職業訓練受講給付金を受け取る条件・支給額は?
職業訓練受講給付金は、一定の条件下にある求職者が職業訓練を受けている間の生活支援を目的に受けとることができるお金です。就職のための準備をしながら生活費の補助を受けることができますので、求職者にとっては非常にありがたい制度です。
これは職業訓練を受ける上での最大のメリットだと言っても過言ではありません。しかし、当然ながらその給付を受けるためには条件がありますし、必要な手続きもあります。職業訓練受講給付金を受け取るにはどのような条件や準備が必要なのかをまとめました。
職業訓練受講給付金とは?
職業訓練受講給付金というのは求職者支援制度のひとつです。雇用保険を受給することができない求職者が、ハローワークの支援指示によって職業訓練を受講するにあたり、その職業訓練期間中の生活支援のための給付を受けることができるというものです(注1)。
この時、雇用保険を受給することができないというのは、雇用保険の受給期間が終了している場合や、雇用保険の納付期間が不足している場合、自営業などを廃業した場合や就職できないまま学校を卒業し、ハローワークで求職活動をしている人などが該当します。
こうした人々に対してハローワークでは就職相談や支援を行いますが、生活に必要なお金が不足しているためにスキルが身につかず、キャリアの形成上問題が大きいと考えられる場合や、現在のスキルでは再就職などが難しいと考えられる場合に支援指示があります。
職業訓練受講給付金を受け取れる求職者支援制度の支援対象者は?
求職者支援制度の対象者を「特定求職者」と言います。特定求職者は下記の要件を満たした方を指します(注2)。
- ハローワークに求職申込をしている方
- 雇用保険被保険者あるいは雇用保険受給資格者ではない方
- 労働の意思と能力を持った方
- ハローワークに就職支援の余地があると判断された方
職業訓練受講給付金を受け取るための受給条件は?
もちろん、職業訓練受講給付金は誰にでも支給されるわけではありません。支給対象となるのは不正受給ではなく、支給されない状況では生活上困ると考えられ、まじめに就職する気持ちがあり、真面目に職業訓練を受けているということが前提となります。
職業訓練受講給付金の支給資格を得るには、具体的には以下の用件を全て満たす必要があります(注3)。
- 本人収入が月8万円以下である方
- 世帯全体の収入が月25万円以下である方
- 世帯全体の金融資産が300万円以下である方
- 現在の居住地以外に土地・建物を所有していない方
- 全ての訓練実施日に出席している方(やむを得ない場合があっても8割以上出席)
- 同世帯の中に、同時に職業訓練受講給付金を受給して訓練を受けている人間がいない方
- 過去3年以内に、偽りその他不正の行為により、特定の給付金の支給を受けたことがない方
- 訓練期間中から訓練終了後の期間、定期的に職業相談を受けている方
- 前回の受給から6年以上経過している方(過去に給付金を受給したことがある場合)
職業訓練受講給付金の事前審査には何が必要?
職業訓練受講給付金は希望する人が全員受け取ることができるわけではなく、事前審査として以下の書類が必要となります。
1 番号確認書類
マイナンバーカード、マイナンバー通知カード、マイナンバー記載の住民票(住民票記載事項証明書)のうち、どれか一点の原本
2 本人確認書類
運転免許証、健康保険証、マイナンバーカード、パスポート、身体障害者手帳、在留カードなどのうち、どれか一点
3 ハローワークから交付された書類
- 受講申込書
- 受講申込・事前審査書(安定所提出用)
- 職業訓練受講給付金要件申告書
- 職業訓練受講給付金通所届
4 所定の添付書類
以下の書類を揃えて、定められた期限までにハローワークの担当窓口に提出します。
- 直近3カ月以内に交付された住民票謄本の写しまたは住民票記載事項証明書(世帯の構成および続柄が記載されたもの)
- 事前審査申請日の前月に得た本人収入を証明する書類(賃金明細書など)
- 事前審査申請日の前年における申請者本人および全ての同居配偶者等の収入を証明する書類(源泉徴収票、額面が記載された市区町村が交付する所得証明書など)
- 申請者本人または同居配偶者等が保有する事前審査申請日の残高が50万円以上である全ての預貯金通帳または残高証明(直近1カ月以内に交付されたもの)
- 給付金の振込先となる通帳
- その他、求められた書類
職業訓練受講給付金の支給期間および支給額について
職業訓練中とはいえ、その給付金の支給期間や支給額は無限ではありません。どちらにも上限が定められているため、生活の状況や受講を希望する訓練期間をよく考えて選択する必要があります。
職業訓練受講手当:月額10万円
職業訓練の受講中の生活補助としての基本手当を職業訓練受講手当と言います。月額10万円が支給されますが、いくつかの要件を満たしていない場合は支給されないこともあります。
支給期間は訓練期間中となります。訓練期間はコースによって異なり、およそ2~6ヶ月ですので最長で6ヶ月と考えてください。ただし、特殊な職業訓練においては最長24カ月のコースもあり、その場合は最長24カ月となります。
