、周囲も自分のことを受け入れてくれるようになります。
5 反応しない
会社で仲間はずれにされたからと言って、それによる仕事上の不便がなければ気にすることはありません。
仲間はずれにしている人たちとしては、対象の一挙一動がニュースとなり会話のネタになりますが、対したネタもないならすぐに飽きてしまいます。普段通りに仕事をこなして接していけば、仲間外れにされることもだんだんなくなっていくでしょう。
6 頼れる人に相談する
もし、社内やプライベートの友人で頼れる人がいるなら、状況について聞いてもらいましょう。
社内の人間であれば、人事や上司などが影響力もあって適任です。友人などにグチや状況を聞いてもらえるだけでも気持ちが整理できたり、また必要以上にネガティブになっているところを正してくれたりします。一人で辛い気持ちを抱えるのが最も良くないので、早めに相談できる人には相談しましょう。
7 専門機関・専門家に相談する
社内で仲間外れをはじめとするいじめやパワハラ行為が発生していて、明らかに仕事や個人の心身の状況に影響が生じていると考えられる場合には専門機関や専門家に相談しましょう。労働局や都道府県労働委員会・都道府県庁、法テラス(日本司法支援センター)など様々なところで相談を受けています(注1)。いずれの場合も、客観的に社内いじめが発生していることを示す証拠が必要になりますので、記録したものがあれば持っていくようにしましょう。
8 環境を変える
職場におけるいじめがひどく、心身が耐えられない場合には環境を変えるのもひとつの方法です。人事に相談して配置転換や事業所の変更ができるならそれも良いですし、思い切って転職する方法もあります。この場合、職場での仲間はずれによるトラブルを立証できる記録や証拠があれば、自己都合ではなく会社都合での退職という扱いにすることも可能です。
職場における仲間はずれは大人の対応で処理しよう
職場での仲間はずれの問題は、大小はあれど常に生じる問題ですが、職場というのは協力関係によって成り立つものです。関係が良くない状況が続くのは誰にとっても良いことはありません。
学生に見られる仲間はずれよりも解決手段が多様で、会社側や専門機関によるサポートも期待できますし、それを実行する能力も備わっているのですが、気持ちの面で落ち込んでいたり負けていると身動きが取れないことも多いものです。
職場の仲間はずれについては「解決できる問題」「大したことじゃない」と前向きな気持ちで、淡々と対処していきましょう。
参考文献