通所手当:適宜(上限あり)
通所手当というのはいわゆる交通費のことです。職業訓練校までの通所経路に応じた金額ですが、経済的かつ妥当と考えられる金額となります。こちらの支給期間についても、最長でも職業訓練期間中です。
寄宿手当:月額10,700円
ハローワークが必要性を認めた場合に特別に支給される手当です。対象になるのは、職業訓練を受けるために同居している配偶者などと別居して寄宿する人です。地域によって違いがある制度なので、詳細はお近くのハローワークで問い合わせてください。
こちらも支給期間は職業訓練期間中に限定され、寄宿の開始や終了に関する書類提出が必要となります。
求職者支援資金融資:希望額(上限は月額10万円)
これは正規の職業訓練受講給付金ではなく、労働金庫からの貸付です。求職中という状況であることから、無担保・低金利で貸し付けを受けることができます。
上限は配偶者等がいる場合で月額10万円、それ以外の場合は月額5万円となります。こちらも支給期間は職業訓練期間中です(注4)。
職業訓練受講給付金の申請と支給までの流れ
職業訓練受講給付金は、事前審査に通り職業訓練を受けるだけでは受給することができません。職業訓練中も毎月1回はハローワークで職業相談を受けながらその後の就職活動を続けていく必要があります。
また、失業保険の給付と同じく、職業訓練受講給付金の支給申請もこの日に行う必要があります。支給申請には以下のような書類が必要です。給付金支給状況については、あらかじめ交付を受けていない場合は不要となります。
- 職業訓練受講給付金支給申請書(訓練実施機関による受講証明を受けたもののみ)
- 就職支援計画書
- 給付金支給状況(支給記録)
- 職業訓練の欠席理由を証明する書類(欠席があった場合のみ)
申請しても職業訓練受講給付金が支給されないケースがある
職業訓練中に事前審査の内容から経済状況の変化があり、事前審査の内容を満たさなくなった場合や、訓練中の態度や出席率に問題があるケースでは職業訓練受講給付金が支給されません。特に、訓練実施日における出席率は厳しくチェックされます。
「出席」の定義は訓練実施日の全てのカリキュラムへの出席となります。やむを得ない理由で遅刻・欠席・早退をした場合において、1実施日における訓練の2分の1以上に相当する部分を受講した場合には「1/2日出席」として扱います。その上で、全出席日数の8割以上の出席をしていることが条件となります。
「やむを得ない理由の欠席」として認められない理由での欠席が「一度でも」あった場合には、給付金を受けることができません。場合によっては、初日までさかのぼって過去に給付された給付金の返還を求められる場合もあるので注意が必要です。
職業訓練受講給付金が支給される職業訓練におけるやむを得ない欠席理由とは?
職業訓練で欠席・遅刻・早退が許されるのは「やむを得ない理由」がある時のみです。詳しい内容や必要書類はハローワークで問い合わせるのがベストですが、主に以下のようなケースが該当します。
1 本人の病気または負傷のため
いわゆる病欠や事故による欠席です。この場合、医師や医療機関による証明書が必要となります。または、医療機関または調剤薬局の領収書、もしくは処方箋の写しなどを給付申請の際にハローワークに提出します。
2 親族の看護のため
6親等以内の血族、配偶者、3親等以内の姻族の看護のために必要な場合も、やむを得ない欠席として認められます。ただし、これも医療機関による証明書が必要となります。
3 求人者との面接やハローワークが指示した就職セミナーなどの受講のため
職業訓練の目的は就職ですので、就職活動は認められています。この場合、面接先の事業者に証明書を発行してもらう必要があったり、セミナーの参加証明書など活動を証明する書類が必要となります。
4 列車遅延、交通事故、天災その他やむを得ない理由のため
交通に関する問題があり遅刻や欠席となった場合には、それに必要な証明書を交通機関や警察からもらう必要が生じます。
対象者は職業訓練受講給付金を上手に活用しよう
職業訓練受講給付金についてここまで見て来た方の中には、なんだか面倒なものに思えた方もいることでしょう。しかし、税金などを投入して公的な援助を受けるわけですから、しっかりするに越したことはありません。
制度は複雑に見えますが、行うべきことは常識の範囲内です。難しく考え過ぎず、まじめに職業訓練を受け、まじめにハローワークに通い、まじめに就職活動を続けていれば、ほとんどの場合きちんと支給されています。
職業訓練の最大のメリットである職業訓練受講給付金は、職業訓練を受けるなら是非とも受給したいところです。上記を参考にして事前に計画・準備しておくとスムーズに進められることでしょう。
参考文献
- 注1:厚生労働省「職業訓練受講給付金(求職者支援制度)」
- 注2:厚生労働省「求職者支援制度のリーフレット 求職者支援制度があります!」
- 注3:厚生労働省「職業訓練受講給付金(求職者支援制度)」
- 注4:厚生労働省「リーフレット 求職者支援資金融資のご案内」